5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

自然もウソをつく (擬態の話)

 札幌は朝から雨模様の一日で、まさに典型的なリラ冷えの寒い一日でした。幸い雨は昼頃までにはほとんど上がり、午後からあった「情報基盤センター情報ネットワークシステム学内共同利用委員会」へは、傘をささずに行けました。会議はとても覚えられないくらい長い名前ですが、「情報基盤センター情報ネットワークシステム」は通称HINESと呼ばれていますので、「HINES共同利用委員会」というわけです。

 北大にとっては、いまや電気や水道なみのライフラインとも言える情報ネットワークですが、つながって当たり前、何かがあるとすぐに不平不満が噴出するという因果な組織です。会議に出ていると、幸いなことに北大のネットワークはコンピューターやネットワークを愛する教員・職員の方によって献身的に維持されていることが良くわかります。しかし、その分その方々の出血サービスに依存しているところが多いこともまた感じられ、こりゃあ我々もできる限りは協力するしかないなと思わせられるものでした。

 このことは図書館についてもそう思っており、大学のインフラを支える組織をもう少し何とかしないと、人が入れ替わったとたんに崩壊する恐れがあるところが怖いです。もっとも、これは大学の研究体制についても言えることで、大学という組織をチェックするたびに、民間会社のように運営し維持発展させていきたいのなら、そのためのきちんとした体制がないとこの先持たないだろうと思います。

 逆にいうと、教員・職員の中にはかなりの割合で才能を持った人が存在しており、「さすが大学には人材がいるものだ」と感心することは多いです。しかし、いつまでもそうしたものに依存していると、ほんの何人かの優秀な人材がいなくなったとたんに大学全体がガタガタになるということも想定される綱渡りをしているということでもあります。

 そこのところを知ってか知らずか、特別支出が必要とされない「才能に依存する体質」はなかなか改まらないようです。

 **********

 さて話題一転、午後6時からは今日もまた平成遠友夜学校に聴講に行ってきました。

 今日の講師は先日、カンブリアの話をしたYIさんと双子のかたわれ、AIさん(イニシャルはカッコいい)でした。

 擬態の話をするというので個人的興味もありましたし、それよりも双子の話の片方だけを聞いて終わりという状況にしておくと、後でどんなひどい目に遭わされるかが怖いというのが強い動機だったかもしれません(ウソです^^;、もちろん。ホントだとシバカレル・・・・)。

 AIさんも、YIさんに負けず劣らずしゃべりが上手いのでびっくりしました。最近は、2人を見分けられるようになったのですが、こうして話を聞いているとどっちがどっちだかわからなくなってきます。しゃべり能力は遺伝子が決めるのかとすら思えてきますが、生まれてから今までずっと一緒に育ってきた2人が似ていたとしても、その原因が遺伝子なのか環境なのかを見分ける術はなく、研究対象としては不適格な2人なのです。それはさておき、AIさんの話はとても修士1年生とは思えないくらい堂々として間の取り方が上手く、客席のいじり方などは天性のものなのか、見習うべきものを感じました。

 話の内容は、昆虫の擬態の展覧会から始めて、彼女が昔から好きだという絵画の話へつなげ、さらにダーウィンの進化論へと展開した話を現代のDNAの話へとつなげ、最後にそれらすべてを擬態の進化へと収束させていく論理展開は、なかなかのものでした。結婚詐欺になれる素質を感じます。

 ただ、客席に多かったシニアの方々に「分子遺伝学入門」はちょっとハードすぎたかもしれないとは思いました。それと、本人が楽しみすぎてシニアでもある私にも少々長すぎたと思いました。私はあの椅子に座らされるのは1時間が限界ではないかと思いつつ聞いていたのですが、他の皆さんは最後まで眠りもせずに一所懸命聞いておられたのにはちょっと驚きました。結局、私が一番根気のないシニアだったのかもしれません。

 今日は用があったので、この夜学校の売りのひとつであるQandAのデスマッチは聞けませんでしたが、それが楽しみで来られている常連さんもいらっしゃるようで、いつもながら楽しい雰囲気をちょっとだけ聞かせてもらって会場を後にしました。

 外はとんでもない寒さです。今夜はまた電気ストーブが活躍してくれるでしょう。良いのか悪いのか咲いた花が長持ちしそうな、寒い札幌です。
Commented by AI at 2006-05-24 09:49 x
今日もはるばるお越しいただきありがとうございました!先生の顔を見つけた瞬間に緊張が走りました・・・。(でも確かに来ていただけなかったら、あとあとまでねちねち言っていたかもしれません笑!)

大学で科学の先端に触れている(つもりの)身としては、何とかしてたんに面白おかしい話だけでなく、大学の研究につながるような難しい話にも触れていただけたら、と思っているのですが、バランスがすごく難しいですね。時間も内容もまだまだ修行が足りません。長い講義でも、みなさん粘り強く質問デスマッチまでばりばり付き合っていただけるのを見ると毎回頭が下がります。

そういう意味で言うと大学の先生方はまだまだ素人とも言うべき一年生や学部生に対して毎週1時間半の講義を作ったりするわけですから、本当にすごいと思います。stochinai先生の授業も私の理想の講義のひとつです。

これからも生徒さんたちの温かい目に甘えて精進するとともに、我が大学出身の科学者や技術者の卵たちが自分の研究を周りの人に伝える面白さと技術?を考えるような場を作っていければ、と思っています。

また時間のあるときに懲りずにお立ち寄りください!
Commented by ハニーm at 2006-05-24 14:31 x
楽しかったです。私も構成と展開に感心しました。いつか姉妹で共同研究、
映像の左右でトークなさったら壮観でしょうね。一般的には視覚的な関心を
呼ぶテーマだと思います。擬態同士のバトルが印象的でしたが、あの場で
「分子遺伝学入門」のお話を主に掘り下げるのは、大変かなと思います。
これからのご活躍を期待致します。
 A.H.セアの作品などから、O.WILDの逆説的な芸術論を連想しました。
‘The Decay of Lying’「…Life imitates Art far more than Art imitates life. 
… external Nature also imitates Art」です。(研究社に邦訳有り)
つぶやき様、結婚詐欺といえば擬態より「媚態」かしら…
Commented by stochinai at 2006-05-24 20:24
 AIさんを始め、遠友夜学校で実践的プレゼンテーション・コミュニケーションをやっている学生・院生さんたちは、とても良い経験をしていると思います。まあ、もともとそういう才能や意志のある人たちが参加しているケースが多いということはあるのでしょうが、あそこで鍛えられると、さらにグンと伸びるのではないでしょうか。大学の実習や学会でのプレゼンなどでは、お客さん(先生や同僚)の方がものを良く知っていることが多いので、怪しげな学術用語を操ってごまかすことができたりしますが、遠友夜学校では手足をしばられて泳いでいるようなものですから、ほんとうのコミュニケーション能力が問われるのです。
 楽しいし、自分のためにもなるだけではなく、人にも喜ばれるのですから、こんなに良いことはありませんね。これからも楽しみながら、がんばってください。

 さて、ハニーmさんのご提案のように、双子姉妹のサイエンス漫才は空きニッチですので、意外と全国規模でブレークするかもしれません。真面目に検討する価値はあるかもしれないと思います。

 まだ媚態の域には達していないような、、、、、、、スミマセン。
Commented by YI at 2006-05-25 02:42 x
昨日もお越しいただきありがとうございました!
これからは私たちが依頼した(引きずり込んだ?)学生や先生がどんどん登場することになりますので、時間があるときにまたいらしてください。

しかしサイエンス漫才ですか…なかなか厳しいところをついてきますね…。デビューに備えて腕を磨いておくことにします。

媚態についてもこれからの精進ですね。
我が研究室でその辺を学ぶのは非常に難しそうなので、人生の先輩である遠友夜学校の生徒さんたちに教えを請うてみます。
by stochinai | 2006-05-23 20:49 | 生物学 | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai