5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

「ハダカの城」 (プレビュー版)

 Freelancerさんのご紹介により、タイトルにある西宮冷蔵の水谷洋一社長を追ったドキュメンタリー『ハダカの城』“プレビュー版”のテープを、なんと制作者ご自身である柴田誠さんから送っていただきました。

 私は柴田さんのことはまったく存じ上げなかったのですが、大阪の写真・映像・音響の専門校「ビジュアルアーツ専門学校大阪」の先生もやっておられる映像作家さんのようです。

 今日、広島から札幌へ帰ってきてみるとテープが届いており、プレビュー版(Ver.060409)で132分と書いてあったので、長いので気分が落ち着いてからゆっくり見ようと思っていたのですが、見始めてみるとやめられず一気に見通してしまいました。

 つまり、おもしろかったということです。

 まだ、未完成品なのでいろいろと批評をするのはフェアではないとも思うのですが、柴田さんへのお礼という意味も込めて、現時点のバージョンについての感想を書かせていただきます。

 この作品はすでに半公開の試写が行われております。その時に配布された(?)資料と思われるものがこれです。ご覧になれば(ならなくても)わかるように、「雪印食品・牛肉偽装事件」の内部告発をしたことで、廃業に追い込まれた冷蔵会社社長の孤独な闘いの記録です。

 事件の概要や、会社の再建などについては、マスコミでも報道され、マスメディアによるドキュメンタリーも放送されているので、私もある程度は知っていたつもりでしたが、柴田さんが水谷社長に密着して4年間余りも取材を続け、まさに社長の内側からの報告である本作品を見せていただき、また新たな目でこの「事件」を見ることができました。つまり、この事件が社長の人生観そのものを変えていく様がみごとに映像に記録されていることを感じました。それが、この作品の最大の成果ではないかというのが総合的な感想です。

 私がこういう長尺のドキュメンタリーに慣れていないせいもあるのでしょうが、最初しばらくは正直言って遅い展開のテンポに付いていけなかった気がします。それが、社長と並んで陸橋の上の隣で本を売っている少女が本を買ってくれるシーンを境に、ぐいぐいと引き込まれていきました。

 モーニングショーによる報道を契機として、寄付などが集まりまたたく間に営業再開に漕ぎ着けていくシーンは、社会的には感動を呼んだところである程度マスコミにも報道されているところですが、そこでは柴田さんはマスコミの報道の外側から事実を記録し続けています。それによって、マスメディアの滑稽さや嘘くささを含めて、我々が報道によって知らされているものは何なのかということまで教えてくれる、価値ある映像になっていると思います。

 マスコミ的には営業再開で、ある意味での勝利を勝ち得たところでドキュメンタリーとしては完結しても良いところなのでしょうが、社長がその後も陸橋に戻っていったというところが非常に興味深く思えました。

 社長にとっては当初、営業再開のための闘いの場として出かけていった陸橋の上で、彼は何かを発見したのだと思います。そこで、本当の意味で人と人とが出会い、コミュニケートするとはどういうことなのかを発見したのではないでしょうか。

 「できれば、陸橋に住みたい」と語る社長は、ひょっとするとこの事件で失った物よりも得た物のほうが多かったのかもしれません。

 佳作だと思います。

 なお、この映画が完成へと向かう様子が柴田さんのブログでリアルタイムで報告されているというのもこの作品のおもしろいところだと思います。

 本格公開の暁には、是非ともご覧になられることをお勧めします。

#素人からのテクニカルなコメントは失礼かとも思いますが、敢えて書かせていただきますと、字幕の使い方にはもう一工夫していただけると、流れに乗りやすいと思いました。具体的には、タイトル的な字幕は今のままの音声なしでも問題ないと思うのですが、説明的な文章になっている字幕に関しては、ナレーションあるいは字幕とナレーションを併用したほうが良いのではないかと感じました。ただ、これはビデオ画面の解像度がわるいせいでそう感じられたたのかもしれませんが、視覚的に文字を追うのがつらい人も多いと思いますので、ご検討いただけると幸いです。
Commented by Inoue at 2006-06-05 06:51 x
食肉流通は、かなり汚い商売が横行している業界のようです。というのも、政府による手厚い保護があるために、それをうまく利用すれば莫大な利益が上がるからです。公共事業と同じことですね。
 昨年、日本ハムという最大手の会社が豚肉の差額関税制度を悪用して脱税して儲けていた事件が発覚しまして、裁判所は求刑の10倍もの罰金を日本ハムに科しました。あまりにも被告の情状が悪かったのです。
「差額関税制度に従っていたら豚肉価格は数倍に跳ね上がる。我々の行為のおかげで肉価格が安くなって消費者は利益を得ている」
というような弁明をぬけぬけとやったのです。
Commented by Hiroko_Y at 2006-06-05 09:34 x
テープ送る手配をした本人です。もう見られたのですね。早い。字幕云々はわたしも気になって、柴田さんに進言しました。

ですが、あれを見ると雪印を買う気がうせますね。あのあと編集したら150分になっちゃったそうです(笑。ご本人からのメールより。

水谷社長の「おのれ畜産業界」という言葉に「おー、やれやれー!」と思いました。
Commented by Hiroko_Y at 2006-06-05 09:35 x
というか、わたしの名前は本名で結構ですよ。
Commented by stochinai at 2006-06-05 20:16
 振り返れば、あれがきっかけで雪印食品が倒産したのですから、内部告発の力はすごいものではあったわけです。ところが困ったことに、日本という国は告発した側もバッシングされてしまうのですよね。
 西宮冷蔵さんの闘いを見て、応援している人もたくさんいるでしょうが、それ以上にビビっている人が多いのだろうと思うとため息が出ますね。
Commented by 柴田です。 at 2006-06-05 23:48 x
『ハダカの城』、ご感想有り難うございました。
“完全(公開)版”、気鋭作業中です。
がんばります。
Commented by stochinai at 2006-06-06 21:43
 正式版の完成を楽しみにしています。ひとりでも多くの人に見てもらえることを願っております。
by stochinai | 2006-06-04 23:59 | つぶやき | Comments(6)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai