5号館を出て

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博士の就職活動

 いつも貴重な情報をいただいているvikingさんのところ(大「脳」洋航海記)で、「博士の就活って大変みたいですね」というエントリーが、昨日書かれています。その前に、まずはvikingさんのサイトに「ドクター(問題)関係のリンクを大幅に追加」されていることに感謝したいと思います。興味のある方は、そこから各ブログへ飛んでください。

 さて、vikingさんのところで引用されている「うすっぺら日記」さんのブログには、大学院生、ポスドクおよびその周辺にいる方々には是非とも一度は目を通していただきたい、「博士課程の就職活動について」というカテゴリーのエントリーがあります。

 管理人の分子生物学系博士課程在学中の大学院生lanzentraegerさんが、悩み抜いたあげくに就職活動を開始してから、おめでたいことに今年の3月に内定を取るまでの就職活動のドキュメントは、直接の関係者にとって有益な資料になっているだけではなく「民間に就職するとはどういうことなのか」ということを実体験に基づいて教えてくれる貴重な教科書になっています。(トラックバックはできないようなので、勝手にリンクを張らせていただきます。)

 大学院で博士課程まで進学する人の多くは、できるならば研究職、さらにできるならば大学教員になりたいと思っている人が多いと思います。修士での就職活動に失敗して博士課程に進学するという例がないわけではありませんが、そういう人を除くと一般的な就職活動とはどういうものかというイメージすら持っていない博士課程の大学院生が多いのかもしれません。

 確かに大学教員や国公立研究所の研究員などの公募に応募することも広い意味では「就職活動」ということになるのかもしれませんが、民間企業のしかも場合によっては研究職ですらない部門への就職を希望するというようなことになってくると、公募への応募などという世界からは想像もできないくらいの別世界へ乗り出して行く覚悟が必要になるくらい「常識」というものが違うのです。

 lanzentraegerさんの「就活日記」を読んでみると、確かに頭の切り替えには大変な苦労があったようではありますが、結果的には「就職活動」というものはきわめてあたりまえの「自分の売り込み活動」にすぎないのだということがわかります。

 そういう目で読むと、やはりおかしいのは大学や大学院・研究所のほうなのだと感じられます。つまり、たとえ大学院を出た人間であろうとも、就職活動というものは企業に自分を売り込むということですから、相手企業にとって自分がどのくらい役にたつ人材であるかということを説得する作業にほかなりません。つまり、就職活動が成功するかどうかは、そういう売り込みができるかどうかということがポイントになります。

 つまり、大学教員や研究所の研究員の公募の時のように、学歴と業績リストを送りつければ何とかなると考えるほうが異常だということが理解できるかどうかが、就職活動成功の鍵を握っているということでしょう。

 冷静に考えると、業績つまり研究能力だけで決めることが多い大学の教員の採用基準というものが明らかにおかしいのです。先日、某大学で新しく採用した助教授がほとんど学生に講義をする能力がないことがわかって困っているという話を聞きましたが、これなどは採用側が人事というものをまったく理解していないことを示しているエピソードだと思います。

 国立大学も法人化して、大学経営ということを真剣に考えなければならないところにきているはずです。もしも、それが額面通りそういうことであるならば、大学教員の採用も企業と同様の基準で行われるべきだということにならないでしょうか。営利主義ということではなく、「大学という企業」の経営にとって有益な人材を採用するということです。そうなってくると、単に研究ができるだけというような人材ではなく、学生の教育や指導さらには生活指導や就職の世話などができる人材が大学にとって必要だということになるはずです。

 もしも本当にそうなってくると、大学へ就職したいと思っても、民間企業に就職したいと思っても、志望する大学院生やポスドクには同じような能力が求められるということになってくるはずではないかという気もします。

 そうなってくると、大学にとっても学生・ポスドクにとっても楽になるのではないかと思いました。民間企業へ勤めるのと、大学で教員になるのが全然違うというのは、やっぱり異常なことですよね。
Commented by lanzentraeger at 2006-06-19 18:44 x
stochinaiさん、初めまして。lanzentraegerと申します。ブログ中に私のブログの内容をご紹介いただいてありがとうございました。
stochinaiさんの感想を読んで、とてもうれしくなりました。また、私のブログを見てくださる方が増えれば、ブログに色々書いた甲斐があるというものです。
自分の体験談をえらそうに書いたりするのは、実は自分の活動を暴露することになるので、ちょっと恥ずかしかったりします。
Commented by lanzentraeger at 2006-06-19 18:45 x
博士・ポスドクの就職問題は、ネットで探してみても、「大変だ!」「悲惨だ!」というところの問題を扱っているところが多く、実際、「じゃあどうするんだ」というところがとても少ないように思われます。この問題は今湧き上がってきた問題ではなく、しばらく前から起こっている現象なので、問題にぶち当たって、何とかクリアされた方がきっとたくさんおられるのでしょう。そのときに、彼らがどう考えて、どう行動して、どうなったのか。それを自分はとても知りたくて探したけれどもほとんど見つかりませんでした。また、現在進行形で苦しんでいる方も、おそらくごまんといるのでしょう。「みんなは一体どう考えて、どう頑張っているのか」、それを必ず欲していると思います。そういった面について、自分の体験談が少しでも役に立てばと思っています。
Commented by stochinai at 2006-06-19 18:54
 lanzentraegerさん、ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした。トラックバックができないので、勝手にリンクを張らせていただき、後でコメント欄に事後承諾のお願いを書こうと思っていたのですが、その前にlanzentraegerさんにここを見つけていただいたようです。ありがとうございました。とともに、無断で引用したことををお許し下さい。

 lanzentraegerさんの就職活動日記は、どうしたら良いかわからずに悩んでいる現役の博士・PDの皆さんにとても有益な道標になると確信しましたので、失礼を覚悟の上で引用させていただきました。あきらめの絶望論ではなく、ただの精神論でもなく、実際に自分の未来を開くべく動こうとしている人達にとって必要な情報が交換が切実に必要だと思っています。

 ほんとうに、ありがとうございました。これからも、よろしくお願いします。

Commented by lanzentraeger at 2006-06-19 19:21 x
こちらこそ、よろしくお願いします。
リンクに関しては、むしろ取り上げていただいてありがたいという気持ちです。気になさらないで下さい。
トラックバックはいまいち理解してなかったので、慌てて勉強して設定しました。。。すいません。
これからも思いつくままに色々書いてみようと思います。よろしくお願いします。
by stochinai | 2006-06-15 22:39 | 大学・高等教育 | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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