5号館を出て

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イカの解剖、真っ赤な夕焼け、メタカフェ

 今日は久しぶりに、全学教育の学生実験を担当しました。解剖なのですが、昨年までやっていたラットの解剖に変わって、今年からはなんとイカの解剖です。ラットの解剖なら今までに何十匹もやっているので、目をつぶっていてもできる気分なのですが、実をいうとイカを真面目に解剖したことはありませんでした。そこで、一昨日に他の先生がやっている実験を見学させてもらってから、にわか勉強をして、本番に臨んだというわけです。
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 一昨日、昨日と勉強してみてわかったのですが、イカの解剖というのは日本だけではなく世界的に解剖入門としてはかなりポピュラーなものらしく、ネットで探してもたくさん見つかります。その他、イカに関する情報はなかなか豊富で時間の経つのを忘れて楽しく勉強させてもらいました。

 上の写真でわかるように、使ったスルメイカを始めイカは10本の脚(ゲソというのは下足が語源だって知ってました?)のうち2本が特に長く、まさに手のようになっています。
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 この手のような触脚には「歯」のついた吸盤があり、かなり強力な武器になることが見て取れます。

 お刺身にするときには、下の写真のように「頭」の部分(外套膜)を切り開き、見えてくる内臓は捨ててしまうのですが、良く見ると塩辛を作るときに使う大きな肝臓(中央に大きく見えるメタリックに光るもの)以外にもいろいろと臓器があることがわかります。
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 取りあえず、肝臓以外に食用に使う可能性のあるものは肝臓の右側に細長く密着して見える黄色くメタリックに光る墨袋(墨汁嚢)でしょうか。何人かの学生が、この袋を開いて手を真っ黒にしていましたが、イカ墨のいい匂いがするという感想もありました。

 これはメスの個体ですが、オスメスを見分けるのに、内臓を開かなくても一番上の写真で1対だけ裏向きになって白く見える脚の様子(オスでは太く、先に吸盤がない生殖腕になっています)で見分けられることも学びました。

 調べてまた実際にやってみて。イカの解剖は台所で気軽にできる生物学実験として、なかなかおもしろいテーマであることを発見しました。今度、小学生からお父さんお母さんまでみんなで実習できるサイエンスカフェとしてやってみたいと思いました。終わったらバーベキューパーティができるというところも、おすすめの材料ですね。

 さて、6時過ぎまで実習をやった後は、8時から一部では「オカフェ」あるいは「岡フェ」と呼ばれる、超少人数で行われるサイエンスカフェを語る「メタ・サイエンス・カフェ」に参加させてもらいました。こちらは、実習で疲れた喉をビールでいやしながら、脳の中をリフレッシュさせてくれる有意義なものでした。内容はあまりにもすごいアイディアが続出したので、企業秘密ということにしておきましょう。

 カフェは10時に店を追い出されてお開きになったのですが、帰る道すがら追い出されなかったら朝までしゃべりそうな勢いだったので、追い出されて良かったねと語りながら、今日一日が終わるのでした。

 メタカフェに向かう直前に、火事かと思われるほど真っ赤な夕焼けになっていたので、思わずデジカメを取り出してしまいました。今日の最後の1枚とします。
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Commented by blue at 2006-07-01 07:53 x
う、、う 美味そう、、、
Commented by ぜのぱす at 2006-07-01 07:58 x
ん〜ん、イカも美味しそう、もとい、面白そうですね。

でも、他にも違う種類の生物の解剖を通して比較するための一環なら理解出来ますが、もし唯一の解剖実習なら、大学レベルで、何故イカなのか、ちょっと理解に苦しみますが。
経費節減?
動物愛護?
終わった後に持ち帰る学生は居ませんでしたか?
Commented by winter-cosmos at 2006-07-01 11:34 x
こんにちは。
私が小学校のとき、初めての解剖はフナでしたが(食べていません)、母が(旧制)女学校でしたのはイカだったそうです。そして、そのあと調理実習になったようです。(笑)
Commented by すみたろう at 2006-07-01 15:24 x
こういう写真を見て、「美味そう!」と感じるのは、日本人のDNAにそう刻み込まれているんでしょうか!?
違う生き物、例えばウサギだったら、「気持ち悪い」「かわいそう」という反応になりそうですね。以前、イタリア料理の本を眺めていて、きれいに皮を剥かれたウサギの写真が材料として紹介されていたのを見て、げっと思ったのを思い出しました。
自分はフナもカエルもラットも「ちょっとかわいそう」で、解剖実習はつらい時間でした。イカだったら.....あまりつらくなかったかもしれませんね。
何故なのかは、うまく説明できないのですが。
Commented by winter-cosmos at 2006-07-01 16:00 x
http://winter-cosmos.cocolog-nifty.com/first/2006/06/post_018f.html
何回もおじゃまして申し訳ありません。↑私のつまらないエントリーです。
会食で生きたエビに老酒をかけ皮をむき食べる料理(?)を専門店で食べましたが、エビ好きの日本人でも、美味しいと喜ぶ人はその場にはいませんでした。
タコは意思を感じて、私は「怖い」と思いました。それでも結局食べるのですから。
Commented by stochinai at 2006-07-01 16:23
 皆さん、たくさんのコメントありがとうございます。まずは、ぜのぱすさんの大学の解剖実習でどうしてイカなのかという疑問にお答えします。

 2006年問題というのがありまして、大学にはいってくる学生が中学・高校でろくに理科を学んでこなくなったという実情があります。昔の中学校の理科では、フナやカエルの解剖をやるのが普通でしたが、今は「解剖なんてとんでもない」という風潮も手伝って、解剖そのものに対する抵抗感がとても大きくなってきています。
 2006年問題に対応するために、全学教育での自然科学実験の内容削減と科目横断的な実験の創設ということで再編された結果、生物学分野の実験としては、文系や非生物系の学生でも抵抗が少ないと思われるイカが採用されたようです。

>終わった後に持ち帰る学生は居ませんでしたか?
 もちろん公式には認めていませんでしたが、持って帰りそうな学生には一般的な注意として、その日のうちに十分に加熱して食べないと危ないということを教示した後。持ち帰りに関しては、見て見ぬふりというところですが、持ち帰ったのはほんの数人だけのようでした。
Commented by stochinai at 2006-07-01 16:35
 ヒトは植物や動物といった他の生物を食べる動物ですので、生きるためには他の生物を殺しているわけです。まあ、植物に関しては「殺す」という意識はほとんどないでしょうが、動物だと(それも、我々に近い動物ほど)命を奪うという感覚が出てきます。死んだ動物を見たり、動物を殺したりするときに、食べ物として「おいしそう」と感じるか、同じ生き物として「かわいそう」と感じるかは、個人による程度の差こそあれ。ほとんど完全に「どのように育てられたか」ということで差が生じるのだと思います。
 韓国の人はうねうね動くタコの脚を喜んで食べますし、日本人の一部は「踊り食い」などといって生きた魚を珍重して食べます。私達の年代は小学校の頃から、解体されるクジラの写真などを見慣れていますし、日常的に食べていたので、クジラを見ると食べ物だと認識します。でも、アメリカの屠殺場で牛が殺される様子を見ると残酷だと感じます。私は見たことがありますが、ニワトリを解体するところなどを今の若い人や子供達に見せたら、鶏肉を食べられなくなるのではないでしょうか。

Commented by stochinai at 2006-07-01 16:36
 最近、食育などということが良く言われますが、自分たちの食べている動物は「殺しているのだ」ということは、しっかりと教えて欲しいと思います。
Commented by hal at 2006-07-01 18:16 x
解剖にイカを使うのは、系統学的に遠いにも関わらず内臓などの配置を見るのに脊椎動物に近いものがあるとかいう話を聞いたことがあります。
もっとも、中学かそこらの授業に関する文章だったような気がしますが(笑)。それにしても、大学でそれをやる時代になったのだなぁと感慨をもってしまいました。小学校低学年の頃に、ナメクジ(様の体)がどうやって殻とくっついているのか不思議でカタツムリを何匹も解剖したり、オスとメスの内部生殖器の違いを見たくてたくさんのトノサマガエルを解剖した私としては、「解剖なんてとんでもない」という風潮の方が「とんでもない」と感じてしまいます。
Commented by hal at 2006-07-01 18:17 x
「殺して食べることを考える食育」の典型例としては、卵から育てたニワトリを捌いて調理するという教育が、ときどき小中学校でなされることがあるようですね。ニュースになって我々が知るのは、それに対するネガティブな反応が大きいためなのですが、実は都会の学校における出前授業としてはそこそこ行われていると聞いたことがあります。仙台通信さんのブログにも、彼女自身ラットを解剖するのが好きで、特に胎児の美しさにうっとりするというような記述があったように記憶しますし、結局は、「慣れ」という要素が非常に大きいということだと思います。
Commented by さなえ at 2006-07-01 21:21 x
外国で、生きた鶏を売っている店に息子の教育のつもりで入ったたら買う羽目になり、奥で鶏の悲鳴がし、その後新聞で包まれた鶏を渡されました。食べられなくてそのまま冷凍庫に突っ込んでいましたが、数週間後、意を決して丸ごと蒸し煮にしたら、今までにないおいしさで、おいしいと思える自分のたくましさにびっくりしました。おっしゃる通り、きれい事を言っていても他の命を貰わずには生きられないんですよね。いまだに鮮烈に大きな包丁や店先の様子を思い出します。
Commented by ヨシダヒロコ at 2006-07-02 15:42 x
halさん、そのニワトリの話、金沢でやっているところがありました。でも卵からではなくて、殺すところからはじめるのですが。子供達は神妙な心地になって、いろいろ考えるそうです。

上のstochinaiさんの話に反応すると、植物も言葉をしゃべるといいますからね。殺してるということはおんなじですよね。
Commented by stochinai at 2006-07-02 23:30
 植物も含めて、生き物の命を大切にするということ自体は良いことだと思います。その一方で、ヒトが生きるには、食物として(場合によっては他の理由も含めて)他の生物を殺すことが前提になるということを、「科学」として理解しておく必要があると思います。

 教育現場で行われる解剖も、意味のない殺生ではなく、地球で生きていく人間として自然を理解する一連の科学の体系の中で行われているということを、教える側がしっかりと認識していれば「解剖なんてとんでもない」という風潮に対抗できると思っています。

 大学ではそこまでやりませんが、イカのような日常的食べ物を使って解剖の実習を行い、あとで無駄なく食べてしまうというのはとても意義のある教育活動だと思います。ニワトリの解剖をさせて、肉は持ち帰らせるという実習をやっていた大学の話も聞いたことがありますが、今でもやっているでしょうか。今の風潮だと、一回でも食中毒などが発生すると、実習後に食べるということがすぐに禁止されてしまうのが通例なので、こういう有意義な実習はどんどん減っているようです。

 責任逃ればかり考えていたら、教育は崩壊しますね。
Commented by kaerunokosodate at 2006-08-30 03:10
はじめまして。美しいイカの写真に思わずコメントを書いてしまいました。と言うのも、うちの息子が、イカにはまっていまして。アメリカでは、冷凍のイカリングは売っているのですが、そのままのイカは、ほとんど手に入りません。でも、今度ホールのイカを見つけたら、子供と一緒に解剖してみるのもいいなあ、と思いました。よいアイディアをありがとうございました。
日本では、イカは足10本と言いますが、アメリカの本には、8 arms and 2 tentaclesだそうです。
また、コメントの内容、いろいろ考えさせられます。親として、子供に何を伝えていくのか、学校で教えてもらえないところを、どう補うのか、考えてしまいます。
Commented by stochinai at 2006-08-30 12:52
 イカは意外と簡単に釣れるらしいので、チャンスがあったらイカ・フィッシングも楽しそうです。確かにイカの「足」が生えているのは、イカの頭のところですから、足よりは「腕」というのが適切かもしれません。かなり科学的ですが、おそらく昔から食べていた日本では科学より先に食材として扱われていたので、各部の名前が直感的に付けられているのだと思います。
 ここのコメントは、なかなか良い議論になってますよね。これからもよろしくお願いします。
by stochinai | 2006-06-30 23:22 | 大学・高等教育 | Comments(15)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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