5号館を出て

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悲しいグッドニュース(国立大博士課程定員減)

 科学コミュニケーションブログ、K_Tachibana さんのところで教えてもらいました。国立大学の博士課程定員が、なんと51年ぶりに定員減となったとのことです。
 文科省によると、国立大の博士課程入学定員は56年度の2304人から年々増え続け、96年度には1万人を突破。2003年度以降は年100人前後の「微増」が続いていた。
 これは定員で見ているので、来年から博士課程の入学者が減少が始まるように思われるかもしれませんが、実は全国の大学院での博士課程への進学者数は2003年度をピークにすでに減少に転じているという事実があります。数字で見る博士課程修了後という「博士の行き方」サイトから引用させていただきます。このデータは国立大学のものだけではないと思いますが、博士課程定員の大多数は国立大学にありますので、傾向はそれほど違わないと思います。
 平成15年度の進学者数が18232人をピークにして、平成16年度は17944人、平成17年度17553人と徐々にではありますが、減少する傾向にはあるようです。

 理学に関しては一度、平成13年度に減少に転じておりますが、工学・理学とも、平成15年以降、再度、減少に転じているのが理解できると思います。
 ということで、実は学生が数年前から博士課程への進学を避けるようになっているという現実があるのです。私のまわりを見てみてもこの傾向は極めてはっきりと感じられるようになっており、さすがに定員割れとまではいかなくても、10年くらい前には定員の2倍もの進学者がいたことを考えると隔世の感があります。

 つまり、この数年のギャップの間には、博士課程の定員割れがあちこちの大学や研究科で起こっていたということを意味しています。大学教員として大学院に籍を置いてみると良くわかるのですが、大学院の定員割れというものは文科省から最低の評価を受けることとして、大学内でもっとも忌み嫌われていることのひとつです。

 私は何かというと、博士課程の定員を減らすべきだという意見を発してしまうのですが、大学の経営にたずさわっていらっしゃる方々には、定員減あるいは定員の不充足ということは、そのまま文科省からの運営交付金の減少すなわち大学経営の危機につながることに見えてしまうようで、いつも即座に却下されてしまいます。

 そういう状況であるにもかかわらず自ら定員減を選んだ大学院があるということは、もはやいかなる手を尽くしても定員を充足することはかなわないという敗北宣言だと思います。それが表に出てきたということは、全国のかなりの国立大学でも同様のことが起こり始めていると見るべきでしょう。

 しかし、博士課程に進学するということを選ぶ学生が減ったことを受けて、それを追認するように定員を削減するというのでは遅すぎるのです。

 ここは、思い切って希望者をはるかに下回るところまで定員を下げて、ある意味でのシビアな競争を課し、そのかわり博士課程に入学することができた者には、しっかりとした研究者になる訓練を行い、それに応えてくれた学生には少なくとも10年間くらいは安定して勤められる研究職を与えるというような状況になったら、状況は大きく変わると思います。

 前にも書いたと思いますが、もはや国立大学の理学部などでは修士は義務教育化しています。それはそれで良いと思いますが、その中から大学や研究所の後継者を育てるのが博士課程というふうに発想を変えてはどうでしょう。

 このまま進学希望学生の減少に引きずられるように、徐々に定員を減らしていくようなことを続けていくのでは、ただただ疲弊して死をまつのみだと思います。大学経営を考える皆さまには、ここらで発想を転換して、攻めの制度作りをお願いしたいと思います。
Commented by K_Tachibana at 2006-08-30 22:46 x
TBいただきありがとうございました!
「博士の生き方」サイトを運営されている方は,私も存じております.ふだん彼のサイトをみているわけではないですが,博士の生き方セミナーなどを企画して活躍しておられますね.
会社関係や知人の間で話題になるのは,博士課程の定員もさることながら,この場に及んで学部を増やしたり,新設したりしているところが目に付くこと.関学と親和大の統合など,統合・縮小の動きはまだ微々たるものだと感じています.
萩国際大の危機の次に東和大が廃校になる話を読みましたが,まだ一部の話でとどまっているのは,とりもなおさず学校経営が旨みのあるビジネスだからなのだと思います.
Commented by stochinai at 2006-08-31 08:52
 「民間でできることは民間で」というのは一面の真理だと思うのですが、国の未来を左右する教育までも経済原則・市場原理に任せてしまって良いのかというところには大いに疑問があります。
 なんでもかんでも自由放任にして良いのなら、政府はいらないということになります。哲学を持った政治をお願いしたいものです。
Commented by inoue0 at 2006-08-31 16:03
 大学学部定員の割り振りもかなり変更の余地があるんじゃないですか?たとえば、今の時代に農学部はこんなにたくさん必要があるのかどうか。
 東京大学において農学部はいまだに学生と教員の1割を擁する有力学部です。教育学部や薬学部や医学部よりも多いのです。この状況は他の国立総合大学でもあまり変わらないでしょう。農学部を生物資源学部だとか水産学部と言い換えたりしてますが。
Commented by inoue0 at 2006-08-31 16:09
 これを機会に、きちんとした選抜を行って有能な人を残すようにしてほしいですね。昔のように第二外国語を理系進学者にまでやらせて無意味に勉強時間を使わせたりとかしないで。
Commented by alchemist at 2006-08-31 17:45 x
大学院は定員を思いきって削減して、授業料は廃止、バイトをせずに研究に専念できる程度の奨学金を給付・・・というのが本来のあり方でしょう。これは民間にはできないことではないでしょうか?
Commented by stochinai at 2006-08-31 22:24
 大学も大学院も「改革」という名の下で行われていることは、現場にいる抵抗勢力と、中味は変わらなくてもいいから変わったように見えれば満足する「お上」との妥協の産物です。この30年くらいそれが続いてきた結果の今ですから、ちょっとやそっといじったくらいではダメかもしれません。政府が変わって、さらに10年か20年計画でじっくりやってくれないでしょうか。あるいは、絶望ですかね。
Commented by K_Tachibana at 2006-08-31 23:35 x
今日も文科省の委員会を傍聴に行ってきました.
「世界トップレベル拠点プログラム」という10~15年規模の中期事業を立ち上げるそうです.「高いレベルの研究拠点を基盤としたグループに資金を追加的に集中投入」し,優秀なポスドクを囲い込むそうです.外国人研究者のための研究環境も整えて,研究者を外国からもドンドン呼び込むのだそう.
投資できる資金も限られているでしょうから,これ以外の研究科は全体的にベースの部分が下がるという可能性があります.これも第3期科学技術基本計画の「選択と集中」,イノベーション戦略の目指す道のようです.ご参考まで.
Commented by stochinai at 2006-09-01 21:35
 科学の世界も威勢が良い話が幅を利かせるようになってきているようです。
 全員に公平に配当される威勢の良くない運営交付金が、今年は2/3から半分にまでなるという噂も聞きました。これは、競争的資金を得られない研究はやめてくださいというメッセージにもとれますが、そうなると新しい研究が芽生えるチャンスもなくなりますね。文科省では、そういうものも輸入すれば良いと考えているのでしょうか。
 学生が逃げ出し始めた大学院ですが、次は教員も逃げ出し始めることでしょう。
by stochinai | 2006-08-30 21:25 | 大学・高等教育 | Comments(8)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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