5号館を出て

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あと一日

 さすがに4日目になると、参加者にも疲れが目立ってきます。講演中にちょっと中座するために、ステージと逆向きにホールの階段を上っていくと、かなりたくさんの人が居眠りをしています。お疲れさまです。

 というわけで夕方に最後の講演が終わった時には、それまでは活発に出ていた質問もなかなか出ず、実は質問をしようと手を挙げていた人もいたのですが、座長も一刻も早くここから抜け出して懇親会の食事とドリンクと余興へと気持ちが動いてしまっていたのでしょう。結局、質疑応答はスキップして、人々はディナー開場へと向かうことになりました。

 まあ、学会の質疑応答は若干セレモニー的なところもありますし、ほんとうにいろいろと話し合いたいのであれば、その後で個人的に話をしますので、質疑応答がないことはそれほど致命的なことではありません。

 このように、学会というものは関係者が一ヶ所に集まるということがもっとも重要なポイントです。学会発表というのはお互いの自己紹介のようなもので、お互いが自分が今どのような研究をやっているのかを知らせ合うことができれば、あとは個人的なつき合いが始まります。そこまで行ってしまえばもう学会などはいらなくなり、あらゆる手段を通じて研究者同士の交流が始まります。

 それでおわかりだと思いますが、学会とは無名の駆け出しである学生・院生のデビューの場としてもっとも重要なものなのです。誰にも知られていない学生が、「こんな研究をやっていますので、よろしくご指導ご批判をお願いします」ということで発表すると、関心を持ってくれる先輩が必ずいてくれ、暖かいまたは厳しい反応を返してくれます。特にほめられなくても良いのです。たまたま在籍している大学などという狭い世界では誰にも感心を持たれないような研究テーマにでも、関心を持ってくれる人が必ずいることを知るだけでも、次の日からのやる気がわいてくるものです。

 また、ある程度定した研究生活を送っているシニア研究者にとっては、学会は自分の研究の進展を報告するだけではなく、新しいテーマのヒントとなるアイディアに巡り会えるかけがえのない機会です。研究に行き詰まった時などに、新しいアイディアのために役に立つインスピレーションを与えてくれる学会が、実は先端研究の学会などではなく今や黄昏と思われているような古くからある学会であることが多いということは、意外と知られていないかもしれませんが「事実」です。

 このように遊びに行っているわけではもちろんないので、朝から晩まで何日も学問だけに浸っていると疲れてくることも事実です。というわけで、学会には息抜きの行事が必ず付属しています。今回は、主に外国からのお客さんのための観光旅行もありましたが、普通は懇親会という名の飲み会が必ずあります。講演の後のディスカッションとして、もっとも熱が入り実質的な共同研究の話が決まったりするのもこういう場であることが多いものです。

 とは言え、懇親会ですから、食べて飲んで楽しむことが前提です。今日もいろいろと出し物がありました。その中でも、もっとも人々の注目を集めたのがこれです。舞台よりも、写真を撮りまくる観客のほうがおもしろかったので、パチリ。
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 その出し物は、子ども達も入った太鼓の演奏でした。最後に、会場から太鼓の打ち手を募集したところ、世界中からの参加者が集まりました。
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 よく音楽に国境はないと言いますが、打楽器がその最たるものだと感じさせられました。みなさん人種・国籍を越えて、太鼓のリズムに乗っていました。
Commented by ぢゅにあ at 2006-09-16 10:57 x
日本の太鼓はアメリカでも周知度が高いと思います。
明日、町のフェアがあるのですが偶然、プログラムに「Taiko Drum」の演奏があります。アメリカ全土にはかなり数の太鼓チームがあって、有名なところは全米ツアーもしてるようです。実際、こちらの大学の太鼓クラブにも顔を出したことがありますが、音楽というよりは、かなり激しいパフォーマンスのようにも思います。みな汗だくですから。
個人的には幼少より聞いてた北海太鼓がマイベストです。
Commented by kshojima at 2006-09-16 23:43
確かに自分が稚拙だと思っている(真には思ってはいないが)研究で、国内の学会でも大して見向きをされなくても、国際学会で見向きされるたものだ。先日の学会で1人の先生に張り付かれ質問攻めに。1人であれこれこそうれしいものはない。論文にまとめてさらに発展させたいのだが、如何せん。。。
Commented by stochinai at 2006-09-17 13:30
 ぢゅにあさん、おしさしぶりです。太鼓は音楽と言うよりは、もっと原始的な脳を刺激されるので、反応がいいのでしょうね。私も好きなのですが、あまりにも簡単に人を陶酔させるので危険なものだという気もしています。
Commented by stochinai at 2006-09-17 13:32
 kshojimaさん。科学のひとつの特徴はその多様性であり、オタクっぽさが面白さの裏にあると思っています。しかし、最近はよりたくさんの人を引きつける科学が評価されるようになってしまい、多様性がどんどんなくなってきています。危機ですね。
Commented by kshojima at 2006-09-17 18:41
どうも科学の世界でも学生も行政も流行に乗りたがる傾向があるように思います。僕も大学進学時はそうでしたが。。。
生物学ではよく多様性が問われますが、科学ももちろん社会、人間関係も多様性を認め合えることが大事だと最近思います。科学ならその中から意外な事実が分かったりするでしょうし、社会ならもっと争いごとが
減るような気がします。
by stochinai | 2006-09-15 23:59 | 生物学 | Comments(5)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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