5号館を出て

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人事委員会の責任

 内閣が新しくなったようですが、それよりも前に安倍さんがすべきだったことは、国会解散と総選挙だと思います。小泉さんは、総選挙の洗礼を受けていますから首相として、選挙という手続きによって国民に支持されたということは言えると思いますが、自民党の中で総裁が変わったこととその総裁が国民に首相として支持されているかどうかはわからないわけですから、筋としてはやはり国会解散総選挙をやって、改めて総理大臣として国民に信を問うのが適切だと思います。国会が代議員制の国民投票であるという解釈も成り立たないわけではありませんし、小泉政治を完全に継承するので、首相がだれであっても政策方針は変わらないというのであれば、まあ次の選挙までのつなぎ内閣というのなら、これはこれで良いのかもしれません。

 それにしても、内閣というものは変わるたびに頼りなく思えてくるのは、こちらが歳をとったせいばかりとも言えない気がします。とりあえず、やってみなければわからないという意見も正論でありますので、新しい内閣には良い政治をお願いしたいところです。よろしくお願いします。

 さて、先日来日本の大学・研究現場を不安に陥れている大阪大学論文ねつ造および助手の方が死に追いやられた事件ですが、当の研究科に置かれた研究公正委員会の調査報告書および研究科長の近藤さんの談話「真理を探究する科学研究の公正な発展のために」を読むと、論文のねつ造に関しては、それなりに素早く適切な決着を付いたと感じられます。

 報道によると研究科教授会は、杉野教授を懲戒解雇とする処分案を決め、本人に通知したようです。今までは、論文ねつ造が明らかになったケースでも、短期間の休職処分くらいしか出されないのが日本の大学のやり方でしたから、それに比べるとまあ妥当なところだと思います。

 しかし、この問題が大きな波紋を起こしているのは、論文ねつ造よりもそれを告発した助手の方が自殺をしたということなのですから、それに対して論文ねつ造との関連が見いだせなかったからといって、これで幕引きになるのだとしたら、せっかくの調査委員会報告や研究科長のコメントに対する前向きの評価は失望へと変わることになるでしょう。

 前のエントリーのコメント欄にも書いたように、教授の論文ねつ造と助手の方の死に関係があると思っている人の方が圧倒的に多いという状況は否定できないと思いますので、その件を明らかにするための主に第3者からなる調査委員会を発足させていただけないものでしょうか。

 それと、もう一つ提案があります。それは、問題の教授を選出した人事委員会を再招集して、その方達に教授を選出した過程に問題はなかったかどうかを点検評価してもらいたいということです。そもそも大学の人事は、ほとんどの場合が研究者のみで構成された人事委員会で行われ、選考結果は明らかにされますが選考の過程が明らかにされるなどということは聞いたことがありません。逆にいうと、人事委員会が公正な人事をやっているかどうかをチェックするしくみが事実上ないということです。

 確かに、その後問題が起こらなければ、その人事は成功だったということになりますので、人事委員会の評価は可となると思いますが、今回の教授を選考した人事委員会の評価はとりあえず不可だと思うのです。だからといって、その人事委員会のメンバーをいきなり処分するというのも酷な話だとおもいますので、教授を選考した人事委員会がきちんとした人事を行っていたかどうかについてメンバーに弁護の機会を与えるという意味においても、選考過程を再調査して欲しいと思います。

 大学の人事委員会の不透明性については、それこそ大学の伝説あるいは7不思議のひとつとして、現場に近い人間にはあまりにも普通のこととして考えられていることです。今回の助手の方の死に関しても、ひょっとすると大学の人事における不透明性(助教授以下の人事は、当該講座の教授がすべての権限を持っている場合が未だに多いのです)も関係があるかもしれません。

 研究科長である近藤さんの談話の中にある「研究室の閉鎖性の排除」や、「調査の公正性の保証」に加えて、大学内における人事も是非とも透明にしていただきたいと思います。

【トラックバック送付先】
 大阪大学大学院生命科学研究科からの報告書
 大阪大論文ねつ造:教授は懲戒解雇
 大阪大学大学院生命機能研究科「調査報告書」の外部公開を歓迎
 Natureの糾弾に阪大はどう応えるのか
 Just say No
Commented by haecceitas at 2006-09-26 21:37 x
TBありがとうございます。haecceitasです。
なるほど人事の責任というのは思いつきませんでした。
今回の調査報告書はお見事だったと思います。自身のブログにも書きましたが、内部告発としては理想的なケースだったはずの事件なのに、ひとりの命が失われたのは腑に落ちません。まさか、助手の方の自死が調査をまっとうなものにした要因だとは考えたくないですが。
本当に解明しなくてはならないことが残っています。

Commented by viking at 2006-09-26 23:52 x
エントリ公開予定時刻より前にTBをお送りしてしまってご迷惑をおかけしました^^;&逆にTBを送っていただき、ありがとうございました。
僕以外の方も多くコメントされていますが、調査報告書自体は適切に客観性も保っており不正追及の結果としてはよくできていると思います。しかしながら、NatureのNews記事でも指摘されている通りこの事件には単なる論文捏造以上の暗部が見え隠れしています。その点を解き明かさない限りけりがつくことはないでしょう。
人事委員会の責任を問うという案、興味深いですね。もう少し具体的にどんな追及が可能かを教えていただきたいところです。
Commented by nanashi at 2006-09-27 02:58 x
人事委員会の検証は、この教授の評価を問うに留まらず、判断が後々世間から問われることになれば今後人事に関わる方々の意識の中に緊張感が生まれるという効用もあるように思います。
もちろんその検証は結論ありきで行われないことを期待したいです。結果として不可だったにせよ、当時の判断は妥当だったかも知れない。この人は教授になった時には、真っ当な科学者だったかも知れない。もしそうであった場合、検証が結論ありきで行われてしまっては、いつどのように変節したのかを知る余地がなくなり、同様の事件を回避する原因を見逃すことになりますから。
調査報告書を読む前は、不祥事続きだから教授を処分せざるを得ないという「空気」を読んだ結論ありきの一方的なものではないかと思っていました。けれども、冷静に証拠をそろえた上で断罪されているのをみて、調査に関わられた方々の意志を感じました。信頼や信用はこうやって少しずつ培われるものなのではないかとも思いました。

やるせないと思ったのは、亡くなられた方は決してひとりで立ち向かったわけではなかったこと。共著者で一同に義を通されたにもかかわらず、追い込まれてしまったという現実は相当に絶望的であると感じます。
Commented by stochinai at 2006-09-27 04:51
 人事委員会の責任追及をどのようにするかについて、それほど具体的なイメージがあるわけではないのですが、一時期人事がインパクトファクターの足し算などというバカな比較をもとに行われていたことがある(今でも?)とも聞きますし、明らかに業績が上の競争相手を抜いて選考された例などもまた多いと聞きます。
 そうした人事が行われて選ばれた人が今回のような「事件」を起こした場合、人事選考のやり方にも事件の遠因があるとも言え、いい加減な人事をしたら人事委員会自体の責任も避けられないのだという、nanashiさんのおっしゃる「緊張感」を与えるのも提案理由のひとつです。

 もともと人事を透明にすべきだと思っていたこともあり、こういう事件をきっかけに改善してもらいたいという趣旨でもあります。
Commented by X at 2006-09-29 03:23 x
Stochinaiさん
今の日本、漫画になりそうな事件が多発してます.今回の一件も、公開された生々しいメールからも理解できるように、非常識な身勝手さから、いとも容易く捏造に向かってます.この背景が今もってはっきりしていないので、もう少し私は考えてから意見を述べたいです.こういう世の中なので、先生もまたご身辺を用心することをお進めします.せっかく我々の科学者の研究社会を何とか改善して盛り上げていこうと言う方々へ良い場所提供してくれているのですから、ここでまた憤死されるという異常な事態を起きるようであれば我々も失望してしまうことでしょうから.くれぐれもご注意を.
by stochinai | 2006-09-26 20:19 | 大学・高等教育 | Comments(5)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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