2005年 01月 28日
パワーポイント症候群
本日、博士号審査の最終試験がありました。制度として博士号授与は、3月、6月、9月、12月と4回あるのですが、学部の卒業や大学院修士過程の修了と同じこの次期に申請する人が多いので、春の審査会はなかなか大変なのです。生物科学専攻(生物)としては、本日9人の審査がありました。ひとり約30分で、およそ5時間かかりました。
最終試験を英語で言うと final defense、最後の防衛です。博士論文に投げられた、すべての疑問・質問・反論に答えることができなければ、審査によって不可となる可能性があることになっています。しかし、この30年間くらい私が実際に見てきた最終試験で、失敗した人はひとりも見たことがありません。ただし、いい加減に審査をしているというわけではなく、たくさんの段階をクリアすることができた人だけが最終試験を受けることができるので、ここまできてダメだしされる人がいないということだと思います。石を投げれば博士に当たると言われるくらい博士が増えてきて、博士の重みが昔に比べると相対的に軽くなっているとしても、博士論文の提出はそれほどイージーなことではありません。
さすがに今どきですので全員がノートブックを持参して、パワーポイントやキーノートなどのプレゼンソフトを駆使しての発表です。ムービーやアニメなどが取り入れられていることも、全然珍しくなくなりました。
タイミング良く、今日の理系白書ブログにも、PPT症候群という記事が載っていました。「最近はシンポジウムでも講演でも、パワーポイント(PPT)を使う人が増えた。かくいう私も、これに頼っている。自分が伝えたいことを、整理して伝えられる点は、聴衆に親切だ。何より、『間』がもつのがいい。話術の拙さを補える。聴衆がスクリーンを見てくれるから緊張しなくて済む、というメリットもある」とのことです。
ひととき問題になった、機器つなぎ換えの後で映像が出てこないというトラブルも、ソフトとハードの改良により、だんだんと少なくなってきました。今日は、ちょっとありましたが、機器やソフトのトラブルというより、人間の緊張に由来するものだったようです。(笑、汗)
最近は高校生でも、パワーポイントなどを使いこなせる人が増えてきています。全学教育でも、学生にプレゼンテーションをさせるとOHPや実物投影機などに混じってフロッピーディスクやメモリースティックでパワーポイントファイルを持ってくる学生も出てくる時代になりました。しかし、最近のノートパソコンにはフロッピードライブがないものが多いということを知らなかったり、先生がパソコンを持ってきていない可能性などを考えずにフロッピーだけを持参するなどという様子を見ていると、不安になります。彼らは、たとえパワーポイントが使えたとしても、さまざまな状況を想定して、未来を予測し危機管理するなどということがあまりできていないことも知るのでした。(幸せに育てられてきたことも感じます。)
というわけで理系白書ブログのタイトルの「症候群」でも、パワーポイントを使う危険性を書いているのかと思ったらそうではなく、「ラップトップとプロジェクターをつなぐケーブルを忘れたことに気づき、目の前がスーッと暗くなった」という、あまり本質的ではないトラブルのことが書いてあったのでちょっとがっかりでした。
さまざまなところで言われていることですが、パワーポイントの恐ろしさは、そこで伝えられる内容とはまったく関係がなく、どんなものでも形だけは様(さま)になってしまうことだろうと思います。
話を聞かずに、見ていると「おもしろい」プレゼンはとても多くなっているのですが、よくよく話を聞いていても、中味がまったく空疎だったり、言いたいことがまったく伝わってこなかったりというものがやたらと多いのも事実です。特に、文字や画像の出し方にアニメを駆使したものにろくなものがないことが多い、という傾向はありそうです。
逆に、ソフトの特徴を生かし切って、非常に印象強い説得力を持った発表があることも、また事実です。そういうものに限って、画面提示の修飾テクニックは抑制の効いたものになっています。
つまり、ソフトとしてのパワーポイントの使いこなしを学ぶ前に、しっかりとしたコミュニケーション技術を身につけることが大切なのだろうと思います。それがあれば、パワーポイントという提示技術を効果的に使うことは簡単なことなのだろうと思います。
振り返って、コミュニケーション技術が何のために必要なのかを考えると、自分が伝えたいことがあるということが前提になることがわかります。主張がないのならば、コミュニケーション技術は単なるゲームになってしまうでしょう。パワーポイント症候群とは、伝えたい内容ではなく伝える方法が主役になってしまう病気のことなのだと思います。
#まだまだ手探りでブログの練習をしています。この記事を理系白書からのトラックバックにしようと情報を送ってみたのですが、失敗したようです。マイクロソフトネットは、見知らぬヒトからのトラックバックは受け付けないのかもしれません。それとも、こちらが公開していないのでダメなのかな?良くわかりません。
最終試験を英語で言うと final defense、最後の防衛です。博士論文に投げられた、すべての疑問・質問・反論に答えることができなければ、審査によって不可となる可能性があることになっています。しかし、この30年間くらい私が実際に見てきた最終試験で、失敗した人はひとりも見たことがありません。ただし、いい加減に審査をしているというわけではなく、たくさんの段階をクリアすることができた人だけが最終試験を受けることができるので、ここまできてダメだしされる人がいないということだと思います。石を投げれば博士に当たると言われるくらい博士が増えてきて、博士の重みが昔に比べると相対的に軽くなっているとしても、博士論文の提出はそれほどイージーなことではありません。
さすがに今どきですので全員がノートブックを持参して、パワーポイントやキーノートなどのプレゼンソフトを駆使しての発表です。ムービーやアニメなどが取り入れられていることも、全然珍しくなくなりました。
タイミング良く、今日の理系白書ブログにも、PPT症候群という記事が載っていました。「最近はシンポジウムでも講演でも、パワーポイント(PPT)を使う人が増えた。かくいう私も、これに頼っている。自分が伝えたいことを、整理して伝えられる点は、聴衆に親切だ。何より、『間』がもつのがいい。話術の拙さを補える。聴衆がスクリーンを見てくれるから緊張しなくて済む、というメリットもある」とのことです。
ひととき問題になった、機器つなぎ換えの後で映像が出てこないというトラブルも、ソフトとハードの改良により、だんだんと少なくなってきました。今日は、ちょっとありましたが、機器やソフトのトラブルというより、人間の緊張に由来するものだったようです。(笑、汗)
最近は高校生でも、パワーポイントなどを使いこなせる人が増えてきています。全学教育でも、学生にプレゼンテーションをさせるとOHPや実物投影機などに混じってフロッピーディスクやメモリースティックでパワーポイントファイルを持ってくる学生も出てくる時代になりました。しかし、最近のノートパソコンにはフロッピードライブがないものが多いということを知らなかったり、先生がパソコンを持ってきていない可能性などを考えずにフロッピーだけを持参するなどという様子を見ていると、不安になります。彼らは、たとえパワーポイントが使えたとしても、さまざまな状況を想定して、未来を予測し危機管理するなどということがあまりできていないことも知るのでした。(幸せに育てられてきたことも感じます。)
というわけで理系白書ブログのタイトルの「症候群」でも、パワーポイントを使う危険性を書いているのかと思ったらそうではなく、「ラップトップとプロジェクターをつなぐケーブルを忘れたことに気づき、目の前がスーッと暗くなった」という、あまり本質的ではないトラブルのことが書いてあったのでちょっとがっかりでした。
さまざまなところで言われていることですが、パワーポイントの恐ろしさは、そこで伝えられる内容とはまったく関係がなく、どんなものでも形だけは様(さま)になってしまうことだろうと思います。
話を聞かずに、見ていると「おもしろい」プレゼンはとても多くなっているのですが、よくよく話を聞いていても、中味がまったく空疎だったり、言いたいことがまったく伝わってこなかったりというものがやたらと多いのも事実です。特に、文字や画像の出し方にアニメを駆使したものにろくなものがないことが多い、という傾向はありそうです。
逆に、ソフトの特徴を生かし切って、非常に印象強い説得力を持った発表があることも、また事実です。そういうものに限って、画面提示の修飾テクニックは抑制の効いたものになっています。
つまり、ソフトとしてのパワーポイントの使いこなしを学ぶ前に、しっかりとしたコミュニケーション技術を身につけることが大切なのだろうと思います。それがあれば、パワーポイントという提示技術を効果的に使うことは簡単なことなのだろうと思います。
振り返って、コミュニケーション技術が何のために必要なのかを考えると、自分が伝えたいことがあるということが前提になることがわかります。主張がないのならば、コミュニケーション技術は単なるゲームになってしまうでしょう。パワーポイント症候群とは、伝えたい内容ではなく伝える方法が主役になってしまう病気のことなのだと思います。
#まだまだ手探りでブログの練習をしています。この記事を理系白書からのトラックバックにしようと情報を送ってみたのですが、失敗したようです。マイクロソフトネットは、見知らぬヒトからのトラックバックは受け付けないのかもしれません。それとも、こちらが公開していないのでダメなのかな?良くわかりません。
by stochinai
| 2005-01-28 23:37
| コンピューター・ネット
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