5号館を出て

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パラボリック・フライト

 いよいよ今日から、オタマジャクシを微小重力におく飛行実験の開始です。こちらは飛行を前に、緊張しているアフリカツメガエルのオタマジャクシです。
パラボリック・フライト_c0025115_23434311.jpg

 ジェット機で放物線を描くように飛行させるパラボリックフライトを行うと、短時間(今回は20秒間)ではありますが無重量状態(正確には微小重力環境)を作り出すことができます。

 アフリカツメガエルの幼生(オタマジャクシ)は「エラ」も使うのですが、カエルと同じような肺を持っていて、水面に口を出して空気を取り込むことで正常な呼吸ができます。逆に言うと、水面で息をすることができないと、十分に酸素を取り込むことができないのです。地球上で水中にいるオタマジャクシが水面を知るのは、重力と反対側の方向にはたらく浮力によると考えられています。ということは無重力環境下にいると、浮力もなくなりますので、浮力を頼りに水面を発見することはできなくなります。

 いままで、宇宙空間に送られたアフリカツメガエルの幼生は、うまく空気を吸い込むことができないために、成長障害が起こることが報告されています。

 我々の当面の目標は、たとえ無重力空間でもオタマジャクシが正常に空気を吸うことができ、アフリカツメガエルが宇宙でも生活できるようにしてやることです。アフリカツメガエルは、地球上では発生生物学研究のアイドルといわれるくらい広く実験に使われていますので、それを使って宇宙で実験ができるようになる意義は、とても大きいのです。

 そのために、我々は彼らが息を吸いやすい水面を作ってやることと、水面の位置を教えてやることを目標に実験を行っています。

 今回、微小環境重力を作るパラボリックフライトしてくれたのは、DASのJA30DAという小型ジェット機です。

 初回の飛行ですから、必ずしも大成功というわけでもありませんでしたが、オタマジャクシ達はがんばってくれました。15回のパラボリックフライトの間に、水面をどうやって見つけるのかということを我々に教えてくれる行動を見せてくれました。

 こちらが、フライト後のオタマジャクシ達です。
パラボリック・フライト_c0025115_034396.jpg
 ほっとしたようにリラックスしています。

 明日は、別のグループのオタマジャクシに飛んでもらいます。
Commented by もも at 2006-10-20 15:17 x
この実験が成功したら、人間も宇宙空間で呼吸できる装置が、いまよりコンパクトになる、ということでしょうか。なんでも「人間の恩恵のため」と考えるのもよくないでしょうが。
Commented by GORO at 2006-10-20 16:37 x
オタマジャクシとはいえ、パラボリックフライトを体験できるなんて羨ましい限りです(笑)。しかも運賃がタダなんて・・・・。
しかし面白い実験ですね。素人には思いもつかない実験です。
Commented by Wisdom96 at 2006-10-20 23:21 x
面白そうな実験をしているんですね。装置の様子が今イチよく分かりませんが機会があったら教えてください。明日のグループのオタマジャクシもがんばってくれるといいですねえ。この飛行機にはつぶやきさんものられているのですよね?
Commented by stochinai at 2006-10-21 00:01
 ももさん、この研究はすぐにヒトの役には立たないと思いますが、将来宇宙旅行をする時の仲間が増えるという役には立ってくれるかもしれません。もちろん、研究費の大半は皆様の税金から出ているのですから、人類の役に立つと確信してやっている研究なわけですが、長い目でみてやってください。

 「素人」の方には思いもつかない実験だということは良くわかりますが、できればこういう研究も支持していただけると幸いです。オタマジャクシ達は無料で微小重力を経験できているとはいえ、彼らにとっては命がけなので許してやってください。

 はははは、wisdom96さん。私は怖いので乗りません。そのかわり学生がその席を奪い合っても乗ってくれています。ありがたいことです。
Commented by ヨシダヒロコ at 2006-10-21 12:04 x
「緊張している」おたまじゃくしと「ほっとした」おたまじゃくしが写真ではおんなじに見えるのが、なんだかほほえましいです。
Commented by stochinai at 2006-10-22 00:05
 はははは、その通りですね。写真だと、まったく同じに見えると思います。しかし、単に容器に慣れたということかもしれないのですが、行動は明らかに違っています。
Commented by nanashi at 2006-10-22 17:08 x
脳の研究をしている人がイカを育てる方法を必死で考えた、という話を思いました。ちょっと見ただけでは何でそんなことを調べるのだろう?と不思議に思えるけれども、よくよく将来の展開を考えてみると大きく広がりのある実験ということですかね。実験自体のおもしろさもさることながら、この実験がうまくいったら将来どういう研究の展開に繋がるのか、どういうことが出来るようになるのか、と考えてみるのも楽しいものです。
自然を観察することそのものの楽しさ、それを様々な角度から分析してみる楽しさ、観察・実験したことの将来の展開を想像してみる楽しさ、色々ありますね。
それにしても、相当疲れそうな実験のようで・・・(苦笑)
Commented by stochinai at 2006-10-22 22:25
 その時開発されたイカの水槽のノウハウは、今はさまざまな動物を育てることに応用されており、昨日訪ねた水族館でも「飼育が難しいサンマ」の展示に使われていました。
 研究の成果をどう使うのかということについては、おそらく多くの科学者はあまり意識していないことが多いと思うのですが、今までわからなかったことがわかるのですから、いろいろなところで応用されうる可能性は大きいと思います。科学者が想像もしていなかったところで意外な使われ方をされて役に立つケースが多いことを考えると、nanashiさんのような見方をしてくださる方が、科学の成果を有効に使ってくれるのだと思います。
 空を飛んできた人は「疲れた、疲れた」と言いながらも、どこか楽しそうなのが、いかにもというところですね。
by stochinai | 2006-10-19 23:59 | 生物学 | Comments(8)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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