5号館を出て

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大学入試の廃止

 昨日はOECD調査結果の公表で、教育界に激震が走ったので、もう一つのニュースが埋もれてしまいました。京大が07年度入試から全学で共通にやる後期入試を廃止するというものです。

 大学の中にいると、この入試というものにとてつもない(必要以上の)エネルギーが割かれていることが良くわかります。しかも、基本的に秘密業務なので、作業そのものに携わっていることも、どんなに大変かということについても、内部で愚痴を言い合うことくらいしかできません。

 また、入試問題が新聞で公開され、予備校の先生などによって正解が出されるような旧帝大のようなケースだと、問題の内容にまで詳細に詳しい批評や批判、時としては非難までも受ける可能性がありますから、出す方としては胃が痛くなる1年なのです。しかも、最近は分離・分割方式と言うことで、大学独自の2次試験を二回もやりますので、その苦労たるや大変なものなのです。

 そもそも、試験問題を作る側は高校で教えられている教科の内容や、学習指導要領などというものには疎い人が多く、逆にそれを批判する側の高校や予備校の先生は、その道のプロですから勝負になりません。最近は減ってきたと思いますが、奇問・難問と非難されるような問題が出されるのは当たり前というのが内部から見た感想です。

 最近は、予備校に入試問題の作成を依頼する大学も出てきたようですが、問題作成を命じられた人の立場に立ってみると、その気持ちは良くわかります。

 各大学が独自に行う2次試験の結果は、センター試験との相関が極めて高いことも一般に知られており、センター試験を受けた学生にもう一度試験を受けさせる意味はほとんどないことも周知の事実だと思います。センター試験の成績だけで入学の合否判定をしても、2次試験の結果を加算しても、あるいは2次試験の結果だけで判定しても、いずれもそれほど大きな差を生じないことを示すデータは、日本中の大学が持っていると思います。

 にもかかわらず、センター試験だけで判定する国立大学がない(少ない?)のはなぜなんでしょう。

 私にはまったく理解できません。何か「目に見えない大きな力」に支配されているとしか思えないのです。

 そんな中で国立大学が法人化されましたから、大学運営において効率の悪いことは止めようという話になってくるのは当然の流れです。今後、各大学で追随する動きが出るのではないでしょうか。そもそも、私大などでもセンター試験を利用するところが増えてきて、この先自前の入試そのものをしない大学がどんどん増えてくるだろうと、私は思っています。

 そもそも入試などという「儀式」をやるくらいなら、希望者を全員入学させて、やる気とついてくる学力のある人間だけを残すシステムを作る方がよっぽど生産的だし、前向きだと思うのですが、どうでしょうか。

 初年度は、希望者全員を入学させた上で、100人とか200人とか500人とかのマスプロ講義でガンガンしごいて、それでも大学に残りたいという人間だけを残して、「本当の大学の教育」をしていくというような大学がひとつくらいあっても良いのではないかと思います。どなたか、お金を出してくれないでしょうか。そういうおもしろい試みにならば、いくらでも協力したいと思います。
by stochinai | 2004-12-08 00:00 | 大学・高等教育 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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