5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

歓びを歌にのせて

 週末DVD劇場、今日は「歓びを歌にのせて」です。このタイトルとジャケットの雰囲気から、アメリカ映画ならば見なくても筋が想像できてしまうようなものですが、スウェーデン映画ということと、アカデミー外国映画賞にノミネートされた作品ということで興味を持ちました。

 原題はスウェーデン語で Så som i himmelen だそうで、そのままではなんのことかわかりませんが、英語では AS IT IS IN HEAVEN だそうです。「ここは天国か」というような意味でしょうが、相変わらず毒にも薬にもならない「歓びを歌にのせて」としかタイトルの付けようがなかったのか、と悔やまれます。

 また、久々に文部科学省推薦というクレジットを見た気がしますが、子供たちにも見せたのでしょうか。本気で推薦するのなら、学生は半額とか無料とかにしてはどうでしょう。今の時代なら、この推薦を受けるということは映画の観客を減らすこと以外の効果はないように思えます。

 日本での公開が約1年前ということで、まだ映画紹介のウェブサイトも残っており、予告編も見られます。

 病気により引退して故郷に戻った世界的指揮者が、教会の聖歌隊を指導して、自分がやりたかった本当の音楽を完成させるという、簡単に書いてしまえば身も蓋もないお話ですが、実際に見てみないと映画が伝えようとしたメッセージの100分の1も伝わりません。

 監督の性格なのでしょうが、いろいろな人間のディテールを描こうとするあまりに、わかりにくいところや、余計に感じられるところが随所に出てきますので、細かいところが気になる人は、なぜここでこういうシーンやこういうセリフが出てくるのか、そもそも必要なのかなどとちょっと考えさせれられたりすることで、映画に集中できなくなる感じがなきにしもあらずなのですが、細かいことはさておき素直に浸ることができれば、間違いなく感動させられる映画です。

 子供同士のいじめ、もてはやされたあげくの働き過ぎによる病気引退、田舎のスローライフ、教会の存在、保守的で退屈な田舎暮らし、ドメスティックバイオレンス、牧師の裏表、知恵遅れの青年、人間の多面性などなど、あまりにもいろいろなものが盛り込まれすぎて目が回る感じもするのですが、田舎を舞台にすることによって「今」という時代を鋭く表現していると感じました。

 もうひとつは、そんなものが本当にあるのかどうか知りませんが、監督(脚本?)が描きたかった新しい合唱のスタイルとして、合唱団員ひとりひとりの個性を認めた上で、その個性を生かすように新しい曲を作るというコンセプトが興味深く思えました。ただし、それによってできあがった作品が実際に提示されなかったのはちょっと残念でした。もしも、できていたらそれこそ「夢の合唱曲」になるのでしょうから、やはり現時点では架空のものだったということでしょうか。

 もうひとつは、各個人の「地声」を積み上げていってハーモニーにするという手法ですが、こちらはある程度成功していたようです。クライマックスにも使われているので、どんなふうに使われるのかは実際に見て納得していただきたいと思います。

 まったく派手なところのない映画ですが、若い娘がいきなり全裸で泳ごうとするシーンがもったいもつけずに描かれているところなどは、私が若い頃「フリー****の国」と言われていたスウェーデンという国の文化なのかと思わせられたりと、あまり見る機会の多くない国の映画を見ると慣れないカルチャーに対していろいろとショックを受けるところも映画の楽しみのひとつですね。

 数年前に見た「歌え!フィッシャーマン Heftig og Begeistret/Cool & Crazy」というノルウェーの漁師の素人合唱団を追ったドキュメンタリー映画とイメージが重なる部分がかなりあります。こちらもDVDが出ていますので、機会があったら見てください。
Commented by ヨシダヒロコ at 2006-12-11 04:29 x
偶然ですね。ちょっとわけがあってわたしも最近借りてみました。

素直によかったですけど、いろんなものが入っているといえばいえますよね。音楽には面倒なことを変える力がある、と個々メンバーの生活を描くことによって言いたかったのではないかと思いました。

スウェーデンには長年の文通友達がいるので、こんにちはというHejの発音が確認できてよかったです。「ヘイ」って感じです。この時期になると写真を送ってくるので、今わたしも準備中です。

フリー何とかはたぶんそんなことはない。あまり裸に抵抗がないだけらしいです。今度聞いてみよう。
Commented by ナオサン at 2006-12-11 07:52 x
>今の時代なら、この推薦を受けるということは映画の観客を減らすこと以外の効果はないように思えます。

思わず吹き出してしまいました。
Commented by stochinai at 2006-12-12 08:39
>あまり裸に抵抗がない
 確かに、欧米の人達は太陽が出るとどこででも水着になって、日向ぼっこをするという印象があります。光の少ない北欧の人は、ついでにハダカになってしまうという習慣(?)があるのかもしれませんね。でも、カリフォルニアの人も日光浴が好きみたいに見えるのは、先祖伝来の文化なのでしょうか。おもしろいです。

 「笑われるような存在」になってしまった、文科省推薦の映画がどうやって決まっているのか、興味があります。どなかた、ご存じでしたら教えてください。
Commented by HAMADA at 2006-12-12 11:00 x
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/movie/main9_a1/05033001.htm
教育映像等審査規程(昭和二十九年文部省令第二十二号)

というものがあります。
このように申請して審査してもらうものであり、役人が全ての映画に目を通し教育的価値のある優れた作品を発掘しているわけではなさそうです。配給側もわざわざ申請するのですから宣伝に+αを考えているのかもしれません。

と憶測で書いてますが、趣味で上映会をやった時に教えてもらった話なので、間違ってるかもしれません(^^;
Commented by stochinai at 2006-12-12 11:20
 早速の情報提供、ありがとうございます。こんな感じだと、各地の教育委員会の後援や推薦のシステムとあまり変わりなさそうです。かなり??というのもあるようだと、ますます権威も意味もなくなるのは無理がありませんね。
Commented by hirotakeG at 2006-12-12 19:37
今週の週末劇場は、”歓びを歌にのせて”だったのですね。
良い映画でしたね。 音楽を中心とした映画で心に残った映画は、陽の当たる教室(1995:Mr. Holland's Opus)とめぐり逢う朝(仏 1991)です。
お時間があれば是非。
Commented by stochinai at 2006-12-12 21:42
 「陽の当たる教室」は、今でもかなり鮮明に記憶が残っている映画です。「めぐり逢う朝」は、見逃しているような気がします。今度、探して是非見てみます。
Commented by ヨシダヒロコ at 2006-12-13 21:15 x
この映画見てて、英映画「ブラス!」を思い出しました。
Commented by stochinai at 2006-12-13 21:25
 そうですね。大会へと向かっていくあたりのストーリー展開は良く似ていると思います。「ブラス!」では良く知っている音楽がたくさん演奏されたのも親近感を覚えました。あの中で演奏されたアランフェス協奏曲と威風堂々は今でも印象に残っています。
by stochinai | 2006-12-10 23:55 | 趣味 | Comments(9)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai