2006年 12月 21日
コモドオオトカゲの単為発生(訂正と追記あり)
今日発行されたNatureに、イギリスの動物園で飼育されていたコモドオオトカゲ(コモドドラゴン)の卵が、単為発生をしているという報告が出ています。論文ではなく、ニュースとして書かれたこちらの記事の方が、わかりやすそうです。
処女ドラゴンが子どもを生んで動物園は大ショック Dragon virgin births startle zoo keepers
チェスター動物園では25個の卵から11個の子どもが発生中であることが確認されたという記事が載っています。3個の卵が壊れたので、遺伝子の検査などの実験に回されましたが、残りの8匹は1月には孵化する予定だそうです。一方、ロンドン動物園でも2年半前に22個の卵から4匹の子どもが生まれたのだそうですが、その時にもメスはオスと離されてから2年半も絶っていたので、単為発生したのではないかと疑われていたそうです。このメスは、卵を産んだのであわててオスと一緒にされると、オスと一緒になった2ヶ月後に新たに6個の卵を産み、そのうち1匹が孵化したそうです。
この度の論文で、上の二つの「単為発生」らしいケースについて、フィンガープリンティング法で遺伝子を調べたところ、すべての子どもの遺伝子はホモになっていて、それらの個体がオスの遺伝子と関わりなく発生をした単為発生個体のメス(すべてがオス)であることが確かめられたと言っています。
爬虫類ではヤモリやトカゲで単為発生をするものが何種類か知られていますので、コモドオオトカゲが単為発生してもそれほど驚くべきこととは思いませんが、動物園でオスなしで育てられたことが単為発生をするようになった原因だとすると、遺伝的多様性を維持しながら繁殖させたいと思っている動物園としては深刻な事態と受け止めているようです。ヘビやトカゲでも、同じような状況でメスだけにすると単為発生をしたという報告もあるのだそうで、動物園での1個体飼いという飼育方法にも疑問が出てきます。
このまま、単為発生が増えていくと遺伝的多様性が失われるばかりではなく、メスしか生まれなくなりますから、この種からオスが消えてしまうことになります。(【補足】参照)
おもしろい話題なのですが、いろいろな問題を提起もしているようです。
【関連過去記事】
処女懐胎
ミステリー・クレイフィッシュ
メスだけの島
【補足】
先ほどNature podcast を聞いていたら、コモドドラゴンの性を決定する染色体がZWというようなことを言っていました。読み落としていましたが、論文の中にも書いてありました。つまり、コモドオオトカゲでは単為発生で生まれた子どもはすべてがZZのオス(WWは死ぬ)になり、メスは生まれないことになります。(ヒトと同じようなXY型だと、メスからはメスが生まれるので、単為発生だけで世代を続けることができるのですが、コモドオオトカゲでは有性生殖に戻らなければ絶滅してしまいます。)
実は、これはなかなかうまくできた生き残りのしくみで、もしも特定の地域でオスがいなくなってメスが一匹だけ残されたとしても、単為生殖をすることでオスが生まれます。そのオスと「母親」が有性生殖することで、ふたたびオスとメスとからなる個体集団を増やすことができるようになるというわけです。
緊急避難としては、これで良いのかもしれませんが、子どもと母親が「有性生殖」しても、遺伝子の多様性は増しません。動物園が心配していることは、そういうことのようです。
処女ドラゴンが子どもを生んで動物園は大ショック Dragon virgin births startle zoo keepers
チェスター動物園では25個の卵から11個の子どもが発生中であることが確認されたという記事が載っています。3個の卵が壊れたので、遺伝子の検査などの実験に回されましたが、残りの8匹は1月には孵化する予定だそうです。一方、ロンドン動物園でも2年半前に22個の卵から4匹の子どもが生まれたのだそうですが、その時にもメスはオスと離されてから2年半も絶っていたので、単為発生したのではないかと疑われていたそうです。このメスは、卵を産んだのであわててオスと一緒にされると、オスと一緒になった2ヶ月後に新たに6個の卵を産み、そのうち1匹が孵化したそうです。
この度の論文で、上の二つの「単為発生」らしいケースについて、フィンガープリンティング法で遺伝子を調べたところ、すべての子どもの遺伝子はホモになっていて、それらの個体がオスの遺伝子と関わりなく発生をした単為発生個体
爬虫類ではヤモリやトカゲで単為発生をするものが何種類か知られていますので、コモドオオトカゲが単為発生してもそれほど驚くべきこととは思いませんが、動物園でオスなしで育てられたことが単為発生をするようになった原因だとすると、遺伝的多様性を維持しながら繁殖させたいと思っている動物園としては深刻な事態と受け止めているようです。ヘビやトカゲでも、同じような状況でメスだけにすると単為発生をしたという報告もあるのだそうで、動物園での1個体飼いという飼育方法にも疑問が出てきます。
おもしろい話題なのですが、いろいろな問題を提起もしているようです。
【関連過去記事】
処女懐胎
ミステリー・クレイフィッシュ
メスだけの島
【補足】
先ほどNature podcast を聞いていたら、コモドドラゴンの性を決定する染色体がZWというようなことを言っていました。読み落としていましたが、論文の中にも書いてありました。つまり、コモドオオトカゲでは単為発生で生まれた子どもはすべてがZZのオス(WWは死ぬ)になり、メスは生まれないことになります。(ヒトと同じようなXY型だと、メスからはメスが生まれるので、単為発生だけで世代を続けることができるのですが、コモドオオトカゲでは有性生殖に戻らなければ絶滅してしまいます。)
実は、これはなかなかうまくできた生き残りのしくみで、もしも特定の地域でオスがいなくなってメスが一匹だけ残されたとしても、単為生殖をすることでオスが生まれます。そのオスと「母親」が有性生殖することで、ふたたびオスとメスとからなる個体集団を増やすことができるようになるというわけです。
緊急避難としては、これで良いのかもしれませんが、子どもと母親が「有性生殖」しても、遺伝子の多様性は増しません。動物園が心配していることは、そういうことのようです。
生き物というのは本当に奥が深くて面白いですね。生物の倫理に反しているからとしてゲイの人たちを反社会的だと攻撃していた知人に聞かせてやりたい(^^)
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倫理というのは、人間が勝手に作り上げたものですから、広く生物界を見渡したら、特殊なルールにすぎないものが多いように思います。道徳や倫理を支えるものとして自然科学を利用すると「水からの伝言」のような「ニセ科学」が生まれたりします。
こんにちは。アメリカでも生まれたようです。現在、過去の異性関係の名残りではないか調査中とのことです。
Apparently immaculate Komodos hatched
http://www.boston.com/news/nation/articles/2008/02/07/apparently_immaculate_komodos_hatched/
Apparently immaculate Komodos hatched
http://www.boston.com/news/nation/articles/2008/02/07/apparently_immaculate_komodos_hatched/
私には大ニュースです。情報提供、ありがとうございました。
stochinaiさん、こんにちは。
こちらの記事を参考に、先日のNHKスペシャル『男が消える? 人類も消える?』についての感想を書いてみました。
コモドオオトカゲはZW型なんですね。とても参考になりました。ありがとうございました。
こちらの記事を参考に、先日のNHKスペシャル『男が消える? 人類も消える?』についての感想を書いてみました。
コモドオオトカゲはZW型なんですね。とても参考になりました。ありがとうございました。
by stochinai
| 2006-12-21 18:38
| 生物学
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Comments(5)