5号館を出て

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e-learningに慣れてきた学生

 基礎生物学という、大学一年生向けの生物学の講義が本日終了しました。前期は分子細胞生物学、後期は生物多様性を中心とした「生物学入門」の講義です。

 左下にある「レーヴン・ジョンソン生物学」という翻訳本を軸にした講義なのですが、前期後期合わせても、1時間半の講義をせいぜい30回くらいしかできませんので、全57章で1000ページを越える内容を扱いきるのは無理です。おまけに下巻の翻訳が遅れており、その部分は英語本を使うことになりました。

 それで、後期を担当した我々3名は、ノートなどを取らななくても良いので講義の内容を盛りだくさんにするという方針で臨み、パワーポイントを中心にしたビジュアル講義をやってみました。

 平均的に見て、1回の90分の講義の中で50枚から100枚のスライドが使われることになりますので、学生からは「楽しく話を聞けるのですが、振り返ってみると内容を思い出せない」という声が多かったので、講義終了後はパワーポイントファイルをウェブで見ることができるようにしておきました。

 この講義にはもうひとつの特徴があって、「特色ある教育プログラム(特色GP)」というプロジェクトの中で、大規模教室で理科初習者に対してどのくらい効果的な講義ができるかというパイロット授業でもありました。というわけで、学生数は210名くらいおります。

 今年で3年目のパイロット授業で、昨年度からウェブでパワーポイントを公開していたのですが、昨年は復習のためにウェブにアクセスした学生は、延べ人数でも150名くらいだったような記憶があります。

 それが、今年は今日の試験日までの1ヶ月間に、延べ人数で432名、ファイルアクセス数がなんと4760に達しました。
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 これがそのアクセス状況を示すグラフなのですが、試験直前の今朝までの3日間だけで延べ人数が220名でファイルアクセスが2929でした。これは、ほぼ受講者全員がひととおりすべての講義のパワーポイントファイルを見直したと考えることができる数字だと思います。

 講義の前に様子を見てみると、結構多くの学生がファイルをプリントアウトしたものを持って最後のチェックをしていました。これなら、講義中に資料を配付しなくても良いのかもしれないとさえ感じました。

 学生がこれほど素直にウェブによる復習に反応してくれたのはちょっと意外でしたが、彼らは高校で情報教育を受けてきていることなどを考え合わせると、大学でも講義の携帯を考え直す必要は多分にありそうだということを感じさせれられるエピソードでした。

 答案をざっとみたところでは、簡潔ながらもそこそこに理解していることを感じさせられるものが多く、ちょっとうれしく思っているところです。
Commented by ogaga at 2007-01-18 11:22 x
講義お疲れ様でした。
パワーポイントをアップしてもらえるなら、確かにとても復習しやすくなりますね。特色ある教育を訴えることも意義あると思いますが、今回のstochinaiさんの授業のように、復習しやすい環境の充実という方向で進めたほうが、教員の皆さんにも取り組みやすいかもしれません。

来年ももしパワーポイントを使うのでしたら、お願いですが、講義の前日にアップしていただけないでしょうか。そうしていただけるとプリントアウトして授業中に教員が話したことを書き込めます。

しかし、講義前にパワポを出すと、発問したいことの答えを学生が先に知ってしまい、授業がやりづらくなります。資料にわざと空欄を作っておくと、そういったことを防げますが、今度は準備に手間がかかってしまいますね…

う~む。でもそのほうが学生には便利なのです。ひとつよろしくご検討していただければと思います。
Commented by stochinai at 2007-01-18 17:12
 私が感動したのは、こんなにもたくさんの学生が「復習(ダウンロードだけかも)」をしたという事実です。

 講義の全日にアップロードすることも可能ですが、そうすると講義の楽しさ(驚きとかへえ~とか)が激減してしまい、お互いに損かもしれません。講義というものは、同じ場所で面と向かって時間と空間を共有することにこそ意味があるのだと思います。

 筋立てがすべて公開された映画を、教員というそれほど優秀ではない役者が演じるとしたら、見に行きますか?
Commented by ハニーm at 2007-01-19 00:19 x
はい、場合によっては何度でも …
受講しているH大のe-learning 某講義、
英語でしたら、さぞhearing力が向上したことでしょう。
柔らかな話し方は、本当に心にすぅっと入りますね。
気にいった場面では、ちょっとpauseして (笑)
Commented by ogaga at 2007-01-19 00:28 x
コメントありがとうございました。

他の学生さんはわかりませんが、私個人としては、見に行きます。教室が新しい知を獲得できる場であることに変わりはないからです。昨年CoSTEPを受講させていただきましたが、それは新しい知識や学問的体系、概念を学びたくてのことでした。驚きとかへえ~は、あればうれしいですが、二の次です。

授業前の準備しだいで、驚きとかへえ~がばれないようにすることもできるのでしょうが、教員というそれほど優秀ではない役者全員にうまく準備しろというのは難しい話でしょうね。

現実的に、うまい制度にするには無理なようですね。


それにしても「筋立てがすべて公開された映画」は言いすぎです。パワーポイントの中身が知られたくらいですべてと言うのであれば、前に立っている教員は授業中何を喋っているのですか。パワーポイントだけあればすべてで、教員の喋る内容には無視されてしまう程度の意義しかないのですか。
授業を見て書いているわけではないので、もし私が勘違いしていましたらすみません。
Commented by stochinai at 2007-01-19 01:15
>パワーポイントだけあればすべてで、教員の喋る内容には無視されてしまう程度の意義しかないのですか。
 人によるでしょうね。残念ながら、使っている教科書や準備したパワーポイント以下のプレゼンテーションしかできない人(教員でも学生でも、研究者でもビジネスマンでも)も多いものです。学生によっては、教科書やパワーポイントファイルをもらえるのであれば、先生は引っ込んでいてくれという意見も出てくることがあるくらいです。
Commented by stochinai at 2007-01-19 01:19
 ハニーmさんのような学生ばかりなら、先生も楽jでしょうね。でも、私くらいの大根役者だと、やはりネタは隠しておいて一回使ったら終わりです。また、次の舞台では同じ内容でも新しいネタを用意して臨むのが基本です。
Commented by stochinai at 2007-01-19 01:26
 ちょっとしつこいですが、もうちょっと。
 レベルが上がってくると別ですが、中学理科で習った生物が最後というような大学一年生に教える生物学だと、パワーポイントを見るだけですべてがわかるくらいの内容を教えるのが精一杯です。「筋立てがすべて公開された映画」というのがちょっと言い過ぎだとしても、良くできたパワーポイントはたとえしゃべりがなくても理解できるものだと思います。
Commented by ogaga at 2007-01-19 02:49 x
なるほど。納得しました。

私が大学一年のとき、まだ鼻水たらしながら塾で授業をしていたころですが(今でもまだときどきハマりますが)、先輩から「生徒が家に帰ってノートを見直したとき、一人でも授業の流れをすんなり思い出せるような板書をしろ」と教えられました。

「良くできたパワーポイントはたとえしゃべりがなくても理解できるもの」というのは全く同感です。stochinaiさんの授業に対する姿勢と、学生に対する思いやりが伺えました。
by stochinai | 2007-01-17 21:50 | 大学・高等教育 | Comments(8)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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