2007年 01月 21日
平成納豆事件の結末
先週の日曜日に近所のスーパーにいったところ、納豆の棚が空っぽでした。聞くところによると、それはその1週間前に放送されたあるテレビ番組で、1日に納豆を2パック食べると痩せるという情報が放送されて、日本中でかなりたくさんの人がそれに引きずられて納豆の大量購入に走ったことが原因だということがわかりました。ネットで調べてみると、それは「納豆事件」とも呼ばれているようでした。
ところが、昨夜になってその番組の内容がねつ造されたものだということが発覚したというニュースが流れました。当然ですが、今日のスーパーの納豆の棚には「特売」の表示があるにもかからわず、大量の納豆が残っておりました。朝日新聞でも、今朝の一面トップで「『納豆で減量』番組ねつ造 フジ系関西テレビが謝罪」と大々的に報道されていました。
これが、もし納豆というような商品がからんでいなかったとしたらどうでしょうか。たとえば、朝夕2回10分間ずつ深呼吸をしたら確実に痩せるということが、いわゆる「科学番組」で実験や各種検査の測定値あるいは経験者の体験談などを交えて、本当らしく放送されたら同じような騒ぎになったでしょうか。
たとえ日本中の人が朝夕10分間ずつ深呼吸をしたからといって、他の人に影響が及ぶくらい酸素が減ってしまうというようなことが起こるとは考えにくいですから、人々は冷静に「信じる方がバカなんだよ」と笑い流してくれたような気もします。しかし、納豆という商品が絡んでくると、それがなくなることによって買えないという「被害」を被る人が出てきます。また、これを機に納豆販売で一儲けする人も出てくるかもしれません。それほど大きくないとはいえ、「実害」や「利益」が生じてしまうと、ニュースになりやすい状況が生じたような気もします。
冷静に考えてみると保存食品ではない納豆ですから、何万円分も買った人というのはあまりいなかったはずですので、「信じていたのに裏切られた」という精神的被害を除くと、実際に甚大な被害を受けた人はほとんどいないはずです。そういう意味では、この「事件」は先日の不二家の事件に似ているような気がします。不二家事件でも、この数ヶ月で直接的に不二家製品で健康被害があったという例はほとんど出てきていません。
しかし、人々は怒っているようです。あるいは、人々が怒っているとマスコミが大きく報じています。「これは記事になる」とマスコミが判断して報道しているからでしょう。この姿勢は、「納豆ダイエットが視聴率を稼げる」と考えたテレビ局とどのくらいの違いがあるのでしょうか。
そろそろ我々は、出発点を考え直すところにきているような気がします。間違っている出発点とは「お客様は神様です」という発想です。
視聴率とか、ものの売れ行きとか、政治でいうと内閣の支持率というものを極端に大きく気にする態度が「お客様は神様」主義だと思うのですが、それは情報を発信したり、ものを売る、あるいは政治をする側の主体性あるいは主張の放棄だと思うのです。
市場とか世論とかいうものが、テレビ番組や新聞の「ウソ」や「誇張」によっても、こんなに簡単に動くことが証明されている以上、もはや「お客様は神様」ですという市場主義や自由競争主義が虚構であることは証明されたと言えるはずです。
我々日本人が愚かな国民であることを自覚した上で、今後の日本の進む道を考えて行かなくてはならないと強く感じています。
ところが、昨夜になってその番組の内容がねつ造されたものだということが発覚したというニュースが流れました。当然ですが、今日のスーパーの納豆の棚には「特売」の表示があるにもかからわず、大量の納豆が残っておりました。朝日新聞でも、今朝の一面トップで「『納豆で減量』番組ねつ造 フジ系関西テレビが謝罪」と大々的に報道されていました。
これが、もし納豆というような商品がからんでいなかったとしたらどうでしょうか。たとえば、朝夕2回10分間ずつ深呼吸をしたら確実に痩せるということが、いわゆる「科学番組」で実験や各種検査の測定値あるいは経験者の体験談などを交えて、本当らしく放送されたら同じような騒ぎになったでしょうか。
たとえ日本中の人が朝夕10分間ずつ深呼吸をしたからといって、他の人に影響が及ぶくらい酸素が減ってしまうというようなことが起こるとは考えにくいですから、人々は冷静に「信じる方がバカなんだよ」と笑い流してくれたような気もします。しかし、納豆という商品が絡んでくると、それがなくなることによって買えないという「被害」を被る人が出てきます。また、これを機に納豆販売で一儲けする人も出てくるかもしれません。それほど大きくないとはいえ、「実害」や「利益」が生じてしまうと、ニュースになりやすい状況が生じたような気もします。
冷静に考えてみると保存食品ではない納豆ですから、何万円分も買った人というのはあまりいなかったはずですので、「信じていたのに裏切られた」という精神的被害を除くと、実際に甚大な被害を受けた人はほとんどいないはずです。そういう意味では、この「事件」は先日の不二家の事件に似ているような気がします。不二家事件でも、この数ヶ月で直接的に不二家製品で健康被害があったという例はほとんど出てきていません。
しかし、人々は怒っているようです。あるいは、人々が怒っているとマスコミが大きく報じています。「これは記事になる」とマスコミが判断して報道しているからでしょう。この姿勢は、「納豆ダイエットが視聴率を稼げる」と考えたテレビ局とどのくらいの違いがあるのでしょうか。
そろそろ我々は、出発点を考え直すところにきているような気がします。間違っている出発点とは「お客様は神様です」という発想です。
視聴率とか、ものの売れ行きとか、政治でいうと内閣の支持率というものを極端に大きく気にする態度が「お客様は神様」主義だと思うのですが、それは情報を発信したり、ものを売る、あるいは政治をする側の主体性あるいは主張の放棄だと思うのです。
市場とか世論とかいうものが、テレビ番組や新聞の「ウソ」や「誇張」によっても、こんなに簡単に動くことが証明されている以上、もはや「お客様は神様」ですという市場主義や自由競争主義が虚構であることは証明されたと言えるはずです。
我々日本人が愚かな国民であることを自覚した上で、今後の日本の進む道を考えて行かなくてはならないと強く感じています。
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mk@wisdom96
at 2007-01-22 01:16
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URLをごらんください。インサイダーですね。
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mk@wisdom96
at 2007-01-22 01:19
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株式市場にも影響が出たのです。URLが長いので本文へ。
http://today.reuters.co.jp/investing/FinanceArticle.aspx?type=hotStocksNews&storyID=12069%2015-Jan-2007%20RTRS
http://today.reuters.co.jp/investing/FinanceArticle.aspx?type=hotStocksNews&storyID=12069%2015-Jan-2007%20RTRS
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ぜのぱす
at 2007-01-22 01:33
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ぢゅにあ
at 2007-01-22 04:41
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Food Faddism(フードファディズム)という言葉があるのですね。
知りませんでした。
知りませんでした。
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AC
at 2007-01-22 10:12
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"「お客様は神様です」主義"という言葉に違和感を感じました。ここでいう「お客様」は視聴者ですよね?
視聴率のために客である視聴者をあることないことでっち上げて煽っているのですから、「視聴率は神様です」主義とかじゃないのかなと思いますがどうでしょうか?
視聴率のために客である視聴者をあることないことでっち上げて煽っているのですから、「視聴率は神様です」主義とかじゃないのかなと思いますがどうでしょうか?
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mk@wisdom96
at 2007-01-22 11:25
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三波春夫さんが言った「お客様は神様です」のもともとの意味は違っていたようですね。
http://members.jcom.home.ne.jp/u33/i%20think%20020301.htm
http://members.jcom.home.ne.jp/u33/i%20think%20020301.htm
ついでに言うと、CMだって「有名人が出ているから」でコロッとだまされますね。
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stochinai at 2007-01-23 22:14
「平成の納豆事件」は「平成の納豆あるある大事件」になってしまいましたね。
ある意味では、今の日本のほとんどすべての問題点がここに凝縮されているとも言えます。もちろん、私の職業に関係の深い、論文ねつ造や科学コミュニケーション、科学者の責任もすべて含まれています。
企業の責任、マスコミの責任、そして踊る国民、この問題を出発点にどこまででも議論は発展できそうです。
結局、「どうする自分」が結論のような、、、、。
ある意味では、今の日本のほとんどすべての問題点がここに凝縮されているとも言えます。もちろん、私の職業に関係の深い、論文ねつ造や科学コミュニケーション、科学者の責任もすべて含まれています。
企業の責任、マスコミの責任、そして踊る国民、この問題を出発点にどこまででも議論は発展できそうです。
結局、「どうする自分」が結論のような、、、、。
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stochinai at 2007-01-23 22:19
三波春夫さんという巨人の存在を含め、「お客様は神様です」という言葉を安易に使ったのは誤解を招く原因になると反省しております。しかし、その一方で先ほどやっていたNHKのクローズアップ現代で某私大関係者が「学生はお客さんだ」というようなことを言っていたのにひっかかってしまいました。学生を客に見立てた教育って、教育の名に値するのでしょうか、、、、。
by stochinai
| 2007-01-21 23:43
| 科学一般
|
Comments(9)