2007年 02月 27日
タミフルを飲むか飲まないか 【追記:厚労省方針変更】
タミフルを飲んだ直後に異常な行動を起こして、比較的若い青少年がビルから落下したり、交通事故にあったりするケースがかなりの数、報告されています。
もちろん、タミフルを飲んだ後に異常な行動が多発しているという「現象」があるからといって、タミフルが異常行動の「原因」であるということにはなりません。それは「科学的に正しい判断」だと思います。柳沢厚生労働大臣は、タミフルと異常行動の因果関係が明らかかどうかがはっきりしていないので、国としては注意を喚起したりしない方針だと発表しているようです。
しかし、一方でタミフルが安全であることが証明されたわけでも、もちろんありません。現時点で「安全である」と判断することもできないというのが、「科学的な態度」だと思います。こういう場合はどうしたら良いのでしょうか。
そもそも、我々はこうした安全性問題に関して、あまりにも政府に頼りすぎているのではないかと感じることがあります。
我が国では、水俣病やイタイイタイ病、さらには数多くの薬害事件が起こった歴史があります。もちろん、科学者でもない普通の市民が、活きの良さそうな魚をみてそれに水銀がどのくらい含まれているかなど、わかるはずがありません。同じように農作物や飲料水にカドミウムが含まれているかどうかを調べることもできるわけがありません。さらには、水銀やカドミウムを摂取したら、どのようなことになるかという知識もありません(でした)。
そうした場合に、国民の負託を受けて税金を使って調査・研究をやるのは、政府の仕事だと思います。薬害エイズ事件や、医原病肝炎事件なども、同じように政府主導で調査・研究がされていながらも対応が遅れて被害が大きくなったという歴史があります。
政府が大手の製薬会社寄りだとか、国民のことを考えていないだとか言うことは簡単ですが、たとえ誰かがそう言ったとしても、厚生労働大臣としての柳沢さんの発言は、政府としてはタミフルの使用に対して禁止はもちろん、注意もしないという状況は変わりません。つまり、今はタミフルを日本中の病因で使い続けることがまったく合法的です。
タミフルの場合は、不治の病の治療薬ではありません。インフルエンザの治療薬です。インフルエンザで死亡する例がないわけではありませんが、ひょっとしたら危険性があるかもしれないタミフルを服用してまで対処するほどのことがあるでしょうか。
ウイルスに効くクスリがほとんどない状況のなか、一時は魔法のクスリとまでもてはやされたタミフル(リレンザというのもあったはずですが、どうなったのでしょう)も、実はそれほど効かないケースもあるし、エジプトではタミフルに耐性を持ったインフルエンザが発見されたというニュースもありました。
ある意味で、これだけタミフルに関する情報が開示されているのですから、患者として病院に行っても「タミフルは使わないでください」と言うことはできるはずです。
さらには、たとえインフルエンザにかかったとしても、安静と栄養補給をしっかりすれば、ヒトの免疫の力で治ることの方が多いはずです。よほどの高熱や、心配な症状が出たのでない限り、自分の快復力は十分に機能するはずです。
病気になっても、ゆっくりと学校や会社を休めない。また、子どもが病気になっても、父親も母親も休んで看病することができないというような状況こそ政府が率先して対処すべきことではないでしょうか。
そういう環境が整っていれば、自ずと子どもを生んで育てようという人が増えるような気がします。
柳沢さん、失地回復のチャンスですよ。
【追記】
28日の夜9時のNHKニュースによれば、厚生労働省はタミフルの使用に際して注意することと、注意の呼びかけを製薬会社と医師会に求めていくと言ったような気がしたのですが、ネットを見直してみるとインフルエンザにかかった場合は「タミフル処方の有無にかかわらず」異常行動の恐れがあると注意をするようにとの呼びかけだそうです。おまけに「少なくとも2日間、保護者らは小児、未成年者が1人にならないように配慮する」などという、共働きが普通の今の家庭環境ではかなり難しいことを要求するという無責任な呼び掛けをしているようです。厚労省は、何を恐れているのでしょうね。
もちろん、タミフルを飲んだ後に異常な行動が多発しているという「現象」があるからといって、タミフルが異常行動の「原因」であるということにはなりません。それは「科学的に正しい判断」だと思います。柳沢厚生労働大臣は、タミフルと異常行動の因果関係が明らかかどうかがはっきりしていないので、国としては注意を喚起したりしない方針だと発表しているようです。
しかし、一方でタミフルが安全であることが証明されたわけでも、もちろんありません。現時点で「安全である」と判断することもできないというのが、「科学的な態度」だと思います。こういう場合はどうしたら良いのでしょうか。
そもそも、我々はこうした安全性問題に関して、あまりにも政府に頼りすぎているのではないかと感じることがあります。
我が国では、水俣病やイタイイタイ病、さらには数多くの薬害事件が起こった歴史があります。もちろん、科学者でもない普通の市民が、活きの良さそうな魚をみてそれに水銀がどのくらい含まれているかなど、わかるはずがありません。同じように農作物や飲料水にカドミウムが含まれているかどうかを調べることもできるわけがありません。さらには、水銀やカドミウムを摂取したら、どのようなことになるかという知識もありません(でした)。
そうした場合に、国民の負託を受けて税金を使って調査・研究をやるのは、政府の仕事だと思います。薬害エイズ事件や、医原病肝炎事件なども、同じように政府主導で調査・研究がされていながらも対応が遅れて被害が大きくなったという歴史があります。
政府が大手の製薬会社寄りだとか、国民のことを考えていないだとか言うことは簡単ですが、たとえ誰かがそう言ったとしても、厚生労働大臣としての柳沢さんの発言は、政府としてはタミフルの使用に対して禁止はもちろん、注意もしないという状況は変わりません。つまり、今はタミフルを日本中の病因で使い続けることがまったく合法的です。
タミフルの場合は、不治の病の治療薬ではありません。インフルエンザの治療薬です。インフルエンザで死亡する例がないわけではありませんが、ひょっとしたら危険性があるかもしれないタミフルを服用してまで対処するほどのことがあるでしょうか。
ウイルスに効くクスリがほとんどない状況のなか、一時は魔法のクスリとまでもてはやされたタミフル(リレンザというのもあったはずですが、どうなったのでしょう)も、実はそれほど効かないケースもあるし、エジプトではタミフルに耐性を持ったインフルエンザが発見されたというニュースもありました。
ある意味で、これだけタミフルに関する情報が開示されているのですから、患者として病院に行っても「タミフルは使わないでください」と言うことはできるはずです。
さらには、たとえインフルエンザにかかったとしても、安静と栄養補給をしっかりすれば、ヒトの免疫の力で治ることの方が多いはずです。よほどの高熱や、心配な症状が出たのでない限り、自分の快復力は十分に機能するはずです。
病気になっても、ゆっくりと学校や会社を休めない。また、子どもが病気になっても、父親も母親も休んで看病することができないというような状況こそ政府が率先して対処すべきことではないでしょうか。
そういう環境が整っていれば、自ずと子どもを生んで育てようという人が増えるような気がします。
柳沢さん、失地回復のチャンスですよ。
【追記】
28日の夜9時のNHKニュースによれば、厚生労働省はタミフルの使用に際して注意することと、注意の呼びかけを製薬会社と医師会に求めていくと言ったような気がしたのですが、ネットを見直してみるとインフルエンザにかかった場合は「タミフル処方の有無にかかわらず」異常行動の恐れがあると注意をするようにとの呼びかけだそうです。おまけに「少なくとも2日間、保護者らは小児、未成年者が1人にならないように配慮する」などという、共働きが普通の今の家庭環境ではかなり難しいことを要求するという無責任な呼び掛けをしているようです。厚労省は、何を恐れているのでしょうね。
リレンザという薬もあるのですがね。
本筋と関係ないですが、イタイイタイ病はまだ話が終わっていません。わたしも最近地元の報道で知りました。カルテは全部残してあるそうで、患者さんは本当に苦しそうでした。
本筋と関係ないですが、イタイイタイ病はまだ話が終わっていません。わたしも最近地元の報道で知りました。カルテは全部残してあるそうで、患者さんは本当に苦しそうでした。
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読者会仲間のお医者さんからのメールに「世界のタミフルの7割を日本が消費しているというのは何とも異常です。」とありました。
世界で最初にタミフル耐性インフルエンザが蔓延するのは、日本ですね!
世界で最初にタミフル耐性インフルエンザが蔓延するのは、日本ですね!
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kuma
at 2007-02-28 02:31
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日本では世界のタミフルの8割を使っています。タミフルが承認された際の臨床試験によるとタミフルの効果は、有熱期間を一日短くするだけです。すでに日本でもタミフル耐性ウイルスが増えていて、すでに耐性ウイルスによる新たな感染例が報告されています。ほとんど自然に治る病気の症状を緩和するだけの薬に特効薬という間違った名前をつけたマスメディアの不勉強さが現在の混乱につながっています。
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inoue0 at 2007-02-28 04:15
10年前でも、抗ウイルス薬なしで、ほとんどのインフルエンザは治ってました。抗HIV薬開発競争のスピンアウトで、多くの抗ウイルス薬ができましたが、抗肝炎ウイルス薬はともかく、抗インフルエンザ薬は、合併症を減らすわけでなし、死亡率を減らすわけでもない、対症療法薬でしかないんです。
インフルエンザの合併症や死亡者を減らしたいなら、オセルタミビルを量産するより、ワクチンを無料化する方がましです。確実に効果がある。今のように、呼吸器疾患患者や老人以外は実費を取るようなシステムでは、実費3000~4000円払って毎年接種する人は少ない。
タミフルを保険適用外にしてでも、浮いた金でワクチン接種に保険適用をすべきだと思う。
インフルエンザの合併症や死亡者を減らしたいなら、オセルタミビルを量産するより、ワクチンを無料化する方がましです。確実に効果がある。今のように、呼吸器疾患患者や老人以外は実費を取るようなシステムでは、実費3000~4000円払って毎年接種する人は少ない。
タミフルを保険適用外にしてでも、浮いた金でワクチン接種に保険適用をすべきだと思う。
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M姫
at 2007-02-28 11:34
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私の知っている人獣共通感染症の研究者はタミフルよりもリレンザを進めていました。リレンザは吸入剤なので、飲み薬のタミフルよりも直接喉に届き、取り入れる量が少なくてすむので良いと言っていました。でも、リレンザってタミフルに比べて知名度が低いですよね。なぜなのでしょう?どうして国はそんなにタミフルを使わせたがるのでしょうね。なんか怪しい。と思ってしまう私って汚れているでしょうか。
ヒトとウイルスのつきあい方という側面もあるので難しいように思っています。例えば,
・個の利益(特に低年齢者の発熱やインフルエンザ脳症)と集団の利益(スペイン風邪のようなパンデミックの回避;SARSは記憶に新しい)
・ヒトの利益を優先すれば,トリインフルエンザあるいは他の種を経由しての感染ルートの解明を優先して,家禽へのワクチンの予防的投与を認めず感染した時点で一斉処分すればよいという考え方
などいろいろな要因があります。それに加えてstochinaiさんご指摘の子育て環境の貧しさなどもあって,どう行動すべきなのか広範な議論の必要性を感じるばかりです。
※鳥インフルエンザ&新型インフルエンザ情報(インフルエンザについて独学していること)
http://www.ecosci.jp/chem10/weekmol049.html
・個の利益(特に低年齢者の発熱やインフルエンザ脳症)と集団の利益(スペイン風邪のようなパンデミックの回避;SARSは記憶に新しい)
・ヒトの利益を優先すれば,トリインフルエンザあるいは他の種を経由しての感染ルートの解明を優先して,家禽へのワクチンの予防的投与を認めず感染した時点で一斉処分すればよいという考え方
などいろいろな要因があります。それに加えてstochinaiさんご指摘の子育て環境の貧しさなどもあって,どう行動すべきなのか広範な議論の必要性を感じるばかりです。
※鳥インフルエンザ&新型インフルエンザ情報(インフルエンザについて独学していること)
http://www.ecosci.jp/chem10/weekmol049.html
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stochinai at 2007-02-28 21:59
28日になって、厚労省がタミフルを飲まなくてもインフルエンザで異常行動が起こることがあるので注意するようにとの呼びかけを始めたそうですが、この国の保健衛生を守る官庁は、いったい何を考えているのでしょうか。
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Namba
at 2007-02-28 22:57
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実は、うちの娘も、タミフルを飲んだ後、異常行動を起こしたことがあります。
突然大きな声で、何か話し始めたと思ったら、二段ベッドの上段から、飛び降りようとしました。普段、遊びでもそういうことはしない、臆病な子なので、びっくりして、その後は、薬は止めました。近所の小児科では、タミフルについて、関連が明らかではないが重大な副作用があるということが書かれたプリントをくれたうえで、投薬を希望する人には投薬していました。
突然大きな声で、何か話し始めたと思ったら、二段ベッドの上段から、飛び降りようとしました。普段、遊びでもそういうことはしない、臆病な子なので、びっくりして、その後は、薬は止めました。近所の小児科では、タミフルについて、関連が明らかではないが重大な副作用があるということが書かれたプリントをくれたうえで、投薬を希望する人には投薬していました。
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rk
at 2007-03-01 13:07
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タミフルを初期に飲むと劇的に早く治るのを何度も経験しています。いったん子供がインフルエンザと診断されると、お医者さんに捺印された「治癒証明書」がないと、保育園や学校に行けません。つまり、今の制度では普通の風邪と同列には扱ってもらえません。また複数の子供がいる場合に症状の重い時期が長く続きしかもお互い移されると、それこそ一ヶ月以上仕事を休まないといけなくなります。なので、働く母としては、一日も早く治ってくれ〜というのが切実な本音です。
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kuma
at 2007-03-01 13:58
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タミフル服用によって、発熱期間が平均1日程度短くなるだけで、劇的に効くというものではないことは、製薬会社自身が提出した臨床試験データであきらかです。劇的に治ったのは免疫力のおかげかもしれません。タミフル服用後の異常行動はインフルエンザ脳症ではありません。症状が全く違います。「インフルエンザ脳症の発症前に異常行動があることが多い」というとても非科学的調査のデータが過去にあるだけです。
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kuma
at 2007-03-01 14:04
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もう一つ、今回厚生労働省がとった対策「しばらく1人にしないで様子を見る」というのは、アメリカのFDAが去年11月に行った対策と同じ種類のもので、被害者の会の人たちが、なぜアメリカでやっていることを日本でもしないのか、と聞いたのに、厚生労働省はその必要がないといっていたものです。アメリカでは全医療機関あてにメーカーからレターを出させた上、患者向けの説明文書にも同じ内容(服用後しばらく様子を観察しておく必要があるということ)を盛り込ませました。日本は通知しただけで、おそらく効果は十分ではありません。もし厚生労働省の担当者が、FDAが対策を打ち出した直後に日本でも同じ対策をとっていれば、愛知と宮城の2人の子どもは死なずにすんだかも知れません。薬害ではなく人害だちう被害者の会の人の意見は本当だと思います。
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stochinai at 2007-03-02 19:37
タミフルの問題は、日本の労働環境の問題にも大きくかかわっているような気がします。厚労省に限らず、日本の官庁が何もせず、責任も取らずという体制はなかなか改まりそうもありませんね。もはや、彼らを信じないということが長生きをするコツではないかとさえ思えます。
子供が熱に浮かされておかしなことをするというのは、ろくに薬の無かった戦前であれば珍しくなかったのですが。
また、子供の異常言動にはアセトアミノフェンが関与しているという報告もあります。
ま、子供が熱を出したのなら1週間くらい付き添ってやるの覚悟を持つべきですね。
また、子供の異常言動にはアセトアミノフェンが関与しているという報告もあります。
ま、子供が熱を出したのなら1週間くらい付き添ってやるの覚悟を持つべきですね。
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stochinai at 2007-03-12 21:52
親が付き添ってやれるだけの、経済的支えがなくなってきていることも、「タミフル事件」の教訓のひとつのような気がします。
by stochinai
| 2007-02-27 20:13
| 科学一般
|
Comments(15)