5号館を出て

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研究者の鈍感力

 タミフルと異常行動の因果関係を調べている厚生労働省研究班の主任研究者や研究班員が、タミフルの輸入販売元の中外製薬から奨学寄付金(研究費)を受けていたという報道がありました。

 記事によると、どちらの先生も「毎年、あちこちの(製薬会社など)から奨学寄付金を受けていて、大学も知っている。このくらいの研究費をもらったからと言って、公正中立な研究をやっているので問題はない」というようなことをおっしゃっているようです。

 自分の良心に従って研究をしているので、たとえ1000万円くらいの研究費をもらっていたとしても、研究費を出している会社の製品に問題があるという研究結果が出たら、そのことについては公正中立に発表するといういうことをおっしゃりたいのだと思います。

 いずれの先生も毎年あちこちの会社から奨学寄付金を受けているということなので、数千万円か数億円の研究費をもらっているようです。うらやましいですね。

 私企業から研究費をもらうこと自体は罪ではないと思います。ただし、そのことは大学だけではなく広く世間に公開し、タミフルによる異常行動はないのだという研究結果を発表する時には、自分はタミフルの輸入販売元から、1000万円の奨学寄付金を受けているということも同時に発表しなければならないというような「社会常識」も持っていて欲しかったと思います。

 厚生労働省も、クスリの安全性研究を依頼する時には、件のクスリを製造・輸入・販売している会社から研究費をもらっているような先生にはお願いしないという、ごくごく常識的な判断が働かないものなのでしょうか。

 「私は公明正大にやっているから、どんなに怪しく見えても大丈夫です」というような弁明がまかり通るのは、国としてかなりやばい状態だと思います。

 総理大臣、大臣、国会議員、知事、地方議員を初めとして、大学の先生、病院の先生、その他公共の福祉のために働くことが期待されている人が「鈍感」でいいのだ、などという暴言がまかり通っていることを恥ずかしいと思わないのだとしたら、我々国民も終わっているのだと思います。

 一億国民総動員で鈍感力を発揮して、世界の笑いものになってもいいのだ、というような国に住んでいると落ち着かない気分になる私は、まだまだ日本人として鈍感力の養成が足りないということなのでしょうか。

 どなたか、よろしくご指導をお願いできませんか。

【追記】
 こちらに、すでに良い記事が書かれておりました。また、こちらも是非お読み下さい。
Commented by black at 2007-03-15 06:53 x
そういう可能性のある研究者は辞退すべきですね。そう宣言すれば良いというのは形式的すぎます。
Commented by stochinai at 2007-03-15 21:11
 今回の厚労省の発表の際に、研究班の班長と班員がタミフルの輸入販売元からも研究費を受け取っているということを宣言した上で発表できるほど自分に自信があるならばスゴイという「嫌み」も含めて書いたつもりです。

 調査対象から金を受け取るということがどんなに非倫理的なことであるか、日本の科学者の多くはこのあたりの感覚はかなり鈍いと感じます。学生のころから、しっかりと倫理教育をたたきこんでからでないと、医者や科学者にすべきではないですね。
Commented by black at 2007-03-15 21:58 x
はい、嫌みというか皮肉がひしひしとわかります。でもこの辺のことは、国立大の医学部ではなんだか色々と研修会をやってはいるようですが、どうも徹底されていないというか、形式的に流れているようですし、逆に、宣言さえすればいいのだと免罪符のような流れもあるようで、困ったもんだと思います。トラックバックありがとうございます。
Commented by t at 2007-03-16 12:57 x
日本がお手本にしている、アメリカの事例(タバコ、牛肉、薬害、劣化ウランetc.)を見る限り、日本だけの恥とは思えませんけどねえ。そういった、インサイダーの調査調書なり論文を引用して、アメリカで安全だと確定されたから・・・という安全宣言を鵜呑みにしている声明も、時々目にします。そういう論文を作る側のリテラシーもですが、そこに調査を依頼する側、論文を読む側のリテラシーも必要ではありませんか?
医学・生物系だと、阻害剤や患者の生存曲線を示した論文で、効果を過剰に示している様に見えるものや、母集団から不都合な例を除いているのでは?と思わせる論文も目にします。
Commented by black at 2007-03-16 22:25 x
 昔、ある論文の査読したんですが、バイアスを除いて詳しく結果を分析すると著者の結論とまったく反対の結果がでる場合がありました。タミフルの分析もまったく反対の解釈が可能のようです。そうなるとconflict of interestは大きく影響したと疑われても仕方ないですが。
Commented by stochinai at 2007-03-18 19:39
 black さんや t さんの書かれていることはほんとうにその通りだと思います。日本だけではなくというのもその通りでしょうし、日本がその問題を解決できていないのも事実です。ただ、彼の国と日本の大きな違いが、不正を防ぐための基本姿勢なのかもしれません。神のいる宗教が大きな力を持っている国では、「人間というものは罪を犯す不完全な存在である」という考えが違和感なく受け入れられやすいので、不正に対する法律や規制が当然のごとくどんどん作られます。日本では、性善説から始まることが多いので不正が起こってから対症療法が行われるので、先手を打った対策がとれずいつまでたってもいくらでも新しい不正が生まれ続けるのでしょうか。
by stochinai | 2007-03-14 21:22 | 科学一般 | Comments(6)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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