5号館を出て

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待つ力

 またまた山田ズーニーさんの「大人の進路教室。」を聞いて感動、というよりは共感してしまいました。

 最近3月8日からは『第五章 「働けない日々」からの脱出』ということで、高校1年のときシックハウス症候群になって、受験にも乗りそこね、就職の機会も逃したという、末吉さんという方がゲストでした。彼は150社不合格という壮絶な就職活動の末、やっと就職できたらしいのですが、やがてその仕事も辞めざるを得なくなるという踏んだり蹴ったりの経験を積んだ方です。

 これまでは3回、彼の話を聞くというスタイルだったのですが、昨日29日は「Lesson20 ズーニーのまとめ」ということで、山田ズーニーさんの一人語りでした。前に書いた「やりたいことが見つからない」の時もそうでしたが、彼女はひとりで語っている時が断然良いのです。

 昨日の話は、まったく同感というところが満載の話でした。自分の過去を語っているのですが、気に入ったところを抜き書きさせてもらいます。

 ポッドキャスティング Lesson20 ズーニーのまとめ
あれが
アイデンティティを失うという感覚だったのだと思う。
天職とか、大好きな人とか、
自分の真ん中にあるものを失うという感覚。

でも私は、そこからのがれるために、
スケジュールの空白をうめる、ということをしなかった。

正直いうと、やろうとしてもできなかった。

 自分がダメだと思った時に、ともかく身体を動かし続けて落ち込むことを避けることができる人がいますが、ズーニーさんはそれができないのだそうです。私も、「とりあえず体を動かす」というのができない質です。体を動かし続けていると、どうなるかというと。
それはそれでスケジュールの空白は埋まり、
絶えず何かやってれば、
寂しさは感じなくてすむかもしれない。
でも何かで空白を埋めるということは、
そこにはもう、他の何かは入れられない、ということだ。
 ということで、そんな生活をしていたら新しいことができなくなるのではないか、というのです。まさしく、そうだと思います。
1年のうちでも何回もない、「これだ!」
というものに出逢ったときに、

むやみな動きで消耗しきってくたくただったら?
スケジュールに余白がなかったら?
どうやってそこに飛び込んでいけるのだろうか?
 
 何もしないことの力、それを「待つ力」と呼ぶのかも知れません。何もしないということは、充電の期間でもあるのです。
だから、心の声にしたがえば、
スケジュールに空白ができ、
空白の時間は、じっとパワーを溜め込んだ。

その状態は、見方を変えれば、
いつなんどき「これだ!」というものに遭遇しても、
「すぐに」、「全身全霊で」、飛び込める状態でもある。

 そうなのです。こちらの準備がなければ、チャンスに出会った時にそれをつかむことができないのです。素晴らしい結語もありました。

  「ものはひらいた手でしかつかめない」

 何かを探している時には、何もしないこと。このアドバイスは、とても大切なのかもしれないと思います。

【追記】
 もう一回聞いてみると、山田ズーニーさんは昔書いたエッセイを朗読しているようです。探してみたら、ここに全文がありました。1年ちょっと前に書かれたものですね。

   おとなの小論文教室。感じる・考える・伝わる!
      Lesson 280  待つ力
Commented by Tea at 2007-03-31 23:10 x
今回、ズーニーさんを紹介してもらって、もやもやしていたものが少しすっとしました。待つことの大切さを、今、皆が忘れかけているし、社会も結果が早く出ることばかり求めています。時間をかけて丁寧に結果を待つようにしたら、急いで出した結論が実は間違っていたことが多い世の中が変わっていくのにと思います。
Commented by stochinai at 2007-04-01 23:16
 ズーニーさんの言葉は、特に目新しいことを言っていなくても、忘れかけていた大切なことを思い出させてくれる「力」があるように思えます。特に彼女の場合は、文字を読むより声で聞くことで力づけられる気がします。一人で考え続けていると、ついつい大切なことを忘れてしまったり、否定してしまったりすることも多いものですが、そういうことを思い出させてくれる古くからの友人のようで、勝手に大切にしています。
by stochinai | 2007-03-30 21:26 | つぶやき | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai