2007年 04月 03日
デジャ・ヴ: シンカのかたち
CoSTEPの1期2期の受講生が中心になって、ついに本が出版されました。
私の専門や趣味に近い領域が扱われている本ですし、つい先週までうちの研究室に在籍していたK本君や、まだ在籍しているE藤君も中心メンバーとして作り上げたものなので、当然私も手伝っているのではないかと思われる方もいらっしゃるでしょうが、私はほぼノータッチでした。
隠す必要もないので書いておきますが、原稿の段階で見せていただいたものがひとつだけあって、それは「生き物の形をつくるしくみ」の解説部分です。とは言っても、通常の添削のように大幅に手を入れたわけではなく、事実誤認などなないかという点をチェックしただけです。ただ、彼らが長い時間をかけてゴソゴソと本作りをしていたことは知っていましたので、どんなものができあがるか楽しみにしており、本を手にした時にはまさに書店で初めて出会った時と同じような感慨を覚えました。
とりあえず、一気に流し読みしてみたのですが、第一番目に感じた印象が「デジャ・ヴ」でした。既視感と言っても、これがどこにでもありそうな本で、その内容もすでに他の本で取り上げられたものであるというデジャ・ヴではなく、私がここ数年間講義のネタとしていろいろなところで調べ、集めたものがこの中に収められているという意味での既視感だったと思います。
ネタとして集めたとしても、必ずしも講義では使わなかったものもあるので、それがすべてこの中にあるとしたら、誰かが夜中にこっそりと私のオフィスに忍び込んでネタを持ち去ったのかというと、それも違うのです。なぜかというと、そのネタは私の脳の中に雑然と押し込まれているものがほとんどで、このように整理された形ではこの世に存在しないと思っていたものに出会ってしまったという、恐ろしいほどのデジャ・ヴ体験と言えるかもしれません。
生物学の講義で学生を引き込むための強いネタが二つあります(それをバラして、いいのか自分^^;)。ひとつは、学生自身がヒトという生物であるということを気付かせること、病気や性や生殖・老化などに有力なネタが潜んでいます。そして、もうひとつが本書で扱われているような「変な生き物」です。特に、後者に関しては幼稚園児を相手にした時にも使えますので、ある意味で究極の生物学ネタと言えるかもしれません。
講義の導入に使うだけでしたら、多少ウソや誇張が混じっていてもかまわないのかもしれませんが、この本が一味違うのはどの項目もしっかりとした調査や考証、場合によっては研究者への聞き取りまでもを行いながら書き上げられているということで、前振りのネタとして使えるだけではなく、この本だけでも生物の多様性、進化、発生、スケーリング(生物の設計論)、寄生・共生、極限生理学、生殖、社会といった、そのまま生物学講義の本論になる内容が盛り込まれているところです。
生物学者や生物の教員から見ると、この本の中にはあふれるほどの情報が詰め込まれていることがわかるので、ついついいろいろ考えたり、この話の元データはどこにあるだろうかなどと考えてしまって、ついつい読むのが遅くなってしまう本だと思いますが、講義のネタ本には最適の一冊です。
逆に、そこまで考えずに軽く読もうとするならば、愉快な挿し絵もたくさんありますので中学生でも十分に読めるものになっています。そこで、中学生あるいは進んだ小学生のお子さんにも是非1冊。
また、高校生から大人のみなさんで「生き物の不思議」大好きという方には、新しく発見された不思議な生き物の情報が満載ですし、すでに有名な不思議生物に関しても新しく調べたことや新しい見方が提案されているこの本は必読の1冊だと思います。
値段もアマゾンで買うと配送料無料になるギリギリの良い値段付けがされています。
私も自宅用に、1冊買って(トイレ図書館で)1日1項目を読もうと思います。
【関連記事】
感動です
木を見ていたら森が見えてきた
本屋でぼくの本を見た
CoSTEPersの業績2件
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隠す必要もないので書いておきますが、原稿の段階で見せていただいたものがひとつだけあって、それは「生き物の形をつくるしくみ」の解説部分です。とは言っても、通常の添削のように大幅に手を入れたわけではなく、事実誤認などなないかという点をチェックしただけです。ただ、彼らが長い時間をかけてゴソゴソと本作りをしていたことは知っていましたので、どんなものができあがるか楽しみにしており、本を手にした時にはまさに書店で初めて出会った時と同じような感慨を覚えました。
とりあえず、一気に流し読みしてみたのですが、第一番目に感じた印象が「デジャ・ヴ」でした。既視感と言っても、これがどこにでもありそうな本で、その内容もすでに他の本で取り上げられたものであるというデジャ・ヴではなく、私がここ数年間講義のネタとしていろいろなところで調べ、集めたものがこの中に収められているという意味での既視感だったと思います。
ネタとして集めたとしても、必ずしも講義では使わなかったものもあるので、それがすべてこの中にあるとしたら、誰かが夜中にこっそりと私のオフィスに忍び込んでネタを持ち去ったのかというと、それも違うのです。なぜかというと、そのネタは私の脳の中に雑然と押し込まれているものがほとんどで、このように整理された形ではこの世に存在しないと思っていたものに出会ってしまったという、恐ろしいほどのデジャ・ヴ体験と言えるかもしれません。
生物学の講義で学生を引き込むための強いネタが二つあります(それをバラして、いいのか自分^^;)。ひとつは、学生自身がヒトという生物であるということを気付かせること、病気や性や生殖・老化などに有力なネタが潜んでいます。そして、もうひとつが本書で扱われているような「変な生き物」です。特に、後者に関しては幼稚園児を相手にした時にも使えますので、ある意味で究極の生物学ネタと言えるかもしれません。
講義の導入に使うだけでしたら、多少ウソや誇張が混じっていてもかまわないのかもしれませんが、この本が一味違うのはどの項目もしっかりとした調査や考証、場合によっては研究者への聞き取りまでもを行いながら書き上げられているということで、前振りのネタとして使えるだけではなく、この本だけでも生物の多様性、進化、発生、スケーリング(生物の設計論)、寄生・共生、極限生理学、生殖、社会といった、そのまま生物学講義の本論になる内容が盛り込まれているところです。
生物学者や生物の教員から見ると、この本の中にはあふれるほどの情報が詰め込まれていることがわかるので、ついついいろいろ考えたり、この話の元データはどこにあるだろうかなどと考えてしまって、ついつい読むのが遅くなってしまう本だと思いますが、講義のネタ本には最適の一冊です。
逆に、そこまで考えずに軽く読もうとするならば、愉快な挿し絵もたくさんありますので中学生でも十分に読めるものになっています。そこで、中学生あるいは進んだ小学生のお子さんにも是非1冊。
また、高校生から大人のみなさんで「生き物の不思議」大好きという方には、新しく発見された不思議な生き物の情報が満載ですし、すでに有名な不思議生物に関しても新しく調べたことや新しい見方が提案されているこの本は必読の1冊だと思います。
値段もアマゾンで買うと配送料無料になるギリギリの良い値段付けがされています。
私も自宅用に、1冊買って(トイレ図書館で)1日1項目を読もうと思います。
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感動です
木を見ていたら森が見えてきた
本屋でぼくの本を見た
CoSTEPersの業績2件
面白そうな本ですね、と言いながら仕事にかまけて先生のブルーバックッスの教科書は未だにほとんど積読状態です、こういうあっしのような輩には綺麗な絵と写真、そして小泉流ワンフレーズ^^解説が有効かと...
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by
sarasara
at 2007-04-04 01:20
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トラックバックありがとうございます。一般向けの本を専門家が読まれると、どのような感想を持たれるのか、とても興味がありました。専門家の立場からの好意的なコメントをいただきとても嬉しいです。先生のデジャ・ヴ感は、お弟子さんであるK本さんやE藤さんが、先生の脳内メッセージを日頃から受け取っておられるからでしょうか。研究者を育てるということは、子育てにも似ているような気がしました。
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by
umishida
at 2007-04-04 11:00
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こんにちは。エントリを呼んで感動して、即アマゾンで注文してしまいました。 なんで感動したのか、自分でもはっきりしないのですが、そうやってできる本もあるのか!!とか、うらやましい!私もかかわってみたい!とか。届くのが待ち遠しいです~
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by
ogaga
at 2007-04-04 13:27
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by stochinai
| 2007-04-03 21:45
| CoSTEP
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Comments(4)