2005年 02月 07日
教師の拡大再生産
昨日は、月遅れの新年会に参加してきました。
主催は、札幌を含む北海道石狩管内の小中学校の先生を中心にした小さな理科サークル」(理科教育の自主学習グループ)です。しかし、いざ集まってみると、理科関係者ばかりではなく、社会科の先生や先生未満の人や、高校の先生や大学関係者など、理科サークルという名前ではくくりきれない人々の集まりです。(ここや、ここが、関連サイトです。ここもそうでした。)
初等中等教育の理科(おそらく理科だけではなく、社会や体育などでもそうなのだと思いますが)を突きつめていくと、理科だけでは完結せず、様々な教科とクロスオーバーしてくるというのが自然な流れであるということが、このサークルの活動の中から出てきた一つの大きな成果だと思います。この「理科サークル」に様々な人(教育関係者以外も参加するようになってきています)が参加しているということが、「理科教育」の進むべき方向の一つであることが、実践を通じて明らかになってきているという確信もあります。(そういう意味で、生活科とか総合的学習というものの方向は間違ってはいなかったと思うのですが、文科省が早々に撤退しそうな雰囲気になっていることにはまったく失望します。)
私がこのサークルと知り合ったきっかけは、検定教科書では体系的な教育ができなくなったことを受けて、2年くらい前に左巻健男さんが中学校の新しい理科の教科書を作ろうとウェブで呼びかけをしていたことに始まります。
その頃、私もしばらく大学で教えていて、入学してくる学生が年を追うごとに、科学全体(つまり理科)を体系的に理解していないことに危機感を感じていたところでしたので、教科書作りのお手伝いをしたいと思い検討委員として参加させていただきました。その結果作られた「新しい科学の教科書」は完全なものとは言えませんが、絵本のようになってしまった中学校理科の教科書に比べると、はるかにまともなものだと思います。(#その後、高校生物の教科書も作り直さなければならないということで、そちらのお手伝いもさせてもらっていますが、こちらも春には出版されます。)
メーリングリストを通じて教科書作りをしていた時には、あまり意識していなかったのですが、北海道の理科の先生方がその教科書作りで中心的役割を担っていました。同じ北海道に住む人間としてとても嬉しいことだったので、左巻さんが札幌に来た時に行われた懇親会で、活動の中心となっている理科サークルWidsom96のメンバーを紹介していただき、さらにメーリングリストにも入れてもらいました。
Widsom96は主要な活動として毎月の例会と不定期の会を開いていますが、私はそちらには出ず、メーリングリストと懇親会(飲み会)だけに参加する不良会員です。
今年始めての飲み会ということで、参加させていただいた昨日の新年会ではいろいろな話を楽しく聞かせていただいたのですが、もっとも興味深かったのは教育大学4年生で教員志望のWさんを巡る話題でした。昨日の会には、Wさんが中学生の時にその学校の先生だった方が二人もいらっしゃいました。Wさんが中学校の修学旅行の時などに経験したつらい思い出や、荒れる中学校の様子などについて、生徒側と教諭側の目から見ての話を聞かせてもらい、とてもおもしろかったです。
それよりなにより、中学校の時の先生と生徒が今まさに同僚になろうとしつつある瞬間に立ち会わせてもらっている気がして、感慨深いものがありました。さんざんつらい思い出のある学校に戻って先生になろうということは、Wさんが子ども心に見た先生の姿を受け入れ、自分もそうなりたいと思ったということだと思います。もちろん、今日の結果を意図してそうなったのではないと思いますが、教え子が教師を目指すということは、自分のやっていたことが肯定的に評価された最高の栄誉であると思います。
教師というものはこうやって再生産されていくのだと思いました。文科省あたりも貧困なアイディアを集めて、優秀な教師をどうやって集めようかと考えているのかもしれませんが、なにも難しいことはないという気がしました。優秀な教師の元からは、教師志望の子どもがたくさん育ってくるのです。私の偏見かもしれませんが、そうやって小さいときから教師を志望している人の多くは優秀な教師になると確信します。他の職業もそうかも知れません。小さいときから抱いた夢を、できるだけたくさんの子どもたちに実現させてやれる社会というのは、素敵だと思いませんか。
残念なことにWさんは今年度、志望していた小学校の教員採用試験に合格することができなかったそうですが、春からは元の先生と同じ学校で臨時教員として働けることになりました。考えようによっては、願ってもない実践的研修期間をもらったようなものです。なんとか頑張って来年こそは試験を突破して欲しいものです。
主催は、札幌を含む北海道石狩管内の小中学校の先生を中心にした小さな理科サークル」(理科教育の自主学習グループ)です。しかし、いざ集まってみると、理科関係者ばかりではなく、社会科の先生や先生未満の人や、高校の先生や大学関係者など、理科サークルという名前ではくくりきれない人々の集まりです。(ここや、ここが、関連サイトです。ここもそうでした。)
初等中等教育の理科(おそらく理科だけではなく、社会や体育などでもそうなのだと思いますが)を突きつめていくと、理科だけでは完結せず、様々な教科とクロスオーバーしてくるというのが自然な流れであるということが、このサークルの活動の中から出てきた一つの大きな成果だと思います。この「理科サークル」に様々な人(教育関係者以外も参加するようになってきています)が参加しているということが、「理科教育」の進むべき方向の一つであることが、実践を通じて明らかになってきているという確信もあります。(そういう意味で、生活科とか総合的学習というものの方向は間違ってはいなかったと思うのですが、文科省が早々に撤退しそうな雰囲気になっていることにはまったく失望します。)
私がこのサークルと知り合ったきっかけは、検定教科書では体系的な教育ができなくなったことを受けて、2年くらい前に左巻健男さんが中学校の新しい理科の教科書を作ろうとウェブで呼びかけをしていたことに始まります。
その頃、私もしばらく大学で教えていて、入学してくる学生が年を追うごとに、科学全体(つまり理科)を体系的に理解していないことに危機感を感じていたところでしたので、教科書作りのお手伝いをしたいと思い検討委員として参加させていただきました。その結果作られた「新しい科学の教科書」は完全なものとは言えませんが、絵本のようになってしまった中学校理科の教科書に比べると、はるかにまともなものだと思います。(#その後、高校生物の教科書も作り直さなければならないということで、そちらのお手伝いもさせてもらっていますが、こちらも春には出版されます。)
メーリングリストを通じて教科書作りをしていた時には、あまり意識していなかったのですが、北海道の理科の先生方がその教科書作りで中心的役割を担っていました。同じ北海道に住む人間としてとても嬉しいことだったので、左巻さんが札幌に来た時に行われた懇親会で、活動の中心となっている理科サークルWidsom96のメンバーを紹介していただき、さらにメーリングリストにも入れてもらいました。
Widsom96は主要な活動として毎月の例会と不定期の会を開いていますが、私はそちらには出ず、メーリングリストと懇親会(飲み会)だけに参加する不良会員です。
今年始めての飲み会ということで、参加させていただいた昨日の新年会ではいろいろな話を楽しく聞かせていただいたのですが、もっとも興味深かったのは教育大学4年生で教員志望のWさんを巡る話題でした。昨日の会には、Wさんが中学生の時にその学校の先生だった方が二人もいらっしゃいました。Wさんが中学校の修学旅行の時などに経験したつらい思い出や、荒れる中学校の様子などについて、生徒側と教諭側の目から見ての話を聞かせてもらい、とてもおもしろかったです。
それよりなにより、中学校の時の先生と生徒が今まさに同僚になろうとしつつある瞬間に立ち会わせてもらっている気がして、感慨深いものがありました。さんざんつらい思い出のある学校に戻って先生になろうということは、Wさんが子ども心に見た先生の姿を受け入れ、自分もそうなりたいと思ったということだと思います。もちろん、今日の結果を意図してそうなったのではないと思いますが、教え子が教師を目指すということは、自分のやっていたことが肯定的に評価された最高の栄誉であると思います。
教師というものはこうやって再生産されていくのだと思いました。文科省あたりも貧困なアイディアを集めて、優秀な教師をどうやって集めようかと考えているのかもしれませんが、なにも難しいことはないという気がしました。優秀な教師の元からは、教師志望の子どもがたくさん育ってくるのです。私の偏見かもしれませんが、そうやって小さいときから教師を志望している人の多くは優秀な教師になると確信します。他の職業もそうかも知れません。小さいときから抱いた夢を、できるだけたくさんの子どもたちに実現させてやれる社会というのは、素敵だと思いませんか。
残念なことにWさんは今年度、志望していた小学校の教員採用試験に合格することができなかったそうですが、春からは元の先生と同じ学校で臨時教員として働けることになりました。考えようによっては、願ってもない実践的研修期間をもらったようなものです。なんとか頑張って来年こそは試験を突破して欲しいものです。
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winter-cosmos
at 2005-02-07 14:46
x
息子が教員志望です。中学くらいから、その思いはかたまりつつありました。学外活動を小学校の頃からしていて、その中で育ったものだと思っています。
親バカですが、向いていると思っています。それだけに、苦労だからやめておいたらと、のどのあたりまで出そうな日もあります。
楽な仕事などあるわけないのですから、応援してやることしか私にはないのですが。
文系、理系どちらでも選べる成績でしたから、最終的に採用試験のことを考えて工学部に進みました。
教職をとるのが、あまり前提になっていないのか、専門と重なっていて、うまく単位がとれないようです。四年で卒業できても、教免は厳しいかも知れません。まだまだ前途多難ですが、なんとか思いを遂げてほしいです。
親バカですが、向いていると思っています。それだけに、苦労だからやめておいたらと、のどのあたりまで出そうな日もあります。
楽な仕事などあるわけないのですから、応援してやることしか私にはないのですが。
文系、理系どちらでも選べる成績でしたから、最終的に採用試験のことを考えて工学部に進みました。
教職をとるのが、あまり前提になっていないのか、専門と重なっていて、うまく単位がとれないようです。四年で卒業できても、教免は厳しいかも知れません。まだまだ前途多難ですが、なんとか思いを遂げてほしいです。
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stochinai at 2005-02-07 15:38
息子さんは、良い先生に育てられたのだと思います。そうやって、良い先生が再生産されることを期待したいと思います。
採用する側の教育委員会では、ちょっと異なる意見を持っているかもしれませんので、採用試験の時には「大人の振るまい」が要求されるかもしれません。教職試験対策の受験勉強も必要になるでしょう。でも、そんなことは「ささいな浮き世のしがらみ」に過ぎません。
初心を貫いて、ひとりでも多くの良い先生が日本に増えてくれることを願っています。陰に日向に応援してあげてください。
参考になるかどうかわかりませんが、記事の中に北海道で頑張っている先生達のサイトのリンクを追加しておきます。
採用する側の教育委員会では、ちょっと異なる意見を持っているかもしれませんので、採用試験の時には「大人の振るまい」が要求されるかもしれません。教職試験対策の受験勉強も必要になるでしょう。でも、そんなことは「ささいな浮き世のしがらみ」に過ぎません。
初心を貫いて、ひとりでも多くの良い先生が日本に増えてくれることを願っています。陰に日向に応援してあげてください。
参考になるかどうかわかりませんが、記事の中に北海道で頑張っている先生達のサイトのリンクを追加しておきます。
by stochinai
| 2005-02-07 01:26
| 教育
|
Comments(2)