5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

農学研究院教授が研究費不正

 うちの大学(北海道大学)の話なので、知らんぷりをするわけにもいかないので、記録のために書いておきます。

 私は同じ大学にいながら、この先生が誰なのかはまったく知りません。報道によれば50歳代後半ということですので、ひょっとしたら顔見知りである可能性は否定できませんが、ほんとうに知りません。停職1ヶ月ということなので、今か突然一ヶ月休講になった先生ということで、学生にはすぐ知られてしまうでしょう。

 今のところ、北海道新聞がもっとも詳しい記事を書いているようです。

 北大教授が300万円流用 架空発注など、停職1カ月(04/25 14:26)
 北大によると、教授は札幌市内の特定の実験物品納入業者に架空の物品を発注した。その上で、代金の九割に当たる百六十八万円を「寄付金」として教授に戻させていた。
 これは、かなり悪質かもしれません。業者も1割のリベートを取っているようなので、こちらも黒ですね。このお金を何に使ったのかが、大問題だと思いますが、そこは明らかにした上で処分をどうするのかを決めたのでしょうか。私としては停職1ヶ月はかなり軽い処分だと思いますので、このお金を「正しい」目的(つまり研究・教育)に使ったのだと信じたいところですが、もしも記事にあるように「全額返還した」から罰を軽くしたというのなら、北大当局も「共犯」と言われても反論できない気がします。
 また、研究室の学生にいったんアルバイト代を渡した上でその全額百三十一万円を返還させ、学生の旅費や学会参加費に流用した。
 これに関しては、私は同情的です。当時、大学院生を学会などで発表させようとしたら、このようにお金を捻出することは、少なくとも北大では広く行われていたと思います。これが処罰の対象になるのだとしたら、全教員の90%くらいを処分しないとフェアではないのではないかというふうに感じます。新聞にはとんでもないことというニュアンスで書かれているものの、北大当局としてはこの点に関しては情状酌量したというのならば、納得できますが。
 また、カラ出張で五万円を不正受給し、私的に着服していた。
 本当に私的に着服していたのなら、問題外です。懲戒免職にして欲しいところです。
 昨年五月に大学に不正を告発する投書があり、大学が調査を進めていた。教授はすぐに事実を認め、業者側が受け取った分を含めて返還した。
 これは、最近ここで話題になっているアカハラと関係がある内部告発であるようなにおいを感じます。告発されると言うことは、先生と学生あるいはポスドクとの人間関係がかなりまずかったことを意味しているような気がします。
 北大は再発防止策として本年度から納品・受付センター(職員十四人)を新設した。その上で、納品時にセンターの職員が教官の発注書と納品される現物を確認して受け渡す仕組みにした。
 これは要するに取り締まりを厳しくするという対策ですが、もう一方で根元的に教員が不正をせずとも充分な教育・研究ができる体制を保証するのが正しい管理の仕方だと思うのですが、そういう意味での対策については何も書かれていませんし、実際に大学で何が行われているのかということを説明する義務が大学にはあると思います。

 副学長談話の「これまでは教官を信頼し、不正をしようと思えばできる仕組みだった」というのは、ちょっとひっかりますね。これからは、教員を信頼することをやめるとも取れますが、ほんとうにそれで大学がうまくいくものでしょうか。角を矯めて牛を殺すようなことにならないことを望みますが、すでに牛は死んでいるという説も出ていることを最後に書き留めておくことにします。
Commented by M姫 at 2007-04-26 00:59 x
『教員を信頼するのを止めて、不正できない仕組みにする』というのが大学側の考えなんですね。
でもそのために「納品・受付センター」をはじめとする新たな経理システムに莫大な費用(人件費を含む、増えたのは14名どころじゃ無いですよ)をかけては、全く意味が無いように思います。
(だいたい「納品・受付センター」で不正が防げるとも思えませんし・・・。)
発注する手間も以前よりずっと大変になって、研究の妨げになっていると思います。
そんなこと本当に『国民の皆さまが求めている』のでしょうか?
余るほど予算を振り分けないようにするとか、予算の年度繰越が出来るようにするとか、せめて余った予算の返却が気軽に出来るようにするとか、予算の費目間流用をしやすくするとか・・・
税金を効率よく使用し、より多くの研究成果を生み出す為に、もっともっと議論しなければならないことがあるような気がします。
Commented by K_Tachibana at 2007-04-26 10:37 x
M姫さん,stochinaiさん,みなさん
納品・受付センターをつくったきっかけは,文科省の研究費不正の委員会のとりまとめに大学がそのまま右から左に従っているだけなのでは?
私も数回この委員会を傍聴に行きましたが,本意ではない(やらされ仕事であるということの言い換え)ということを繰り返しながら研究費不正のガイドラインをとりまとめていってました.
私はパブコメで発言させていただきましたが,研究者の方や大学の現場の方のパブコメへの意見が非常に少なかったのが気になっていました.
もうできちゃったものを動かすのはたいへんですが,ガイドラインは強制力のあるものではありません.納品・受付センターはある意味責任逃れのためにやっているという気もします.ガイドラインで言われたからやっているのだ,と.
もっと大学人が主体的にどうしていったらいいか考えて変えていかないと,私のような大学の外にいる人間がいくらパブコメ出してブログで啓発しても限界があると思います.
Commented by stochinai at 2007-04-26 21:43
 納品・受付センターに関しては、K_Tachibanaさんがおっしゃるとおりガイドラインに従った(ふりをする)姿勢を見せるためのものだと思います。

 昨日の教員の処分も、他の教員に対する「見せしめ」のためにこの時期に発表したのではないかと勘ぐられるくらい、大学の方針にすすんで協力しようという教員がほとんどいないというのが現状です。そりゃそうですよね。なんの相談もなしに、いきなり命令するんですから。

 しかし、恐怖心をあおりながらトップダウンで命令するという方式は大学のようなところでは機能しないということを理解せずに、このまま突っ走るとどうなることやらと思いますが、今の大学にはそうしたことにじっくり取り組む時間も余裕もないのでしょう。

 また、今の日本ではパブコメを出しても何かが変わるなどということはとても思えないというのが物言わぬ大多数の「意見」なのではないかと思われます。また、たとえ大学の中にいるとは言っても、私などの声が届く場所などはありませんし。
Commented by 通行人 at 2007-04-27 23:57 x
これは大学うんぬんの問題ではないと思います。
やらなければ運営費交付金減額、競争的資金不採択が待っていますから。右から左に従うしかないのです。(そもそも方針を決めている人が文科省からの派遣ですから)費目間流用や年度繰越も文科省や財務省が首を縦にふらなければどうにもならない話です。
やりたいと思っている人は一人もいないと思います。人件費削減が叫ばれ実際にすすんでている中、わざわざ膨大な仕事を増やしたい人はいませんし。
法人化したからといって自由になるわけではなく、評価に基づく重点配分や責任と裁量の委譲の名の下に、むしろ大学をコントロールしやすくなったといいと思います。(昔は評価に関係なく規則的な配分でしたから、それはそれで一長一短はありますが・・)

by stochinai | 2007-04-25 23:12 | 大学・高等教育 | Comments(4)