5号館を出て

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3年生で大学院に飛び入学すると得か

 よくもまあこんなに、と思うくらい毎日毎日、大学や大学院関係のニュースが飛び込んできます。誰かが意図的に流しているのでしょうか。もし、そうだとしたら、やはり大学・大学院の制度がいじられる前兆ということかもしれません。

 今朝の朝日新聞にも一面に、「大学院へ飛び入学急増」という刺激的なタイトルが踊っておりました。朝日コムにもありました。「大学院へ飛び入学急増 3年生から 人材確保へ囲い込み」です。
 89年の制度改正で可能になった大学院への飛び入学は04年度から急増。05年度は83校が378人を受け入れ、38校170人だった03年度と比べて校数、人数とも2倍強に達した。
 たいていの大学院では、制度としての飛び入学はできていると思います。しかし今のところ、北大の理学部生物科学科から理学院や生命科学院、環境科学院に飛び入学したという話は聞いていない気がします。

 ちょっと前までは学部3年までに卒業に必要な単位が比較的簡単に取れたのですが、今は文科省の指導もあり3年までで卒業に必要な単位は取得できないしくみになっているところが多いと思います。ということは、単位未修得のまま「退学」をして大学院を受験するということになります。しかも、大学院の入試は夏にありますので、専門の講義でもっとも骨のある内容を習いつつある3年の夏に大学院入試を受けることになりますので、普通の学生が、普通の試験を受けたのでは合格は難しそうに思えます。

 ただし、一年若いわけですから「特に優秀」と見なされて、AOのような「特別な」入試が行われるのであれば、逆に合格しやすいということはあるのかもしれません。また、学士の資格を放棄して大学院に進学するというリスクを背負うわけですから、それを補填するだけのメリットがないとなかなか進学する気にならないような気がします。特に優秀な学生ですので、返還免除の奨学金が優先的に与えられるということや、博士後期課程まで無試験で一貫指導が行われるとか、普通なら5年かかる博士号取得を4年ですむような集中指導を行うとか、いろいろなメリットが与えられているというようなことがあれば、入学したいという学生は多そうな気はします。
 卒業に必要な単位数を取得できないため、飛び入学すれば学士号は与えられない。それでも急増しているのは90年代以降、国際競争力の強化をめざして東大を先頭に大学院強化が急速に進み、「早くから大学院で研究を積ませ、優秀な人材を育てたい」との大学院側の思いがある。加えて、「有力な他大の大学院に優秀な人材を奪われたくない」(関西の私大教授)との心理も働き、特に自校からの飛び入学が急増している。

 先日の教育再生会議の「主要大学の大学院に自校の自学部から入学できる学生の割合を3割以下に制限する」というのは、実はこうした現実に歯止めをかけようとするものだったということも記事に書かれてありました。ということは、3割までは飛び入学で取ってしまって、普通に卒業する人は他大学に行くしかないという流れもあり得るのでしょうか。そうなると、同級生同士で醜い争いが起こりそうな気がします。

 さらに、人よりも早期に研究現場へ入るということは、研究業績蓄積という将来研究で生きていくとしたら有利な側面もあるかもしれませんが、さすがに就職までも保証してくれないでしょうから、他の学生に比べるとのんびりと広い教養を身につける時間が足りなくなる結果、研究からはずれたキャリアを選ぶ時に人よりも不利になるかもしれません。
 代々木ゼミナール入試情報センターの坂口幸世本部長は「大学院も大学と同様に乱立気味。優秀な学生の獲得が生き残りのカギとなるだけに、大学院への飛び入学には、1年分の学費を免除するという意味合いもあるのでは」と分析している。
 上の引用とともに、これも飛び級入学する大学院生を受け入れる側の論理ですが、大学院生の側も充分に自分が有利になることを見定めてから選ばないと、10年後くらいに泣きを見るかもしれません。

 超特急コースがあることは選択の幅が広がるという意味で良いことだと思いますが、途中で下車したり、普通列車に乗り換えたりするプログラムも用意しておかなくては、一握りの勝者とたくさんの敗者を生むといういつものストーリーになってしまいそうで心配です。

 ~ 気をつけよう、甘い言葉と飛び入学 ~
Commented by デモ鳥 at 2007-05-15 11:39 x
 うーん。進学する側がメリットを求めて(飛び級で)進学するのは確かでしょうが。そのメリットってなんでしょうね。
 学部3年時。まだ卒研さえ経験していない。そんな学生に修士へ進ませていったいどうしようというんでしょうね…。本人も研究なんてわかってないだろうし。
 飛び級制度を作ったはいいけれど、誰も利益を享受していないと思うのは私だけでしょうか?

 一年若くして進学する=優秀というのはちょっと疑問です。高校2年生に飛び級入学が認められてしばらくたちますが、その制度で入学した学生が飛びぬけて素晴らしいという話も聞きませんし。

 そもそも、飛び級が特別な制度であるという事が特殊なんじゃないですかねぇ。「必要がなかった足かせ」。他国じゃぁ10代半ばで大学生なんてザラにある話と聞きますし。

 日本はいまだに大学入学年齢を18歳(飛び級17歳)に限定していますが、入試に合格できる学生は高卒であろうがなかろうが受け入れる、大学院についても同様、とすればそういうシステムを学生が自由に活用できるのではないかしら?
Commented by stochinai at 2007-05-15 18:45
>そもそも、飛び級が特別な制度であるという事が特殊

 私もそう思います。聞くところによると、アメリカなどは、小学校の何年に入るかは自己申告なのだそうで、年齢ではなくどのレベルの教育を受けたいかということを自分で選べるということは大切だと思います。

 同じように、大学も早くはいりたいのであれば、中学卒業とともに入試を受けても良いし、高校も6年間くらいかけて出ても良いと思うのです。大学も昔は学部の表裏8年、大学院修士4年、博士6年などを最高にのんびりと時間をかけて充実した(?)学生生活を送ることが比較的許されていたような気がするのですが、学部はともあれ、最近の大学院ではかなり無理をしてでも博士課程3年でドクターを取らせることを推奨しています。
 しかし、教育という面から見たら、決して良い結果になっているとは思えないのは、「粗製濫造博士」があふれかえっている現状から、すでに結果が出ているはずです。ならば、変える時でしょう。
Commented by rabbitfootmh at 2007-05-15 21:32
> アメリカなどは、小学校の何年に入るかは自己申告なのだそうで、・・・

科目別に、クモン式でいいんじゃないですか?(笑)
各学年相当の基礎知識がきちんと身につけば、次のレベルに進んでもいい。身につかなければ、ずっと同じ「学年」で足踏み・・・先生側の手間が大変なのかな?
Commented by ぜのぱす at 2007-05-16 10:02 x
これを『飛び級』と呼んで良いのでしょうか?本当の飛び級は3年で学士を得ることを云うんじゃないですか?

と思ったら、『飛び級』じゃぁなく、『飛び入学』なんですね。

ん〜ん、学士を取れなくしてしまう制度の意味が良く分かりません。何故、3年で卒業させて他のひとより早く進学、就職出来る仕組みにしないのでしょう。

私の居る大学(米国)で、聞いた話ですが、1年で学士を取って卒業した学生が居るそうです。もちろん、物理的に1年間で卒業に必要な単位を取ることは不可能ですが、高校の時から、既に、大学の単位(に互換可能な単位)を取り始めていたそうです。

そう云えば、単位の互換性も日本では、ほとんどないんではないでしょうか?

つづく
Commented by ぜのぱす at 2007-05-16 10:04 x
良く知らないのですが、高専を出たひとは、大学の3年生に編入出来て、高専と大学の両方を卒業出来るんですよね?

だとすれば、理屈上、大学に1年しか居なくて、大学院に『飛び』入学、仮に途中で挫折(或いは積極的な転身)しても最終学歴は高専卒、片や、通常の高校から大学入学、『飛び』大学院入学、で途中で挫折(或いは積極的な転身)すると、只の、高卒。何か変じゃぁありませんか?

そもそもの仮定が間違っていたら、大変、失礼しました。
Commented by デモ鳥 at 2007-05-16 11:33 x
>ぜのぱす様
 今は高専、短大、専門学校修了者に編入資格を認めている大学があります。
 ただ私のいた大学では、飛び級に関してはそういう特殊入学者は除外するという規定がありました。そういうものごとの運用は各大学に任せられていますので。

 仰るように、学部に飛び入学した方に、大学院にも飛び入学を認める大学があった場合。「大学院中退、でも高卒」というキャリアの方が現れうると思います。

 でも、役所を除いて一般私企業で考えると、卒業証明書、修了証明書は出ていなくても、飛び入学=スキップした課程は卒業、修了扱いするところがあるのではないでしょうか。結局、会社に入る場合、学歴は初任給や昇任試験の受験資格にしか関係しないんですから。特殊なキャリアをもったひとをどう扱うかは、彼らがどういったところに進むか次第ということになります。

 お役所関係は駄目ですよ。卒業証明書、修了証明書が出るかどうかで扱いが絶対的に決まりますから。だから、「特殊なキャリアを積んだヒトが高卒扱い」が変なのではなくて、「証明書がないと「卒」の扱いができないお役所」が変なのだという事になるんだと思います。
Commented by ぜのぱす at 2007-05-16 13:04 x
>デモ鳥さま、

まさに、そうなんだと思います。変じゃない?と云うのは、舌足らずでしたが、まさに、そう云う社会状況をイメ−ジして出て来た感想です。お役所だけに限らないと思います。ちょっと論点がずれますが、例えば、何故、新卒者じゃぁないと就職が極端に難しくなるんでしょう。就職活動に失敗して、卒業しないようにワザと留年するなんてことが、私の学生時代にも周りに何人か居りました。

日本の社会構造が、やり直しが、効かない、難しい、仕組みになっているのは、間違いありません。大学院、博士問題等の今迄の一連の議論で、その視点が抜けているように感じました。根は深く、そう簡単に、大学、大学院の制度を少し弄ったくらいでは、どうにもならないような気がしますが、と云ってしまっては、身も蓋もないんですがね。
Commented by stochinai at 2007-05-16 19:07
 デモ鳥さんとぜのぱすさん、有意義なディスカッションをありがとうございます。

 日本に起こるいろいろな問題を考えていくと、結局この「社会のしくみ論」に行き着きます。政府が自民・公明になっているのも、この社会構造から出てきている、ある意味の「必然」なのではないかと思うと、政権だけを批判してもラチがあかないことに気がつきます。そこで、かなりの無力感に襲われるのですが、それでもなお、自分のまわりの小さなコミュニティから変えていくことはできるのではないか、そしてその小さなコミュニティがだんだんと増えていけば、いつかは大きな相転移が起こるのではないかと思いながら、毎日つぶやいているのが私なのかもしれません。
by stochinai | 2007-05-14 22:21 | 大学・高等教育 | Comments(8)