5号館を出て

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グローバルCOE

 先週末に平成19年度グローバルCOEプログラムの審査結果が発表されました。新聞などですでに報道されているとおりですが、内容に関しては学術振興会のホームページに詳しく載っておりますので、内容をお知りになりたい場合は新聞などによらずに、直接そちらをご覧になることをお勧めします。

 グローバルCOEとは、遠山文部科学大臣の頃に一瞬出て消えた「トップ30」とほぼ同じプログラムだと言われていますが、学術振興会の説明がもっとも適切だと思いますので、転載します。なお公募対象となったのは「大学院研究科専攻(博士課程レベル)、大学附置の研究所、研究センター等」です。
 グローバルCOEプログラムは、平成14年度から文部科学省において開始された「21世紀COEプログラム」の評価・検証を踏まえ、その基本的な考え方を継承しつつ、我が国の大学院の教育研究機能を一層充実・強化し、世界最高水準の研究基盤の下で世界をリードする創造的な人材育成を図るため、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援し、もって、国際競争力のある大学づくりを推進することを目的とする事業です。
 というわけで、昨年度で修了した「21世紀プログラム」を抱える大学は、ほぼすべてが応募したのではないかと思われますが、「グローバルCOE」では予算を倍増させるかわりに、採択数を半減させるという方針ですので、結果は予想されていたとはいえ、実績がありながらも不採択になったプログラムも多かったのではないでしょうか。

 我が北海道大学でも、評価の高かったプログラムを継承するはずだったものが不採択になるなど、生命や環境関係が衝撃を受ける結果になったようです。申請状況や審査結果のほかに採択課題の概要と採択理由がホームページで公開されておりますので、ごらんになると、文部科学省が今後の大学政策をどのような方向に向かわせようとしているのかということがほのかに見えてくるような気もします。

 採択されたのは、生命科学が13件、化学・材料科学も13件、情報・電気・電子も13件、人文科学が12件で、学際・複合・新領域も12件の合わせて63件です。ただし、採択比率は大きく異なり申請数が、生命科学が55件、化学・材料科学が45件、情報・電気・電子が37件、人文科学が39件であるのに対して、学際・複合・新領域はなんと105件となっています。

 専門と関係のない課題だと、概要をよんでもちんぷんかんぷんのものが多いのですが、ちょっとだけ採択課題を分析してみました。今回のプログラムが「国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援」するということをはっきりうたっていることが、採択課題にも反映されています。

 課題中に「拠点」という語を含むものが、63件中37件あります。 「研究」という語を含むものが32件、「教育」という語を含むものが29件、さらに「国際」も15件となっており、募集の要件どおりの結果になっていると言って良いでしょう。まさに「****のための国際的教育研究拠点」のオンパレードです。

 採択になった課題には1件当たり5千万~5億円程度/年の支援がなされることになり、ご同慶の至りなのですが、不採択になったところはかなりがっかりということになります。まだ、はっきりしたことはわかりませんが、この予算で大学院生(博士後期?)の経済的支援が行われるということも言われていますので、たとえば返還不要のほんとうの「奨学金」制度が始まるのかもしれません。

 もしも、このお金がなかったとしても、どこの大学院博士課程でも「最低限」の教育研究がなされることを期待しますが、今後2-3年するとグローバルCOEに採択されたところと、そうではないところの大学院博士課程への進学率に大きな差が生じてくることは避けられないと思います。

 大学院生も博士課程進学の時には、そこらあたりをしっかりと調べなければならない時代になってきたということでしょう。

 良いのか、悪いのか・・・・・・。
Commented by KK at 2007-06-18 21:55 x
北大の生命科学や京大の生命科学が不採択になるというのはさすがにやりすぎ(過当競争)ではないでしょうか。
不採択になった拠点が何故ダメだったのか何か足りなかったのかということについて(当事者に)何らかのフィードバックがあるのでしょうか?
また、今回生命科学分野で採択されている拠点にはいわゆる基礎医学の分野が複数ありますが、医学系分野は来年度に募集があるのに生物科学、薬学、農学が中心と言われている生命科学分野へのくら替えが何故認められたのか、とても疑問です。
Commented by ぜのぱす at 2007-06-19 06:23 x
いつも思うのですが、今回のケースに限らず、各種、研究費や職の公募で、どうして不採択だったか、と云った情報が公開されないのはどうしてなんでしょう?まぁ、職の場合は、当事者以外に報せる必要はないでしょうが、普通は、落選の理由は、その当事者にすら報されませんよね。

例えば、論文を投稿すれば、コレコレシカジカの理由でrejectです、と云う情報が得られる訳で、それがいい加減なreviewだったら、それに対して抗議も出来るし、逆に、とてもreasonableであれば、そこから学ぶことが出来る訳で、そう云うsystemであればこそ、同時に、reviewerの側の公平性、妥当性も維持出来る訳ですよね。

若しかしたら各大学には、それぞれ不採択の理由が、伝えられているのかも知れませんが、今回のような大型の予算の場合は、もっとガラス張りにして、採択、不採択に拘らず、全ての情報を『公』開すべきだと思うのですが。採択を決める側が、本当にreasonableだったのかどうかは、神のみぞ知る?
Commented by melo at 2007-06-19 09:31 x
博士課程後期の大学院生です。
私が通っている大学の研究科は、今回グローバルCOEに採択されたので、大学院生は給料がもらえるだろうから学費が払えると喜んでいます。
(前のCOEでももらえてたので、多分もらえるという予測ですが)

つい最近アメリカのNIHでポスドクをやっている人(日本人ですが)
と話してた時に、「日本の大学院は何故、大学院生に給料をやらないのか? そうしないと、どうやって研究しながら生活するんだ」
と怒ってました。

まぁ、アメリカは厳しく大学院生を選抜する代わりに、給料を払って
研究に専念させるらしいですね。で、学生も給料のいい所を選ぶら
しいですが・・・(聞いた話で記憶違いで間違ってるかもしれませんが)

今回のグローバルCOEは大学のみならず、大学院生にとっても
かなりの死活問題になっているということを国は分かってくれてい
るのでしょうか?
Commented by stochinai at 2007-06-19 21:59
 最大の原因は158億円もの税金の使い方に対して、国民の間で議論にならないという、この国のタックスペイヤーの姿勢も大きい気がします。自分の家族でも関係していない限り、なかなか大学や大学生・大学院生・ポスドクのことなど考えてくれません。そこを何とかしないと、大学の問題はお先真っ暗なのだと思います。

 もっと社会の方々が大学のことを心配してくれるような関係を、我々が積極的に作っていくところから始めないとダメだと感じています。
by stochinai | 2007-06-18 21:14 | 大学・高等教育 | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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