2007年 06月 20日
議論大歓迎 【ブログでバイオ】
最近、復活したブウさんとmaruさんのリレーエッセイ【ブログでバイオ】に、Tachibanaさんや私が乱入したの良いのですが、傍目から見ていると「どうもこいつら、意見が似ていて、あまり生産的な議論にならないんじゃないの」という疑問は当然のことながらあると思っていました。
そんな中で、私がRSSで購読させていただいている注目ブログのひとつ「ハーバード大学医学部留学・独立日記」の島岡さんが参入してくださいました(#)。日頃から、尊敬して読んでいるブログで、自分の記事が取り上げられるとドキッとするものですが、大変にありがたく思いました。(これからも、よろしくお願いします。^^;)
#ご本人はあえてトラックバックをなさらなかったのか、あるいは最近エキサイトの調子が悪いせいなのかはわかりませんが、世界に公開されたブログですので、勝手にとりあげさせていただきます。・・・・・今、気が付いたのですが、maruさんのところにはちゃんとTBされていますので、私のところはサーバーが悪かったのだろうと思います。スミマセン。
さて、島岡さんの反論は「理系のキャリアの選択肢が狭いことは悪いことか」という、ご本人もおっしゃっておられるように、ちょっと無理してバランスをとるための議論になっています。
一般論として、将来に向かっての選択肢が狭いよりは広いほうが良いに決まっているのですが、島岡さんがあえておっしゃっているのは、研究者というプロになりたいのなら、退路を断って真剣に打ち込まなくては、その実現はあり得ないだろうという正論です。
ある人が持っている資源(経済力、能力、時間、エネルギーなど)には限りがあるのだから、選択肢を広げようとしてそれらを投入するよりは、はっきりとした目標に向かって集中的に努力したほうが成功する確率は高くなるだろうということは、おっしゃる通りだと思います。
ちょっと化石時代の話をさせてください。
私達が大学院に入った頃は、大学院に行くということはほかのほとんどのキャリアを放棄することと同義でした。私も、大学院にはいる時に指導教員の方から、「研究者(大学教員)になれる可能性はほとんどなく、他になれるものも高校教員くらいだからね」と言われました。就職も良かったですし、民間の方が大学の先生よりもはるかに給料もよかったので、大学院に進学する人は少なかったですし、のんびりとした時代で、博士号も5年で取得する人などほとんどおらず、平均で7-8年、たまに5年でドクターをとると「スゴイ」と言われた時代です。しかし、私と一緒に大学院にはいった7名くらいは、その全員が国公立の教員になりました。先輩達を見ていても、何年かは無給のまま奥さんに養ってもらっていた方もたくさんいましたが、それでも多くの方々はどこかの大学の教員になれたような気がします。もちろん、行方知れずになった方もいらっしゃいますし、高校の先生になった方もたくさんおられます。それでもなお、35歳を過ぎても無職などという人は皆無と言っても良い時代だったと思います。
そして今、理系大学卒業生のほとんどが大学院に進学する時代になり、多くの人が5-6年で博士を取り、そのほとんどが卒業後には昔には想像もできなかったほど簡単にポスドクになることが可能になりました。私が大学院にいた頃は、ポスドクは助手になるよりもはるかに難しく、いきなり助教授になるくらいの栄誉だったものです。しかし今は、ポスドクを3年6年と続けても、大学の教員になれる人が何10人に1人あるいは100人に1人と言われるような事態に至っています。
もちろん、その中である数の人は確実に研究者として大学や研究所に就職できているわけですけれども、私達の時代のように「しばらく我慢すれば誰でもそうなれる」ということは絶対にないのです。
そういう中で、たとえ100人に1人という難関でも、絶対にこの状態から抜け出して研究者として独立した研究室を持つのだという自信と意志を持って、大学院に入学した時あるいはする前から脇目もふらずにあらゆる選択肢を無視して研究に打ち込む人は素晴らしいと思いますし、ある意味でそれは科学の世界の宝だとも思います。
しかし、残りの99人はどうなるのでしょう。
私は研究の後継者を育てるという意味で、比較的早い時期から「エリート教育」をすることは悪くないと思う立場です。しかし、その為にはエリート教育をされた人間の、できれば2人に1人くらいあるいはせいぜい3-4人に1人くらいは研究者として受け入れるキャパシティを社会が持っていることが前提になると思います。残念ながら、こんなに大学院生・ポスドクが多くなってしまったらまた別の教育システムが必要になっているというのが現状だと言わざるをえません。
おそらく、島岡さんは敢えて「悪人」になることを選んで議論を活性化させようと思われたのだとおもいますし、このエントリー自体がそうした「こころ」を持ったものだと思いますので、私の意見も島岡さんに対するものというよりは、そういう意見があり得るということに対するものだということでご了解いただけると幸いです。
そんな中で、私がRSSで購読させていただいている注目ブログのひとつ「ハーバード大学医学部留学・独立日記」の島岡さんが参入してくださいました(#)。日頃から、尊敬して読んでいるブログで、自分の記事が取り上げられるとドキッとするものですが、大変にありがたく思いました。(これからも、よろしくお願いします。^^;)
#ご本人はあえてトラックバックをなさらなかったのか、あるいは最近エキサイトの調子が悪いせいなのかはわかりませんが、世界に公開されたブログですので、勝手にとりあげさせていただきます。・・・・・今、気が付いたのですが、maruさんのところにはちゃんとTBされていますので、私のところはサーバーが悪かったのだろうと思います。スミマセン。
さて、島岡さんの反論は「理系のキャリアの選択肢が狭いことは悪いことか」という、ご本人もおっしゃっておられるように、ちょっと無理してバランスをとるための議論になっています。
理系のキャリアの選択肢が狭いことは本当に悪いことか?
一般論として、将来に向かっての選択肢が狭いよりは広いほうが良いに決まっているのですが、島岡さんがあえておっしゃっているのは、研究者というプロになりたいのなら、退路を断って真剣に打ち込まなくては、その実現はあり得ないだろうという正論です。
ある人が持っている資源(経済力、能力、時間、エネルギーなど)には限りがあるのだから、選択肢を広げようとしてそれらを投入するよりは、はっきりとした目標に向かって集中的に努力したほうが成功する確率は高くなるだろうということは、おっしゃる通りだと思います。
ちょっと化石時代の話をさせてください。
私達が大学院に入った頃は、大学院に行くということはほかのほとんどのキャリアを放棄することと同義でした。私も、大学院にはいる時に指導教員の方から、「研究者(大学教員)になれる可能性はほとんどなく、他になれるものも高校教員くらいだからね」と言われました。就職も良かったですし、民間の方が大学の先生よりもはるかに給料もよかったので、大学院に進学する人は少なかったですし、のんびりとした時代で、博士号も5年で取得する人などほとんどおらず、平均で7-8年、たまに5年でドクターをとると「スゴイ」と言われた時代です。しかし、私と一緒に大学院にはいった7名くらいは、その全員が国公立の教員になりました。先輩達を見ていても、何年かは無給のまま奥さんに養ってもらっていた方もたくさんいましたが、それでも多くの方々はどこかの大学の教員になれたような気がします。もちろん、行方知れずになった方もいらっしゃいますし、高校の先生になった方もたくさんおられます。それでもなお、35歳を過ぎても無職などという人は皆無と言っても良い時代だったと思います。
そして今、理系大学卒業生のほとんどが大学院に進学する時代になり、多くの人が5-6年で博士を取り、そのほとんどが卒業後には昔には想像もできなかったほど簡単にポスドクになることが可能になりました。私が大学院にいた頃は、ポスドクは助手になるよりもはるかに難しく、いきなり助教授になるくらいの栄誉だったものです。しかし今は、ポスドクを3年6年と続けても、大学の教員になれる人が何10人に1人あるいは100人に1人と言われるような事態に至っています。
もちろん、その中である数の人は確実に研究者として大学や研究所に就職できているわけですけれども、私達の時代のように「しばらく我慢すれば誰でもそうなれる」ということは絶対にないのです。
そういう中で、たとえ100人に1人という難関でも、絶対にこの状態から抜け出して研究者として独立した研究室を持つのだという自信と意志を持って、大学院に入学した時あるいはする前から脇目もふらずにあらゆる選択肢を無視して研究に打ち込む人は素晴らしいと思いますし、ある意味でそれは科学の世界の宝だとも思います。
しかし、残りの99人はどうなるのでしょう。
私は研究の後継者を育てるという意味で、比較的早い時期から「エリート教育」をすることは悪くないと思う立場です。しかし、その為にはエリート教育をされた人間の、できれば2人に1人くらいあるいはせいぜい3-4人に1人くらいは研究者として受け入れるキャパシティを社会が持っていることが前提になると思います。残念ながら、こんなに大学院生・ポスドクが多くなってしまったらまた別の教育システムが必要になっているというのが現状だと言わざるをえません。
おそらく、島岡さんは敢えて「悪人」になることを選んで議論を活性化させようと思われたのだとおもいますし、このエントリー自体がそうした「こころ」を持ったものだと思いますので、私の意見も島岡さんに対するものというよりは、そういう意見があり得るということに対するものだということでご了解いただけると幸いです。
stochinaiさん、
いつも興味深く拝見しております。ご想像のとおりトラックバックを試みましたが、システムにレジェクトされたようです。失礼いたしました。
「悪人」であるつもりはありませんが、「プロフェッショナル・アカデミック研究者の道は、長く、狭く、精神的・経済的に苦しいことも多いかもしれないが、そのDipを乗り越えれば、Independent Thinkerとしての素晴らしいアカデミック・フリーダムが得られる」という本来最初に伝えられるべきオーセンティック(=きれい事)なメッセージを伝える「専門バカ」として、(自分を含め)「プロフェッショナルを目指す者」を勇気づけたかったいうのが私の意図です。
「リレーエッセイ」が建設的で、理論的なディスカッションにつながり、研究者を目指すひとが勇気をもてるようなメッセージを伝えられるよう、続けたいですね。
いつも興味深く拝見しております。ご想像のとおりトラックバックを試みましたが、システムにレジェクトされたようです。失礼いたしました。
「悪人」であるつもりはありませんが、「プロフェッショナル・アカデミック研究者の道は、長く、狭く、精神的・経済的に苦しいことも多いかもしれないが、そのDipを乗り越えれば、Independent Thinkerとしての素晴らしいアカデミック・フリーダムが得られる」という本来最初に伝えられるべきオーセンティック(=きれい事)なメッセージを伝える「専門バカ」として、(自分を含め)「プロフェッショナルを目指す者」を勇気づけたかったいうのが私の意図です。
「リレーエッセイ」が建設的で、理論的なディスカッションにつながり、研究者を目指すひとが勇気をもてるようなメッセージを伝えられるよう、続けたいですね。
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う、このエントリー、言及が間に合いませんでした(汗)
とりあえず、今日遅く、あるいは明日にでも、ブログでバイオのアーカイブリンク集をどこかに作っておこうと思います。
何はともあれ、「議論のための議論」に終始するのではなく、行動が伴った議論をしていきたいと思います。
とりあえず、今日遅く、あるいは明日にでも、ブログでバイオのアーカイブリンク集をどこかに作っておこうと思います。
何はともあれ、「議論のための議論」に終始するのではなく、行動が伴った議論をしていきたいと思います。
島岡さん、コメントありがとうございました。おっしゃることに深く共感すると同時に、そのような「きれい事」を食べて生きていくことのできない現実をもまた厳粛に受け止める日々を送っております。
今回の「リレーエッセイ」は、ひょっとすると大きなうねりとなって「現実」へ働きかける力になりそうな「予感」もあります。
buu*さん、アーカイブリンク集とともに、トラックバックセンター(議論に参加した全員が、そこにトラックバックあるいはコメントによる告知を集める)を作っていただけないでしょうか。
Junさん、初めまして、よろしくお願いします。今回の議論の中で、いろんな壁が低くなってくれるといいですね。
今回の「リレーエッセイ」は、ひょっとすると大きなうねりとなって「現実」へ働きかける力になりそうな「予感」もあります。
buu*さん、アーカイブリンク集とともに、トラックバックセンター(議論に参加した全員が、そこにトラックバックあるいはコメントによる告知を集める)を作っていただけないでしょうか。
Junさん、初めまして、よろしくお願いします。今回の議論の中で、いろんな壁が低くなってくれるといいですね。
お久しぶりです。黒影です。
一連のリレーエッセイのリンク集を作りましたので、アーカイブとしてお使いください。
もし参加者の方々が賛成されるならTBセンターとして活用していただいても構いませんので。
幻影随想: バイオ リレーエッセイ
http://blackshadow.seesaa.net/article/45529118.html
一連のリレーエッセイのリンク集を作りましたので、アーカイブとしてお使いください。
もし参加者の方々が賛成されるならTBセンターとして活用していただいても構いませんので。
幻影随想: バイオ リレーエッセイ
http://blackshadow.seesaa.net/article/45529118.html
黒影さん、お忙しい中をありがとうございました。トラックバックセンターを買って出ていただけるのはとてもありがたいお申し出です。
ここからは、皆さんへの呼びかけです。
私を含め、今回の議論に関連したブログ・ポスト、ブログ・エントリーを書いた場合には、すべてを上記のサイトにトラックバックあるいはコメントとして集約するようにしましょう。
ここからは、皆さんへの呼びかけです。
私を含め、今回の議論に関連したブログ・ポスト、ブログ・エントリーを書いた場合には、すべてを上記のサイトにトラックバックあるいはコメントとして集約するようにしましょう。
by stochinai
| 2007-06-20 22:18
| 科学一般
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Comments(6)