5号館を出て

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カブトエビの産卵

 10日前に「大きくなったカブトエビ」という報告をしました。それから10日経ちましたが、驚くほど巨大化して、昨日は卵まで産みました。これが、1週間前のカブトエビです。
カブトエビの産卵_c0025115_23304559.jpg
 下が、今日のカブトエビのムービーです。比較のためのおいた1円玉と比べると、長さで倍になっていますので、体積的には10倍くらいになっているように見えます。



 卵は、カブトの後端の「腰」に当たるところに左右1対の袋の中に赤みがかった卵がはいっているようです。背中側から見ると殻の陰になって良くわからないのですが一瞬仰向けになった時にちらっと見えたと思いますがあまり良く見えなかったという方のために、大サービスです。ずっと仰向けを続けているカブトエビの動画が撮れましたので、こちらも公開します。なかなか、貴重な映像ですよ。

 「腰」のあたりに、左右にぶら下がっているのが良くわかると思います。



 カブトエビの卵は一般に乾燥に強いだけではなく、乾燥しないと孵化しないという「伝説」もあるのですが、ネットでこんな論文を発見しました。
Laboratory studies of factors affecting egg hatch of triops longicaudatus (LeConte) (Notostraca : Triopsidae)
Hydrobiologia, Volume 63, Number 2 / April, 1979, 145-152

 北大内からだと全文のpdfが読めるのですが、読めない方のためにアブストラクトの一部を引用しておきます。
Egg hatch was greatest (78.33%) for eggs not previously desiccated. A reduction in numbers hatched occurred as the relative humidity at which they were dried decreased.

No hatch occurred until temperatures were above 14°C. A constant 29°C significantly inhibited hatching.

As little as 13 mm of flooded soil covering the eggs prevented them from hatching for 14 days. Eighteen percent hatch resulted when soil and eggs were redistributed to a 1 mm soil layer.
 これによると、俗説とは異なり卵は乾燥させないのがもっとも孵化率が高いということです。また、水温は14℃以上が必要で29℃では高すぎて孵化しなくなります。また、卵の上に土があると孵化が妨害され、たった1ミリの土でも孵化率が18%にまで低下し、13ミリ土に埋まるともう孵化しなくなるということが書いてあります。

 というわけで、この卵が単為発生することを期待して、乾燥させずに発生させてみることにします。乞う、ご期待。

 こちらにちょっと先輩カブトエビの、エビカップちゃんがいます。
Commented by ぜのぱす at 2007-06-27 05:04 x
卵からわずか3週間でもう卵ですか。generation timeが随分短いですね。単為発生して呉れたら遺伝学の材料として使えそう。親に全部喰われてしまう前に、孵化したての幼生を上手く分ける工夫が必要ですね(笑)。
by stochinai | 2007-06-26 17:20 | 生物学 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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