5号館を出て

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日経BTJメールマガジンより 【大学院生やポスドクの奴隷解放】

 日経バイオテクノロジージャパンで配布しているメールマガジンがあります。本来は有料にしたいのかもしれませんが、「BTJ/HEADLINE/NEWS登録者数8万人突破 先着9万人まで無料拡大」中なのだそうで、事実上無料だと思います。こちらから無料登録できるようですので、ご希望の方はどうぞ。と宣伝してあげたので、記事の引用も許してくれるでしょう(^^;)。

 さて、このBTJ/HEADLINE/NEWSから配信されるニュースはあまりにも膨大な量なので、とても全部に目を通す余裕はないのですが、メルマガ巻頭に定期的に載るウェブマスターの宮田満さんの書かれる歯に衣着せぬ論説はとてもおもしろく、貴重な情報が載っていることも多いので。愛読しております。今日(BTJ /HEADLINE/NEWS 2007/07/09 RANKING MAIL 第1009号)は、宮田さんが文部科学省の「科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業」の第二回の連絡協議会に参加したレポートが載っています。

 協議会に参加しているのは、06年度採択7大学と理化学研究所、97年度採択の2大学、日本物理学会、産業技術総合研究所だそうです。いくつか宮田さんの文章を引用させていただきます。
 大学や公的研究機関も、実は理系の大学院進学率の急落で、さすがに危機感を持ったようです。

 (今必要なのは)いわば、大学院生やポスドクの奴隷解放です。

 ポスドク1万人計画の後遺症によるキャリアのミスマッチが終息した後にも、きちっと独立できる研究者として大学院で教育できない問題は残ります。この問題は文部科学省と安易に大学院重点化を受け入れた教授会に、大きな責任があると思います。

 やはり大学教授、主任研究員の再教育がどうしても必要です。また、文部科学省も将来のなーんちゃって大学院生の輩出を防ぐためにも予算措置を検討すべきだと思います。
 このあたりまでは、このサイトでの議論でも出ていたこととあまり変わらないと思うのですが、衝撃の事実が明らかにされています。
 今回の会議で、理研が明らかにしましたが、たんぱく質3000プロジェクト終了(07年3月)して今までに、職を見つけられていないポスドクが30人以上存在しています。客員研究員として理研は身分は保証していますが、無給であり、かなり厳しい状況です。プロジェクト終了の結果、240から250人のポスドクを含め、研究リーダまで全員解雇されました。
 ということは、200人以上の人は、再雇用先を見つけているということになると思います。私にはその数字が「意外と再就職ができる」と思われたのですが、甘いでしょうか。さらに、今年度末にはゲノム科学総合研究センターの改組に伴い、全員解雇が予定されていると書いてありました。今度は、どうなるのでしょう。

 宮田さんの生活スピードは私の10倍くらいあると感じられるので、こうしたすごい情報を前にしてもにわかにはコメントもできないのですが、すでに何かが始まってしまったのではないかということは感じられます。

 宮田さんは、国立大学法人では教員も首にできるのだから、「奴隷解放」に協力しないものにはそうした圧力をかけるべきだというようなことも書いておられます。
 教官の研修への参加や教官の責務に社会に通用する人材の教育を職務規定の中に盛り込み、大学院生やポスドクからの訴えを受け止める機関を大学や研究所の中に設置し、さらに大学教授や主任研究員の教育に対する評価も大学院生やポスドクが行う体制も敷く必要があると考えます。
 これには基本的に賛成したいと思いますが、私が直接見聞きした中にも、現に今明らかに存在しているそういう理不尽な教授を辞めさせることができないという現実もあるようで、実現はそう簡単ではなさそうです。

 どこから手をつけていったものでしょうね。
by stochinai | 2007-07-09 20:46 | 科学一般 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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