5号館を出て

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新潟地震に人為が関係しているという説

 まずは、マスコミと言って良い大手の報道を引用したいと思います。昨日、サンケイのZAKZAKの載っていたものです。

 新潟地震“人造”だった!? 近くでガス田注水作業
 地下断層への水浸透が引き金に?


 タイトルを見た時の第一印象は「まさか!」でしたが、主張しているのが懐かしい名前の元北大教授の島村英紀さんということで、とりあえず読んでみようと思いました。
 「両地震の震源からほど近いところあるガス田開発では、“水圧破砕法”といって高圧の水を注入して岩を破砕していた。そのことが2回の地震の引き金になった可能性はある」と指摘するのは、地震学者の島村英紀氏。
 地下深くの断層面にまで大量の水が浸み込むと地震が起こりやすくなることは意外に、地震学の「常識」ではあるようです。

 東大地震研の加藤照之教授が「ダムを建設して水を貯めると、周辺で小さな地震が起き始めることは知られています。地下深くの断層面まで水が浸み込むことで、滑り出しの“潤滑剤”になると考えられています」と、コメントしています。

 歴史上の事実として、数々の実例が挙げられています。
 ニューディール政策で有名な米フーバーダムでは、1935年に貯水を始めた翌年から地震が増え、40年には過去最大のM5の地震が起きた。アフリカ・ジンバブエとザンビア国境のカリバダムでも貯水が始まってから地震が急増、満水になった63年にM5.8の地震が起きた。このほか、エジプト・アスワンハイダムなど世界各地の巨大ダムで、貯水後に地震が起きているという。貯まった水自体の水圧で地下深くへ浸透していると考えられるが、井戸への高圧注水も同様の効果をもたらすようだ。1960年代、米デンバーの軍需工場で深さ約3600メートルの井戸を掘り廃液を注入したところ、注入量や水圧と地震の発生が連動していることが観測された。
 島村さんの主張では、ガス田の井戸で大量の水を注入する水圧破砕作業が「南長岡ガス田」で行われたことが引き金になった可能性があるということのようです。

 ただし、加藤さんは意見が違い「今回の中越沖地震は、広域での応力によって発生したとみられている。震源は油田とは離れており、個人的見解としては、直接の影響はなかった、つまり、誘発地震ではなかったと思う」とおっしゃっています。

 私には、どちらの意見が正しいのか判断する能力がないのですが、地震学者でさえ今回のように、立て続けに同じようなところで地震が起こるとは思っていなかったと言っていました(テレビで見ました)ので、真面目に検討することは無駄だとは思えません。

 もう一つ、「地震と長岡の地下への液化ガス圧入との関連性について考察する人」という記事が「低気温のエクスタシーbyはなゆー」さんのところにありました。残念ながら元記事へのリンクと思われるアドレスがエラーになるので、先をたどれないのですが、この地図を見ると、確かに今回の地震と3年前の中越地震の震央と今回の地震の震央をつなぐ線の真ん中あたりに液化炭酸ガスを地中に圧入する実験をしてきた長岡市深沢の帝国石油サイトがあるのです。

 同じサイトに、関連情報を集めたエントリーがもうひとつ書かれています。
 今回の地震と長岡の地下にCO2を圧入したこととの因果関係は?

 若干、トンデモの臭いがしないわけでもない議論ですが、少なくとも私も知っている「地震学者」が議論に参加していることもあり、気になりましたので記録としてエントリーに残しておきたいと思います。

 阪神淡路大震災の時に、オウム真理教が自分たちは人工的に地震を引き起こして兵器にすることができるなどと言っていたのを聞いた時には、何をアホなことをと思ったものですが、人間の技術力は地層に働きかけることができるくらいのパワーを持ち始めていることだけは事実のようです。

 自分たちの力を過小評価せず、逆に自然の復元力を過大評価してはいけないということは、すでに環境問題などで学んだはずのことですので、過ちは繰り返したくないものです。
Commented by ecochem at 2007-07-21 08:52 x
地質関係のデータ(ガス田関連も)は,
・新潟県中越沖地震について(産総研)
http://www.gsj.jp/jishin/niigata_070716/index.html
で参照できます。またCO2地中貯留は以前NHK教育TV「サイエンスZERO」でも取り上げていました。
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp64.html
高校の参考書などでも紹介する技術ですが,CO2発生削減の努力をせずにいろいろやるのは慎重であってほしいと考えています。人知の及ぶところは限界があるのですから。
※一昨日地震見舞いで柏崎を往復しましたが,高速道路の状況からも地震のエネルギーを感じました。段差で渋滞し,原発の横を通過するのに長時間かかります。
Commented by GORO at 2007-07-21 18:20 x
とても興味深い話で、勉強になりました。でも、加藤教授が仰っているとおり、油田と震源が離れている限り、今回の地震については私も注水との関連性は低いのではないかと思います。

また、こんな興味深い記事もあります。(読売新聞より)
http://osaka.yomiuri.co.jp/shinsaimirai//sm70717d.htm

要は、日本列島の下に潜り込んでいく太平洋プレートとフィリピン海プレートに押されるような形で、新潟から神戸にかけての幅50~200kmのエリアに歪みが集中しており、それが新潟中越地震、能登半島地震、そして今回の中越沖地震を起こしているのではないかという仮説です。この説にはとても説得力があるなぁと思いながら読んでいました。

しかし、この説が仮に正しいとすれば、今後もこのエリアで大きな地震が発生する可能性は高いわけですよね。今後の研究の成果に期待したいところです。
Commented by stochinai at 2007-07-21 21:22
 地震に関して、まだまだ知らないことがたくさんあるように思われます。とりあえず研究を進めつつ、住んでいる家や原発など各種の建造物の耐震性を増すことが緊急に必要なことではないでしょうか。
Commented by ecochem at 2007-07-22 21:35 x
記事の引用を含め現地情報を少し書いてみました。
・新潟県中越沖地震を見据えて(こども省)
http://d.hatena.ne.jp/ecochem/20070722/1185070857
Commented by 節操のない者 at 2019-03-14 00:13 x
>若干、トンデモの臭いがしないわけでもない議論ですが、

いえ、若干どころか激しくトンデモです。
注水による人工地震は世界規模で研究されていますが、いずれも、注水地点から数kmの範囲で注水期間中に中小規模の群発地震が起きることを示唆しています。
注水地点から数10kmの範囲、注水開始から数年後(あるいは注水を停止してから)大規模の非群発地震が起きるとする科学的な研究はありません。
二酸化炭素地下貯留が新潟中越地震等の原因とする主張は、科学的な研究結果(下図)と一致しません。

http://taste.sakura.ne.jp/static/farm/science/img/earthquake_ccs_magnitude1.png

ちなみに、「石田地震科学研究所・所長」は地震爆発論(笑)なるトンデモ理論を提唱している方です。
by stochinai | 2007-07-20 22:46 | 科学一般 | Comments(5)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai