2007年 09月 06日
ほんとうに今まで知られていなかったのだろうか
あちこちのニュースで取り上げられているので、敢えてここで取り上げなくても良いと思ったのですが、ウツボの喉に中にもう一つ獲物にかみついて飲み込むための顎があったことがわかったという論文が出ました。
図4(FIGURE 4. Functional morphological model of pharyngeal jaw movement in M. retifera)の一部を引用させてもらいましょう。赤く描かれた筋肉がこの「顎」を動かすようです。

エイリアンの口みたいというのは誰が見ても思うことですが、こんな肉眼で見てもはっきり見えるような大きなものが、ほんとうに今まで発見されていなかったということの方が不思議だと思いました。
こちらに動画もあります。
Nature 449, 79-82 (6 September 2007) | doi:10.1038/nature06062; Received 26 March 2007; Accepted 3 July 2007
Raptorial jaws in the throat help moray eels swallow large prey
図4(FIGURE 4. Functional morphological model of pharyngeal jaw movement in M. retifera)の一部を引用させてもらいましょう。赤く描かれた筋肉がこの「顎」を動かすようです。

エイリアンの口みたいというのは誰が見ても思うことですが、こんな肉眼で見てもはっきり見えるような大きなものが、ほんとうに今まで発見されていなかったということの方が不思議だと思いました。
こちらに動画もあります。
これって、一部の地域のウツボにだけ存在するアノマリじゃないのですか?人間でも、1割以下の人にだけ存在する筋とか骨があったりしますし。
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もしそうだとしたら、調べればすぐわかるはずなので、ウツボが手に入る全国の皆さんにチェックしてもらいたいところです。日本のウツボは違うぞ、ということになったら、少なくともホットニュースになりますね。

研究室の周りの人に聞いてみました。
実際にはこの二つの「顎」は前後に隣接しているわけではなく、間に普通の鰓弓がいくつかあります。これまでは「ウツボって、後のほうの鰓弓が一個、太くなってて、歯みたいなのもついてるよね」と一般的に認識されていたみたいです。
というわけで、これは単に、後方の鰓弓が顎に似た形に変わったものであり、もちろんhomeotic transformationなどではないようです。
書き方次第でNature、ですね。
実際にはこの二つの「顎」は前後に隣接しているわけではなく、間に普通の鰓弓がいくつかあります。これまでは「ウツボって、後のほうの鰓弓が一個、太くなってて、歯みたいなのもついてるよね」と一般的に認識されていたみたいです。
というわけで、これは単に、後方の鰓弓が顎に似た形に変わったものであり、もちろんhomeotic transformationなどではないようです。
書き方次第でNature、ですね。
rkさん、ありがとうございました。
とても納得できる話です。でもそうなると、これはNatureのreferee制度の「甘さ」を示すエピソードでもあるような気がします。まあ、Natureの好きそうな話ではありますが、、、、。
とても納得できる話です。でもそうなると、これはNatureのreferee制度の「甘さ」を示すエピソードでもあるような気がします。まあ、Natureの好きそうな話ではありますが、、、、。

文脈では、ウツボの鰓弓のうち後方のもののひとつが顎みたいになっているのは知られていたが、これがものを飲み込むのに重要な役割を果たしていることを示したということのようです。で、このような機能的な革新が実は既存のもの(=後方の鰓弓)をちょっと修正することで出来上がり、この動物の適応に貢献していると。
一見evodevoの論文?と思ってしまいますが、発生システムの大幅な改変が行われているという論文ではないんですね。
ある分野での価値はあるでしょうけど、「うまいことやったな〜」という印象はだいぶありますね(^^)
一見evodevoの論文?と思ってしまいますが、発生システムの大幅な改変が行われているという論文ではないんですね。
ある分野での価値はあるでしょうけど、「うまいことやったな〜」という印象はだいぶありますね(^^)

なんだかひどく書かれてるので、フォローでもと思い書き込みしています。
この論文は、「ウツボの喉に中にもう一つ獲物にかみついて飲み込むための顎があったことがわかったという論文」ではなく、以前から知られていた(?)後方の顎のウツボの捕食における重要性を発見した論文ですよね。「書き方次第でNature」というコメントもありますが、その「書き方」こそが、研究者としての味の出るところじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか?何を見つけても、その発見の意義、重要性を示すことができなければ、「あっ、そう」で終わってしまいます。より良いresultsを揃えられることは、もちろん研究者として重要なタレントの一つですが、それだけでなく、同じresultsからより人を引きつけるようなdiscussionを展開できることも、研究者としての重要なタレントであると思います。
第二の顎がウツボの捕食時にダイナミックに動き、獲物の肉を引きちぎるために特殊化した構造であること(他の生物に見られない獲得形質)を示したのは、けっこう面白いと思うんですが、、、
この論文は、「ウツボの喉に中にもう一つ獲物にかみついて飲み込むための顎があったことがわかったという論文」ではなく、以前から知られていた(?)後方の顎のウツボの捕食における重要性を発見した論文ですよね。「書き方次第でNature」というコメントもありますが、その「書き方」こそが、研究者としての味の出るところじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか?何を見つけても、その発見の意義、重要性を示すことができなければ、「あっ、そう」で終わってしまいます。より良いresultsを揃えられることは、もちろん研究者として重要なタレントの一つですが、それだけでなく、同じresultsからより人を引きつけるようなdiscussionを展開できることも、研究者としての重要なタレントであると思います。
第二の顎がウツボの捕食時にダイナミックに動き、獲物の肉を引きちぎるために特殊化した構造であること(他の生物に見られない獲得形質)を示したのは、けっこう面白いと思うんですが、、、
いや、決して論文の内容がおもしろくないということではなく、動物や植物をみていると「このくらいの」おもしろさの現象ならば、毎日のように見つかっていると思うのに、なんでこれが「あのNature」なの?という素朴な疑問だと思います。
もちろんおっしゃるとおり「何を見つけても、その発見の意義、重要性を示すことが」苦手なのが日本の研究者だと言われているので、我々としてもこの論文の手法を大いに学ぶべきだろうと思います。論文だけじゃなくて、ムービーや新聞、雑誌、ウェブなどを駆使したサイエンスコミュニケーションとしても学ぶべきところは多いと感じています。
コメント、ありがとうございました。
もちろんおっしゃるとおり「何を見つけても、その発見の意義、重要性を示すことが」苦手なのが日本の研究者だと言われているので、我々としてもこの論文の手法を大いに学ぶべきだろうと思います。論文だけじゃなくて、ムービーや新聞、雑誌、ウェブなどを駆使したサイエンスコミュニケーションとしても学ぶべきところは多いと感じています。
コメント、ありがとうございました。
by stochinai
| 2007-09-06 21:36
| 生物学
|
Comments(7)