5号館を出て

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過保護では?

 いつも、いろいろな情報をいただいている「大学プロデューサーズ・ノート」さんのところで、驚きのエントリーに接しました。

 学生ごとに履修計画を作成する 福井大学大学院

 文科省の「大学院教育改革支援プログラム」に採択された福井大学の「学生の個性に応じた総合力をはぐくむ大学院教育」の内容が、「複数の教授らが学生1人1人に合った個別カリキュラムを作成する取り組み」なのだそうで、博士前期課程(修士)が対象だそうです。また、プログラムの中で「学生がテーマを探し、教授らの指導のもとで学習を進める「プロジェクト型学習」も導入。個人やグループで必要な実験・調査を行い、リポートにまとめて発表する」ということもやるのだそうです。

 でも、どう考えてもこれは、学部の低学年にやるべき教育のように思えてなりません。

 学術振興会の採択理由は、これが「学生の個性に応じた総合力を育む大学院教育」であるという評価からのようです。

 高校から大学に入り立ての学生は、自分で履修計画を立てるというところで、かなり苦労するのですが、それでも半年経つとほとんどの学生が理解して、学部に進学するころにはかなり賢い履修計画を立てるようになるものです。逆にあまりにも賢すぎて、もうちょっと「意欲」を見せてほしいと思うこともありますが、履修計画などというものはその程度のものだと思っていました。

 それが、大学院生1人に対して教授らが3人もついてカリキュラムを作るというのは、確かに親切だとは思いますが、ほんとうにいいんでしょうか。

 ここまでやってもらって、学生はこの先自分のキャリアを自分で切り開いていくことができるのでしょうか。
Commented by toshizo at 2007-09-12 03:34 x
これは確かに過保護なような気がします。昔の話を言うのもなんですが、自分は学部3年の1月に研究室に配属され教授に「卒検は○○の研究だから」と論文リストを渡されて、「何を主たるテーマにするか提案しなさい」という感じでした。ろくすっぽ分かってなかったわけですから数ヶ月は大変でした。でも、結局そのおかげで4年のうちにいくつかの有名な米国の論文誌に論文を教授と5,6報ほど出すことができました。M2までで十数報です。厳しかった教授にはとても感謝しています。ところが、今はその教授は神様のように優しいのだそうです。この間会ったら「君らも頭悪かったけど頑張って自分で進めたからなぁ。今は頭はちょっとは良いのかもしれないけど(教授あのね・・・)、言ったことしかやってくれんのだよ。手取り足取りじゃないと進まないんだよね~。君ら馬鹿だったけど放っておいても計画たてて結果出しきたからな~(あのなぁ教授・・・)」って感じです。

Commented by 邪推 at 2007-09-12 11:07 x
指導教員一人に任せておくと、とんでもない放置・勘違い指導やハラスメントが行われることもあるので、3人体制なのでは?
Commented by 大学教員 at 2007-09-19 23:31 x
邪推さまの意見に賛同します。私はアメリカの大学院に留学しておりましたが、教員一人だけが学生の状況を握るなど、あちらではあり得ません。

またこちらのエントリを拝見するかぎり、日本の大学教員というのは、「指導」の意味をまだまだ浅く捉えているように思えてなりません。
「すべてを学生の代わりにやってあげる」のと、適切に履修計画が立てられるようにコーチングを行うのとはまるで違います。GPのサイトを見たところ、福井大学大学院の計画はどちらかというと後者を目指しているように私には思えるのですが。コーチング=過保護なのでしょうか。
Commented by 大学教員 at 2007-09-19 23:31 x
そもそも、私が知る限りで言うと、日本の大学院レベルのシラバスはひどいもので、手抜きと感じられるものばかりです。これから学問を深めようという学生にとって、その科目が学術的にどのような位置づけにあるかなど、わかるはずもありません。ましてや、他大学から入学する院生もいるわけですし。多くの日本の大学教員は、そのあたりをあまり詳細に捉えていない、都合の悪い部分を深く考えていないだけでしょう。

個人的には、「結果的に」大学院修了時に、適切な学術的知識を身につけ、自分で研究計画を作成する能力を身につけていることが大事だと考えます。教育上有用であれば、コーチングという手段を用いることに抵抗はありません。
Commented by 大学教員様へ at 2007-09-21 00:57 x
> 私はアメリカの大学院に留学しておりましたが、教員一人だけが学生の
> 状況を握るなど、あちらではあり得ません。

どのレベルの大学へ、どの様な形で留学され、どんな経験をされたかを書かないと、一方的な「日本は悪い論」になる気がします。アメリカは広く、様々なレベルの大学があり、指導の仕方もいろいろですから。。。

大学院重点化以降は、日本の博士取得者はレベル低下が甚だしいです。このエントリを書かれたstochinaiさんが博士号を取得された頃は、日本人ポスドクはアメリカでは引っ張りだこで、力があると言われていました。それを考えると、必ずしも日本の大学院の指導が悪いとは思えないのです。

自分も、海外ポスドク、海外研究職を経験しましたが、日本の大学院でここまで行うのは、やりすぎかなと感じました。
by stochinai | 2007-09-11 22:35 | 教育 | Comments(5)

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