2007年 10月 07日
連休DVD劇場: It is for me.
学会やなんやで、しばらくゆっくりとDVDを鑑賞する時間もあまりなかったのですが、昨日・今日と久々に2本立てで(といっても一日一本)の週末DVD劇場でした。昨日のものは見ても見なくてもいいハリウッド製の娯楽作品でしたが、こういうことで暇をつぶすということもリラクセーションにはなるものです。
今日は打って変わって、ひさびさのドイツ作品です。『善き人のためのソナタ』(原題 Das Leben der Anderen:他人の生活)は今年のアカデミー外国語賞受賞作品です。いかにもアカデミー賞好みらしい反共産主義映画なのですが、そういう政治的立場を越えて人間の弱さ・強さを素直に描いたいい映画だと思いました。
アマゾン: 善き人のためのソナタ
この映画は、最後に出てくる殺し文句にやられました。映画は誰か(ネタバレになるので書きません)が本を買うシーンで終わるのですが、その時に店員が「贈り物用のラッピングをしますか」と聞かれた時に、「いや、自分のだからいい」と断ります。ドイツ語なので、Neinまではわかったのですが、その後が「It is for me」と英語のように聞こえました。(調べてみると、Nein, es ist fuer mich. となるようです。)
いずれにしても、このセリフでここまで延々と引っ張られた感情が解放されました。この一言で、アカデミー賞が決まったと言っても言い過ぎでないと思われるくらいの、久々に聞いた名殺し文句だと思います。このシーンのためだけに138分というちょっと長めの時間も我慢する価値があります。
この映画は盗聴が主題の映画なのですが、盗聴というものがやる方にとっても危険なものだと思わされます。昔から、「知ることは、愛することだ」という言葉を良く聞きますが、たとえ政敵などが相手でも誰かの盗聴を続けるということは、その人を良く知ることにつながります。そして、たとえ盗聴という手段によってだとしても結果的に相手を良く知ることになってしまうと、相手の行動が理解できるようになり、ひいてはその相手に対して愛のような感情が芽生えても不思議はありません。それは、人だけにとどまらず、芸術や自由主義などという思想にまで及ぶこともあるでしょう。
うかつに他人の生活を深くのぞいたりすると、巻き込まれてしまうぞという教訓でしょうか。
映画の流れ自体はそれほど驚くべき展開ではなく、むしろ予想される範囲内で「淡々と」事が進んでいくのですが、それが逆に現実味を感じさせてくれます。東ドイツという体制の中で、国家からの認可なしには芸術家も生きていけない姿は、日本という体制の中で国家からの庇護なしには生きていけない国立大学の姿が重なって仕方がなかったのは、私の偏見というものでしょうか。
久々にハリウッドのバカ騒ぎから離れてこういう映画を見て、映画というものが持つ力を思い出させてもらったような気がします。機会があったら、是非ともご覧下さい。
今日は打って変わって、ひさびさのドイツ作品です。『善き人のためのソナタ』(原題 Das Leben der Anderen:他人の生活)は今年のアカデミー外国語賞受賞作品です。いかにもアカデミー賞好みらしい反共産主義映画なのですが、そういう政治的立場を越えて人間の弱さ・強さを素直に描いたいい映画だと思いました。
アマゾン: 善き人のためのソナタ
この映画は、最後に出てくる殺し文句にやられました。映画は誰か(ネタバレになるので書きません)が本を買うシーンで終わるのですが、その時に店員が「贈り物用のラッピングをしますか」と聞かれた時に、「いや、自分のだからいい」と断ります。ドイツ語なので、Neinまではわかったのですが、その後が「It is for me」と英語のように聞こえました。(調べてみると、Nein, es ist fuer mich. となるようです。)
いずれにしても、このセリフでここまで延々と引っ張られた感情が解放されました。この一言で、アカデミー賞が決まったと言っても言い過ぎでないと思われるくらいの、久々に聞いた名殺し文句だと思います。このシーンのためだけに138分というちょっと長めの時間も我慢する価値があります。
この映画は盗聴が主題の映画なのですが、盗聴というものがやる方にとっても危険なものだと思わされます。昔から、「知ることは、愛することだ」という言葉を良く聞きますが、たとえ政敵などが相手でも誰かの盗聴を続けるということは、その人を良く知ることにつながります。そして、たとえ盗聴という手段によってだとしても結果的に相手を良く知ることになってしまうと、相手の行動が理解できるようになり、ひいてはその相手に対して愛のような感情が芽生えても不思議はありません。それは、人だけにとどまらず、芸術や自由主義などという思想にまで及ぶこともあるでしょう。
うかつに他人の生活を深くのぞいたりすると、巻き込まれてしまうぞという教訓でしょうか。
映画の流れ自体はそれほど驚くべき展開ではなく、むしろ予想される範囲内で「淡々と」事が進んでいくのですが、それが逆に現実味を感じさせてくれます。東ドイツという体制の中で、国家からの認可なしには芸術家も生きていけない姿は、日本という体制の中で国家からの庇護なしには生きていけない国立大学の姿が重なって仕方がなかったのは、私の偏見というものでしょうか。
久々にハリウッドのバカ騒ぎから離れてこういう映画を見て、映画というものが持つ力を思い出させてもらったような気がします。機会があったら、是非ともご覧下さい。
Commented
by
ある教員
at 2007-10-08 13:23
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学会の帰りの飛行機でこれを見ました。重い、地味な話ですが、不思議と飽きない、考えさせるよい映画でした。国立大学になぞらえる、というところまでは考えが及びませんでしたが。
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by stochinai
| 2007-10-07 23:53
| 趣味
|
Comments(1)