5号館を出て

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今ここにいるポスドクをどうする 【追記あり】

 約束通り viking さんが、「今の問題はどうするんだ?」ということについての続編を書いてくださいました。

 ドクター・ポスドク問題への奇策(2):給与水準を引き下げて財源を確保し、代わりに全てのポストを永遠に更改可能とする

【追記:10月9日】viking さんが完結編を書かれました。

 奇策と現実:悪貨は良貨を駆逐する:「コメントアウト」されている文章を読みたい方は、「ソースを表示する」と見えます。

【追記:10月9日ここまで】

 今回も前回と同様の大作なので、是非とも原文をお読みいただきたいのですが、基本的にはポスドクから教授までのすべての研究職を再任可能な任期制にすることと、年齢制限を撤廃すること、降格人事も可とすること、研究者のポストを増やすために給与水準を引き下げることなどが骨子となっています。

 任期制に関しては、さすがに研究者でもある viking さんですから、3年などという非現実的なことではなく、教授クラスで最高が15年、準教授クラスで10年、ポスドククラスでも5年を提案されています。私は、この提案のように大学を含む日本の研究期間のすべてが一斉に任期制を導入するということならば、賛成できます。

 同じように、教授・准教授などのポスト降格もあり得ていいとは思います。また、歳を取ってきて今までと同じように働けなくなったら給料が下がることがあってもいいし、週に3日はこの大学、残りの2日はこの企業というような働き方もあって良いと思います。その事が、結果的にポスドクの方達の働く場の確保につながってポスドク問題が解決するのみならず、正しい大学改革になると思います。

 というわけで、私個人としては viking さんの提案に共感するところが多いのですが、この提案を現実に移そうとする時にさまざまな困難が予測されます。教員の任期制にしても教員のすべてに一斉に適用されてこそ意味があるのに、現実にはそうなりませんでした。一部の大学では原則的にすべての教員となっているところもあるようですが、任期制の趣旨が骨抜きにされ教授や准教授を除き助教やポスドクにのみ任期制を導入したところが大多数でしたので、注意が必要です。

 そのためにも、こうした人事問題の改革のためには、viking さんもおっしゃるように「人事権はラボヘッドではなく、人事関係の事務部局が持つ」ということがとても重要なポイントになります。たとえ教授や准教授にも任期制が導入されたとしても、その教授や准教授の再任などを審査するのが仲間である教授や准教授というのでは、とても公平な人事が行われないだろうという外部からの疑惑に応えることはできないと思います。

 というわけで、「今ここにいるポスドク」の皆さんをどうするということに関して、とりあえず実現可能なポスドク問題対策として私が考えるのは、やはりポスドクの年齢制限の撤廃(というか禁止)がもっとも現実的なのではないかと思います。パーマネントな研究職の絶対数が限られていて、その何倍ものポスドクが存在している以上、一生ポスドクとしてでも研究を続けたいという希望がかなえられる道が確保されていてしかるべきだと思います。ただし、ポスドクという地位が(経済的に)あまりにも心地が良いと流動化の妨げになる可能性もありますので、研究を続けられるポスドクという地位にいる「代償」として、給料は少し安く設定しておいた方がいいのかもしれないと思います。PIになるか、企業の研究職に移ることができれば、より良い生活ができるということであれば、ポスドクに安住しようとする人もそう多くはならないでしょう。

 とまあ、我々が辺境のブログでこうした提案をしてみたところで、それが今すぐに実現するわけもないのですから、まことに心は痛みますが、ポスドクの皆さんはやはり日々自助活動を続けるしかないという状況は変わりません。そうした中で、ポスドクの皆さんへ大々先輩である日々是好日さんからのエール「拝啓博士浪人どの」も寄せられておりますので、是非お読み下さい。

 そして今一度、その中にある「『天は自ら助くる者を助く』を銘とすべし」という言葉を噛みしめ、気分を新たにがんばりましょう。
Commented by ぜのぱす at 2007-10-09 09:18 x
以前、相撲式、と云うのを提案したことがあります。
http://ameblo.jp/xenopus/entry-10036238801.html

vikingさんの考えと(尤もvikingさんの方が具体的且つ細部に渡り述べられていますが)根底にある考えは同じかと思います。そして、関連して、一番の問題は講座制ではないでしょうか?講座制がある限り、無能なtopが下からの吸上げに依って、見かけの業績を出し続ける限り、クビにも降格にもならずに居座り続け得る今の制度が問題だと思います。自分で実験もせず、生dataすら読めない教授は、研究者と呼べるのでしょうか?
Commented by 同感です at 2007-10-09 11:07 x
私も以前、相撲式を周りの人に提唱していました。今は教授が変わったのでそのことを忘れてましたが、久々に思い出しました。本当の意味の大講座制が作れれば良かったんでしょうけど、そして人気のないところには人が集まらなくなるような。
Commented by stochinai at 2007-10-09 11:13
 私も、横綱も降格するというシステムを前提に、相撲方式に賛成です。

 講座制に関しては、自民党の派閥と同じで、既得権益を持っているものは壮大なエネルギーを割いて守ろうとするようです。某大学の某学科でも、組織図では見かけ上の小講座はなくなっているように見えますが、内部では旧態依然とした教授・准教授・助教・技術職員からなる小講座が維持されているところがあります。そして、そこのボスは研究者である必要すらないのが小講座制です。法人化をしても、この壊すことには成功しなかったということです。民営化したならばそれがなくなるのかというと、私大ではもっとひどい独裁体制のところもあるそうなので、問題は日本の学問体制の根本に横たわるものだと感じられます。
Commented by 一言 at 2007-10-09 15:39 x
ううん、どうなんでしょうか?赤ポスの大半は研究職ではなく教育職ですし、雑務も多いですからねぇ。入試業務を含む雑務からも解放されないと、そうした降格システムは無理だと思いますよ。相撲だけ取っていればいいわけではないですし。教授というのは横綱ではなく親方でしょう。
Commented by stochinai at 2007-10-09 17:20
 他の人の意見はさまざまだと思いますが、私のイメージとしてはそういう方は、パートタイマーの研究アドバイザーなどとして「職種移行(格下げではなく)」するのが適当ではないかと思っています。いずれにせよ、講座制を廃止して相撲式にするというのは、従来の大学のイメージを根本的に変えるアイディアなので、今いらっしゃる方や今目の前にある仕事のことを考えると、なかなか頭の切り替えは難しいと思います。
Commented by alchemist at 2007-10-09 17:48 x
今春、准教授、助教が独立できるという制度を導入する時に、当時の事務局長に何度か質問したのですが、独立できるが独立の支援策はなし、というのが大学の現状ということでした。理論系は別にして、実験系は独立するにはそれなりの初期投資が必要です。米国式のtenure trackならばスタートアップ資金も投入されますし、グラント(first award)も何とかラボが運営できるサイズになっています。日本の通常サイズの若手研究、基盤Cあたりではラボのセットアップも独立した運営もかなり厳しいでしょう。その辺のシステム整備をせずに独立すれば良い・・・という議論は難しいのではないでしょうか?
Commented by stochinai at 2007-10-09 18:02
 分野にもよりますが、まったくのゼロからラボを立ち上げるとしたら、数千万円から億の資金でも足りないケースもあるかもしれません。でも、日本の現状はほんとうにお金がないことだけが理由で、こうなっているのでしょうか。お金はあるに越したことはないと思いますが、今あるお金だけでできる改革というものもあり得ると期待しているのですが・・・・。
Commented at 2007-10-09 18:52 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by stochinai at 2007-10-09 21:13
 viking さんが「3部作完結編」を書かれました。

奇策と現実:悪貨は良貨を駆逐する
http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=1289
by stochinai | 2007-10-08 21:27 | 科学一般 | Comments(9)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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