5号館を出て

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豚が原因でE型肝炎

 食を巡る事件です。ウシのBSE、ニワトリのインフルエンザに続いて、ついにブタでも死者が出る「事件」が発生してしまいました。日曜の午後のニュースでは、各社ともかなり大きく扱っています。

 朝日コムでも豚内臓でE型肝炎に感染か 北海道で6人感染、1人死亡 と出ています。

 食物を介した感染症は、原因が細菌(バクテリア)の場合には、いわゆる食中毒と言われ、食べた食物にすでに大量の細菌が繁殖していて、その毒素によって病状が出るものが多く、症状がでるのも食後それほど時間がたたないうちに出ます。

 それに対して、細菌のあるものやウイルスの場合には、食べた食物の中に含まれる菌やウイルスが少量であったとしても、からだの中で増殖してから症状が出ますから、潜伏期が長く、数日から場合にはよっては数週間というものもあり、食べたものとの因果関係がはっきりしないことも多いのです。

 今回の「事件」も、北見の焼肉店で豚の内臓を食べたのが8月だったことが原因ではないかということが、ようやく今になってわかってきたのでしょう。その時、一緒に会食した14人のうち、60代の男性が10月に劇症肝炎で死亡したため、さかのぼって調べたところ6人がE型肝炎ウイルス(HEV)に感染していたことがわかったので、北見の焼肉店での会食が原因ではないかと疑われているということです。

 E型肝炎は劇症になること自体が珍しく、発症しても軽症のことが多いため、それほど問題になったことはないようなのですが、今回は死亡者が出たことと、感染者のうちのひとりが献血をし、その血液の輸血を受けた患者が(2名?)E型感染ウイルスに感染したことがわかったことも、事態が深刻に受け止められている原因のひとつだと思われます。

 今回の原因と言われている豚のレバーなどの内臓は、北海道産のものなのかどうなのかは明らかにされていませんが、食品として流通しているものなので、いずれ販売業者などが特定され発表されると、また大騒ぎになる可能性があります。

 牛肉などはBSE騒動のおかげで、牛の個体ごとに番号をつけて、最終的に小売りされるまでの間、どこから来た牛の肉や内臓なのかが追跡できるシステムができています。問題が起こった動物や農作物でだけ、後追い的にそのような制度をつくるのではなく、今やあらゆる商品を追跡することが技術的(および経済的に)に可能になってきているのですから、この際そのようにしてしまってはどうでしょう。

 すべてのものに番号をつけたとしても、おそらく商品1点に対して数円というような負担ですむような気がしますので、反対する理由はあまり見あたりません。もちろん商品一つに1円の負担増でも、1億点の品があれば1億円かかることにはなります。しかし、売れ行きが落ちてしまうこととの差し引きで考えると利益につながる投資になると思います。それ以外に反対の理由があるとすれば、問題が起こった時にすぐに原因箇所が特定されてしまうことくらいでしょうか。

 昔から豚肉には、ヒトと共通の感染症の原因となるマイコプラズムがあるので、良く火を通すようにと言われて育ってきた我々としては、生焼けのレバーとかましてやレバー刺しなどは言語道断の食べ物だと思っていたのですが、SPF豚などが流通するようになってからは、却って油断するようになってきていたのかもしれません。責任を流通側に押しつけるだけでは、自分の身を守ることはできないということでもありましょう。

 食に関しては、これからも新しい危険が次々と出てきそうで、イヤな予感がする事件でした。
by stochinai | 2004-11-28 17:19 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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