5号館を出て

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高卒テストなんかいらない

 いろいろな記事が出ているようですが、とりあえず共同通信が配信した東奥日報の記事を引用させていただきます。

 「高卒テスト」導入提唱 教育再生会議が素案
 大学の入学定員と志願者が同数になる「大学全入時代」の到来をにらみ、大学進学者の学力を担保するため「高卒学力テスト(仮称)」導入を提唱した政府の教育再生会議(座長・野依良治理化学研究所理事長)の大学入試制度に関する改革素案が18日、明らかになった。テストに合格しないと大学を受験できなくなる仕組みで、高校未卒業者を対象にした現行の高等学校卒業程度認定試験(旧大検)の衣替えも選択肢に挙げた。
 新たな制度を導入することにはまったく意味がないと思います。現在でも大学進学者の学力を担保するために入学試験をやっているのですから、そこでふるい落としていない現行制度の運用に問題があるに過ぎません。

 なぜそうなのかというと、大学院問題と同じく文科省が定員よりも少ない入学生数を許さないからです。国立大学の場合には「許されない」ようですし、私大の場合には補助金が減額されるようです。つまり、明らかに水準に達していない学生を入学させるように文科省が指導していることに問題があるということだけです。
 背景には、昨年に高校の未履修問題が発覚したことも踏まえ、大学進学者の「質」を担保しないと、日本の大学制度が信頼を失うとの危機感がある。ただ受験生の「負担増」に直結するうえ、少子化の中で定員を確保したい大学側の反発も予想され、導入の是非をめぐり大きな論議を呼びそうだ。
 日本の大学制度は昔から信頼されていたわけではありません。昔の企業は、「大学では何も教えなくてもかまわないから、4年間で卒業させてください。そうしたら、我々が教育し直します」と言っていました。入学試験でどこ大学にはいったかということだけが企業の関心事でした。

 今の受験生に負担を増やしたら、彼らはただ単に逃げてより楽なところを選ぶだけだと思います。そして、国立大学は定員を守って入学生を採らなければならないという今の状態を続けるならば、学生の質はどんどん下がるだけです。

 大学生(や大学院生)の質の低下を留めようとするならば、単に入学定員の充足率などという無意味な管理をやめるだけで可能になるでしょう。

 そして、学生や院生が減っても大学に配分される運営交付金を減らさなければ、今の大学および大学院教育の質を改善することにもつながると思います。

 そんな簡単なことが、なぜできないのか不思議でなりません。
Commented by A at 2007-11-20 00:48
確かにどうしようもない新テストですね。大学で面倒見切れないような入学者は大学入試ではねれば済むことですし、重複して行う理由が見当たりません。気になるのはこれを行って「誰が」得をするのかと言うところです。なにかテスト関連業者や天下り法人が潤う気がします。こんなテストを入れるより、学士、修士、博士テストを導入したらどうでしょう。
Commented by inoue0 at 2007-11-20 02:55
センター試験という長い歴史とノウハウがある制度を活用すれば済むことじゃないですかね。あれを資格試験として使えばいい。つまり、履修した全科目について受験を義務付けて、1科目でも50点以下なら、大学受験資格を認めないとか。
Commented by ナオサン at 2007-11-20 08:27
>そんな簡単なことが、なぜできないのか不思議でなりません。
私も常々疑問に思ってきました。
ひょっとすると、どうでもよいけど大卒にしてほしい(学歴だけほしい)という需要がある中で、ふるいにかけて少人数しか採らないと、センセイは楽してるのかぁ、、、という、マイナス評価社会特有の感情(妬み)があるからかと、感じます。
Commented by miw at 2007-11-20 12:37
単に予算枠の問題ではないでしょうか?
いま、校費は学生一人当たりで計算されてきてるから、
実際の人数がへると、予算枠がへって、次年度からへっちゃうから、という、
春先の道路工事とおなじ論理?ではないでしょうか?

学生定員でない算出方法があればいいのかな?
Commented by A at 2007-11-20 16:24
ふと思ったのですが、これはいわゆるレベルの低い大学を淘汰する戦略なのかも知れません。
 例えば高卒テストの合格ラインをセンター試験6割か7割くらいまで引き上げれば、自然と上の大学を目指せる人口だけが濃縮されますから、普通に考えれば、皆上位校を受験し、下位の授業料も高いような大学には誰も入らなくなりますね。これは上位と下位の大学の入学者数に激しい格差を作り出すでしょう。場合によってはと言うか、かなりの確率で入学者がほとんどいない大学も出てくるのではないでしょうか。
 これによって大学の淘汰が一気に加速すると、4、5年のうちに一気に50校くらいまで減るかも知れませんね。これは恐るべき妙案なのかも知れません。
Commented by apj at 2007-11-20 22:37
どうでもよいけど高卒にしてほしいというニーズが、高校教員に不必要に大きな犠牲を強いているので、その改善もできそうです。できれば、小中学校にも到達度テストを導入した方が。
Commented by ゑぶ at 2007-11-21 01:16
わたしもこの高卒テストに賛成です。
学力の低い学生は、従来の入学試験ではねればいいという意見もありますが、いまどんどん入試が簡単になってますよね。AO入試とか、一教科だけでうかる入試とか。で、学生も簡単な入試にながれるから、悪貨が良貨を駆逐するといっしょで、全体としてどんどん入試が簡単になってしまう。こういうデフレスパイラル的な現状をくいとめるために、全国一律の試験を受験生にかして、学力の最低レベルを確保するのというのは、有効と思われます。

あと、たしかに定員をかならず満たさないといけないというのもおかしいですが、人気のない学部に、たくさん税金を投入するのも、どうかと思います。
Commented by 現実は at 2007-11-21 01:46
ここ30年ほどの日本の教育の歴史は、共通一次にはじまって、試験制度をいじりまわして、その度に教育の質を落としてきた歴史です。今回の案もその意図はともかく、結果としてまた碌でもない事になるのは目に見えています。こんなのに賛成を言うひとは大学受験の現場を知らない人ですね。

Commented by 通りすがりNo8640986 at 2007-11-21 02:25
--やめればいいのに。--

Aさん。ふと、思うのではなく、普通の人はこのニュース見てすぐそう思うのですよ。 

3流(以下)大学の大学は、何が何でも大卒の肩書きが欲しい(資金に余裕がある)学生と、何が何でも研究者・教官でいたい3流学者から構成されます。

私金で勝手にやればいいのですが、いささかなりとも税金が投入されています。1000兆円の政府は、廃学せざるを得ません。

そういう3流以下の大学は高卒以下の能力の学生も勝手に入学させ、ろくに教育もせず勝手に学士免状を与えます。 だから、高卒資格が必要なのです。 
Commented by 通りすがりNo8640986 at 2007-11-21 02:27
--博士基礎学力試験--

どうでもよいけど 博士に してほしいというニーズが、ポスドク問題を扱う文科省役人に不必要に大きな犠牲を強いているので、その改善ができそうです。できれば、博士にも到達度テストを導入した方が。
Commented by 物理実験系 at 2007-11-21 08:42
 受験料と授業料が(特に私立)大学の収入源となっている現状からみて、定員充足率のしばりをとっても解決しないと思います。特に前者は「機会の複数化」の美名のもとに受験生から収奪する仕組みですね。
 学力を要求しない大学にも需要があれば、あえてつぶす必要はないと思います。しかし、統一試験できちんと学力を測って格付けすることは、消費者(受験生)の利益になると思います。
inoue0さんのおっしゃるように、センター試験を学力認定に活用すればよい思いますね。センター試験では満点近い人が集まってしまうごく少数の大学・学部を除き、大部分の大学は、独自の試験も行なう必要はないはずです。
Commented by 現実は at 2007-11-22 00:01
高卒資格試験と同等、もしくはすぐに同等に運用可能なものは日本に既にあります。大学入学者の資質をコントロールしたければ、新たに試験を作らなくとも、いまある共通試験を使えば良いだけです。文部科学省の法令一本で出来ます。屋上屋という言葉を良く眺めてください。

新たな制度で差し当たり達成されるのは何でしょうかね。目くらまし、官僚の業績作り、高級官僚と旧帝大教授天下り先の創設。
Commented by ゑぶ at 2007-11-22 00:50
高卒テストは、教育再生会議のなかでも実現は微妙みたいですね…
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/education/61681.html

(まあこの期におよんでつけくわえるのもなんですが…)

この高卒テストの味噌は、受験生全てに受けさせること、だったと思います。センター試験の一種類で、日本中のさまざまな学力をもっている学生に対応できるとは思いません。受験生の実力に合わせて、難易度がかわるTOEFLのようなコンピュータベースならともかくですが。帯に短したすきに長し、担っていると思います(その中間くらいのひとには十分役にたっているでしょうけど)。センター試験、その前身の共通一次ができたときは、今のような大学全入時代は想定していなかったはずです。
Commented by 高卒テストに賛成 at 2007-11-25 16:40
高卒テストでもやらないと、学力不信を理由に、留年を高校で行えないからでしょう。学力不信の留年なんて、戦前は普通にあったはずなのに。。。

日教組の悪平等思想が蔓延し、公的な基準がないと、難しくなったのでしょう。

高校の教科書をみると、同じ出版社、同じ科目のものでも、進学校向け、普通のレベルの学校向け、底辺校向け、のような形で、難易度の違う複数のものが売られている。高卒認定テストは、底辺レベルの教科書に内容が合わされるはずで、このレベルができなければ、学歴を中卒にした方がマシだと思う。

大学進学を普通に目指すものには、心配は無縁の存在になる気がする。
Commented by 物理実験系 at 2007-11-25 17:36
ゑぶさん>センター試験ではさまざまな学力の学生に対応できない、というのは選別を目的とする場合は正しいと思いますが、高卒での学業到達度判定が目的なら現行のセンター試験でほぼ対応できそうに思います。
 大学入試センターの公表資料を見ると、さまざまな科目を通して、(100点満点相当に対し)平均が50~70点、標準偏差が15~20点のなので、(細かいパーセンタイル値が公表されていると、もっとよくわかりますけど)大部分の受験生(上方2σ、下方3σ)に対して判定能力があるようです。高卒到達度最低条件ならおそらく下位2σ付近の判定できればよいと思うので、かなりよくできた試験になっていると思います。
Commented by ゑぶ at 2007-12-02 22:56
ん~。そうなんですかね…。

マクロ的にみると確かに判定能力が高いのかもしれませんが、ミクロ的に見ると、そういい試験ではないようにおもえるのです。なぜなら、センター試験は言わずもがなですがマークシートなので、ぜんぜんわからなくても適当に記入すれば、その時々の運で、ある程度の点数がとれてしまい、公平性に問題がありと思えるからです(ここでいう公平性は、テストで落ちるべき人は落ち、受かるべき人は、受かるという意味)。たとえば、平成19年の英語の試験(ヒアリングを除く)は、問題数50で、一問あたりの平均点は2点(100点満点換算)で、ほぼ全問5つの選択肢から答えを選ぶ試験でした(実際にはいくつか例外はあります)。この試験で、まったく英語がわからない人が適当にマークシートをうめて、3割くらいの正答率(物理実験系さんがいう2σくらい)を得る確率を計算してみます。このテストを、計算しやすいように試行50回、成功率1/5のベルヌーイ試行とみなして計算すると、成功数15~50の確率は、0.06。つまりまったく英語を知らなくても20人に一人以上は学業到達度に達してしまうことになってしまいます。

(つづく…)
Commented by ゑぶ at 2007-12-02 22:59
(と、思うのですが、計算に自信がないですし、物理実験系さんのほうが私よりずっと数理学的能力がありそうなので、適宜突っ込みをいれてください)

この試験はマークシートでやる以上その時々の運で点数が変わるのは仕方ないので、私がこだわっているのは、程度問題だと一笑に付されるかもしれません。でも低い点数ほど、山勘で点数が大きく上下するようです。よってセンター試験をもっと簡単にして、高卒認定されるかどうかボーダーの人でも、6割くらいとらないといけないようにしないと、公平性が保てないと思います。でも、そうすると今度は成績上位の人を選別できなくなりますよね。
by stochinai | 2007-11-19 22:08 | 教育 | Comments(17)

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