2007年 12月 04日
大学院生のための10の簡単なルール
PLoS COMPUTATIONAL BIOLOGY というオンラインのフリージャーナルがありますが、数日前に発表された号に載っていた見逃せないエディトリアルです。
Ten Simple Rules for Graduate Students
つたないながらも、ご紹介してみます。
Rule 1: Let Passion Be the Driving Force of Your Success
ルール1: 成功するまで情熱を持ち続けよう。
大学院にはいるということは人生に投資することである。このチャンスで自分の資質を確かめ、その分野に情熱が持てるのかどうかを確かめよう。自分が本当に研究をしたいのかどうかも知ることができる。精一杯利用しよう。でも、研究に打ち込めなかったり、テーマが合わないとおもったら、辞めよう。考え直すのだ。
Rule 2: Select the Right Mentor, Project, and Laboratory
ルール2: 正しい指導教員、プロジェクト、ラボを選ぼう。
研究を始めるまでは、ある教員が自分に合っているかどうかなんてなかなかわからないものだ。研究室の学生に尋ねてみよう。
あなたが選んだ研究テーマについて熱心に相談に乗ってくれないとしたら、教員が悪いかテーマが悪い、あるいはどちらも悪いということだ。
研究室から出た論文を読んだり、関連分野の研究者に尋ねたりして、研究室のオリジナリティと質を確かめよう。
ともかく、じっくりと時間をかけて研究テーマと指導教員を選ぼう。
Rule 3: Independent Thinking Is a Mark of a True Scientist
ルール3: 一人で考えることができなければ科学者とは言えない。
大学を出たら自立していなければならない。自立は早ければ早いほどいい。
Rule 4: Remember, Life Is All about Balance
ルール4: 人生にはバランスが必要だ。
まずは健康に気をつけよう。一所懸命研究したら、趣味や休息に時間を割こう。そんなところから共同研究の芽が出てくることも多い。
Rule 5: Think Ahead and Develop Your Professional Career Early
ルール5: 将来を見据え、研究者としてのキャリアを磨こう。
学位を取る前から、科学者として成功することを目指し、学位を取る前から論文を書いたり、奨学金に応募したり、研究費を申請したり、学会で発表したり、いろんな研究者とコミュニケーションをとることを心がけよう。学位より就職や奨学金を優先。
Rule 6: Remain Focused on Your Hypothesis While Avoiding Being Held Back
ルール6: さっさと学位を取る後退を避けるために、常に自分の仮説を再検討し続けよう。
研究をやりつつ、常に自分のテーマの壮大な意味を思い出しては、自分の立てた仮説がまだ使えるかどうかをチェックしよう。指導教員はあなたがいつまでも研究室で彼の研究をやってくれることを願っているかもしれないが、あなたは自分の仮説を証明したらさっさと学位を取って出ていくべきなのだ。
Rule 7: Address Problems Earlier Rather Than Later
ルール7: 問題がありそうだと思ったら早めに対処しよう。
大学院生活において何か問題が生じたら、すぐに指導教員と話し合おう。彼がいい人だったら、研究以外にあなたの将来のことを考えてくれるはずだ。必要なら将来を考え直すために休むのも良いだろう。彼らにも同じ時代があったはずなので、良い教員ならわかってくれるだろう。
Rule 8: Share Your Scientific Success with the World
ルール8: 科学的成功は世界と分かち合おう。
研究所(大学)、国内、国外に研究仲間を作ろう。教員として独立する前に、セミナーやミーティングにドンドン参加し、いろんな人に認められよう。ミーティングなどに参加した時には、知っている人ばかりと付き合うのではなく、いろんな人との交流に飛び込んでいこう。そういう中にこそ、将来の共同研究者や友達やライバルや雇用者がいるものだ。
Rule 9: Build Confidence and a Thick Skin
ルール9: 自信と鈍感力を磨こう。
研究の世界に深く入り込んでいくと、敵も増える。いろんな攻撃には、自信を持って冷静に応えよう。たとえ大御所に質問されたとしても、臆することなくサイエンスで応えよう。実験に失敗したり、ろくな結果が得られなかったりと研究には挫折がつきものなので、図太く乗り越えることも必要だ。
めげずに前進だ。
Rule 10: Help Select and Subsequently Engage Your Thesis Committee
ルール10: 学位の審査委員と良い関係を築こう。
大学によっていろいろなので一概に言えないが、予め学位の審査委員がわかるシステムのところだったら、自分の指導教員以外の審査委員にも、自分の研究の進捗状況を報告したり、スーパーバイザーとして相談に乗ってもらったりしよう。特に、自分の指導教員ともめたりしたときには、彼らはありがたい存在になるはずだ。
---------------------------
とまあ、そんなにすごいことが書いてあるわけではありませんが、これから大学院を目指そうという人や、大学院生だけではなく、我々も時々こういうものを読んで気持ちを新たにすることはためになると思います。
実はこの「10の簡単なルール」はシリーズものになっていて、すべてが無料で読めますので、興味のある方は引用文献のところをご覧下さい。ちなみに、次の7つがすでに出ています。
Ten simple rules for getting published.
Ten simple rules for getting grants.
Ten simple rules for reviewers.
Ten simple rules for selecting a postdoctoral fellowship.
Ten simple rules for a successful collaboration.
Ten simple rules for making good oral presentations.
Ten simple rules for a good poster presentation.
最後のものは、前に私が紹介したことがあります。
ポスター発表のための10の簡単なルール
Ten Simple Rules for Graduate Students
つたないながらも、ご紹介してみます。
Rule 1: Let Passion Be the Driving Force of Your Success
ルール1: 成功するまで情熱を持ち続けよう。
大学院にはいるということは人生に投資することである。このチャンスで自分の資質を確かめ、その分野に情熱が持てるのかどうかを確かめよう。自分が本当に研究をしたいのかどうかも知ることができる。精一杯利用しよう。でも、研究に打ち込めなかったり、テーマが合わないとおもったら、辞めよう。考え直すのだ。
Rule 2: Select the Right Mentor, Project, and Laboratory
ルール2: 正しい指導教員、プロジェクト、ラボを選ぼう。
研究を始めるまでは、ある教員が自分に合っているかどうかなんてなかなかわからないものだ。研究室の学生に尋ねてみよう。
あなたが選んだ研究テーマについて熱心に相談に乗ってくれないとしたら、教員が悪いかテーマが悪い、あるいはどちらも悪いということだ。
研究室から出た論文を読んだり、関連分野の研究者に尋ねたりして、研究室のオリジナリティと質を確かめよう。
ともかく、じっくりと時間をかけて研究テーマと指導教員を選ぼう。
Rule 3: Independent Thinking Is a Mark of a True Scientist
ルール3: 一人で考えることができなければ科学者とは言えない。
大学を出たら自立していなければならない。自立は早ければ早いほどいい。
Rule 4: Remember, Life Is All about Balance
ルール4: 人生にはバランスが必要だ。
まずは健康に気をつけよう。一所懸命研究したら、趣味や休息に時間を割こう。そんなところから共同研究の芽が出てくることも多い。
Rule 5: Think Ahead and Develop Your Professional Career Early
ルール5: 将来を見据え、研究者としてのキャリアを磨こう。
学位を取る前から、科学者として成功することを目指し、学位を取る前から論文を書いたり、奨学金に応募したり、研究費を申請したり、学会で発表したり、いろんな研究者とコミュニケーションをとることを心がけよう。学位より就職や奨学金を優先。
Rule 6: Remain Focused on Your Hypothesis While Avoiding Being Held Back
ルール6: さっさと学位を取る
研究をやりつつ、常に自分のテーマの壮大な意味を思い出しては、自分の立てた仮説がまだ使えるかどうかをチェックしよう。指導教員はあなたがいつまでも研究室で彼の研究をやってくれることを願っているかもしれないが、あなたは自分の仮説を証明したらさっさと学位を取って出ていくべきなのだ。
Rule 7: Address Problems Earlier Rather Than Later
ルール7: 問題がありそうだと思ったら早めに対処しよう。
大学院生活において何か問題が生じたら、すぐに指導教員と話し合おう。彼がいい人だったら、研究以外にあなたの将来のことを考えてくれるはずだ。必要なら将来を考え直すために休むのも良いだろう。彼らにも同じ時代があったはずなので、良い教員ならわかってくれるだろう。
Rule 8: Share Your Scientific Success with the World
ルール8: 科学的成功は世界と分かち合おう。
研究所(大学)、国内、国外に研究仲間を作ろう。教員として独立する前に、セミナーやミーティングにドンドン参加し、いろんな人に認められよう。ミーティングなどに参加した時には、知っている人ばかりと付き合うのではなく、いろんな人との交流に飛び込んでいこう。そういう中にこそ、将来の共同研究者や友達やライバルや雇用者がいるものだ。
Rule 9: Build Confidence and a Thick Skin
ルール9: 自信と鈍感力を磨こう。
研究の世界に深く入り込んでいくと、敵も増える。いろんな攻撃には、自信を持って冷静に応えよう。たとえ大御所に質問されたとしても、臆することなくサイエンスで応えよう。実験に失敗したり、ろくな結果が得られなかったりと研究には挫折がつきものなので、図太く乗り越えることも必要だ。
めげずに前進だ。
Rule 10: Help Select and Subsequently Engage Your Thesis Committee
ルール10: 学位の審査委員と良い関係を築こう。
大学によっていろいろなので一概に言えないが、予め学位の審査委員がわかるシステムのところだったら、自分の指導教員以外の審査委員にも、自分の研究の進捗状況を報告したり、スーパーバイザーとして相談に乗ってもらったりしよう。特に、自分の指導教員ともめたりしたときには、彼らはありがたい存在になるはずだ。
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とまあ、そんなにすごいことが書いてあるわけではありませんが、これから大学院を目指そうという人や、大学院生だけではなく、我々も時々こういうものを読んで気持ちを新たにすることはためになると思います。
実はこの「10の簡単なルール」はシリーズものになっていて、すべてが無料で読めますので、興味のある方は引用文献のところをご覧下さい。ちなみに、次の7つがすでに出ています。
Ten simple rules for getting published.
Ten simple rules for getting grants.
Ten simple rules for reviewers.
Ten simple rules for selecting a postdoctoral fellowship.
Ten simple rules for a successful collaboration.
Ten simple rules for making good oral presentations.
Ten simple rules for a good poster presentation.
最後のものは、前に私が紹介したことがあります。
ポスター発表のための10の簡単なルール
今、ものすごい孤独感と不安感を持っているので、この記事に出会えて幸せに思います。このシリーズは今後も自分のことを支えてくれそうな気がします。
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同じような境遇に何千人もの仲間がいるのですが、みんなバラバラになっているので孤独になったり、不必要な不安感を持ってしまうことが多いのが大学院生(ポスドクも)ですね。とりあえず、「ひとりじゃない」って思うことから出発しましょう。
「Rule 6: Remain Focused on Your Hypothesis While Avoiding Being Held Back」は、「指導教官のもとにいつまでも引き止められないように気をつけて、学位のための自分の仮説に集中すべし」ではないでしょうか。ラボの仕事に埋没してしまわないように気をつけろ、自分の研究をやれということではないかと思います。
ありがとうございました。タイトル部分をちょっと変えてみます。
学位論文審査で収賄事件が発生した名古屋市立大学医学部の腐った実態が報道されてます。
http://s04.megalodon.jp/2007-1207-1528-43/www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007120702070277.html
私はドクターでもポスドクでもないが、この報道が事実とすると、腹が立って仕方がない。こいつらは「博士」の価値を引き下げることによって、研究者たちの生活を間接的に脅かしているということにまったく無頓着だ。
自分のblogにも書きましたが、私は「博士号」そのものを廃止した方がいいと思います。研究者は自分の論文のサマリーを能力証明とすべきでしょう。掲載された学術雑誌や被引用数もついでに提示するとよい。
論文の価値がわからない相手だったら、わざわざ「博士です」と名乗る必要もないと思うのですね。
http://s04.megalodon.jp/2007-1207-1528-43/www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007120702070277.html
私はドクターでもポスドクでもないが、この報道が事実とすると、腹が立って仕方がない。こいつらは「博士」の価値を引き下げることによって、研究者たちの生活を間接的に脅かしているということにまったく無頓着だ。
自分のblogにも書きましたが、私は「博士号」そのものを廃止した方がいいと思います。研究者は自分の論文のサマリーを能力証明とすべきでしょう。掲載された学術雑誌や被引用数もついでに提示するとよい。
論文の価値がわからない相手だったら、わざわざ「博士です」と名乗る必要もないと思うのですね。
http://s04.megalodon.jp/2007-1207-1528-43/
www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007120702070277.html
魚拓が切れてしまったので、再度アップします。
www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007120702070277.html
魚拓が切れてしまったので、再度アップします。

学位は必要です。あれがないと、国外でのPDジョブハンテイングが難しくなります。昔から、イタリアの学位は易しいとか国によって差があることは良く知られていますが、それでも研究者渡世の世界共通の若葉マークとして一応は機能しています。むろんCVにちゃんとした論文がないと評価されませんが、逆にCVにちゃんとした論文があって学位がないとそれも変に受け取られかねませんから。

>論文の価値がわからない相手だったら、わざわざ「博士です」と名乗る必要もないと思うのですね。
それは逆でしょう。
論文の価値がわかる相手だったら、わざわざ「博士です」と名乗る必要もないはず、となりませんか?
つまり、「博士」というのは論文の価値がわからない相手、つまり一般人や他分野の研究者、行政官などがその研究者を判断するために必要な肩書です。
それは逆でしょう。
論文の価値がわかる相手だったら、わざわざ「博士です」と名乗る必要もないはず、となりませんか?
つまり、「博士」というのは論文の価値がわからない相手、つまり一般人や他分野の研究者、行政官などがその研究者を判断するために必要な肩書です。
一言さん
なるほど、「博士」が「大卒」とか「高卒」の延長線上にある資格でしたら、そうも言えます。
しかし、ならば、博士の就職がこんなに困難を極めるでしょうか?単に就職できればいいというのではないのです。自分の今まで培った専門知識を生かした仕事がしたいのです。
ですから、単に「博士です」で恐れ入ってもらって就職しても、博士たちが望むようなキャリアコースには入れないんじゃないかと思うんです。
論文を評価して、採ってくださる方がいれば、本人の専攻を生かした仕事になる可能性が高いと思います。
なるほど、「博士」が「大卒」とか「高卒」の延長線上にある資格でしたら、そうも言えます。
しかし、ならば、博士の就職がこんなに困難を極めるでしょうか?単に就職できればいいというのではないのです。自分の今まで培った専門知識を生かした仕事がしたいのです。
ですから、単に「博士です」で恐れ入ってもらって就職しても、博士たちが望むようなキャリアコースには入れないんじゃないかと思うんです。
論文を評価して、採ってくださる方がいれば、本人の専攻を生かした仕事になる可能性が高いと思います。

論文というのは基本的にその専門分野の人を読者に想定に書かれるものです。それを読んで採用できるということは、その専門家にのみ可能なことであり、PD問題が問題であるような分野では、結局大学・研究所に職を求めろに言ってるのに等しいと思います。
非専門家向けの解説記事で評価するというのは一つのやり方かもしれませんが。(企業は博士のこういう能力の不足をexcuseにあげてますね)
非専門家向けの解説記事で評価するというのは一つのやり方かもしれませんが。(企業は博士のこういう能力の不足をexcuseにあげてますね)
by stochinai
| 2007-12-04 22:45
| 大学・高等教育
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Comments(10)