5号館を出て

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高くても安全なものを選べない私たち

 NHKのニュースで、せっかくの地産地消のお弁当を作っても、小さくて高いので売れ行きは今ひとつということを言っていました。

 誰だって毒入りの食べ物を食べたいとは思わないけれども、お金がないのであれば、毒が入っている可能性が高くて安いものと、毒が入っている可能性が低くて高いものが目の前に出されたら、迷うのが貧乏人の性(さが)というものではないでしょうか。

 昨日は中国当局が、ギョウザ事件で農薬が入ったのは日本なのではないかというような発表を行っていたようです。

 中国がこれほど強気の発言をするということは、日本が中国からの食品輸入なしではやっていけないということに自信を持ち、こちらの足下を見ているということなのかもしれません。悔しいことですが、食糧自給率39%ということが国際的に認知されているわけですから、仕方がないというところでしょうか。

 コープさっぽろは、3月からコープブランドの自主開発製品のうち、中国製の販売を中止すると言っているようです。店にいっても販売されていないのであれば買うチャンスは減るので、生協で買い物をすることが多い人は、少しは危険なものから遠ざかれることになるかもしれません。

 コープは昔はちょっと高めの価格設定でも、安心で安全なものを売ってがんばっていた時代があったと思います。しかし、そのやり方では必ずしもたくさんの顧客を獲得することができずにかなり苦しい時代が続いていたのですが、最近は価格競争でもかなり強くなってきていたと感じていました。ところがその陰に、大量の中国からの製品買い付けがあったということが暴露されてしまいました。

 しかし、ここで原点に立ち戻ることでコープはやっていけるのでしょうか。コープで販売しているものの価格が全体的に高いという評判が立ってくると、たとえ安心・安全を売っていると主張してもお客さんがだんだんと減っていくような気はします。

 要するに、日本全体が貧困になってしまったということなのかもしれません。貧困な人間にとっては、食の安全よりは餓死しないことのほうがはるかに優先度が高い項目です。

 食糧の自給率が低いというのは、食料輸入自由化を含むグローバリゼーションを推進した政府の責任だという気もしますが、ここまで来てしまった以上いたずらに政府を責めても事態は解決しないでしょうから、どうすれば良いのか考えなければなりません。

 とりあえず、今の日本は外国から食糧を輸入せざるを得ないという状況を前提として、輸入元の生産現場にまで日本の技術者が介入していくということはどうでしょうか。日本人の口にはいるものは、たとえ輸入するものであっても入り口から管理するということは可能なのではないでしょうか。あるいは、狂牛病の全頭検査に近いことをやるのも同じ効果が得られそうです。とりあえずは、どちらでも良いと思いますが、選ぶとすれば価格に及ぼす影響の少ない方ということになるでしょうか。

 一番良いのは、生産者が消費者に危険なものを食べさせるわけにはいかない、と思ってくれるような「人間的なつながり」を作ることなのでしょうが、何千キロも離れたところにいる外国人に対してそのような気持ちを持つということも、またあり得なさそうです。

 ともかく、安全性を犠牲にした価格競争をさせないためのルールが必要なのだと思います。
Commented by ひでお at 2008-03-01 01:55 x
日本に輸入された全体の(安全な)食品の量と偶発的事件で問題が起きた食品の量の比率は、おそらく百万分の一にも満たないと思われますが、毒、毒、と連発される先生の記事は、どうも十把一絡げの思考の癖があるように見受けられます。
Commented by S at 2008-03-01 03:34 x
食の安全対策は重要ですが、別のことが気になりました。

>昨日は中国当局が、ギョウザ事件で農薬が入ったのは日本なのではないかというような発表を行っていたようです。
 中国がこれほど強気の発言をするということは、日本が中国からの食品輸入なしではやっていけないということに自信を持ち、こちらの足下を見ているということなのかもしれません

中国当局の発表というのは、多分に国内向けのアピールというところもあるのだと思います。よく知られているように、中国では、政府の面子を保ったり国内の不安を抑えるために情報をコントロールしています。中国当局の顔をたてつつうまい具合にこちらの希望を実現させていくことができるのか、日本の外交力や交渉力が問われているような気がします。
Commented by stochinai at 2008-03-01 08:22
 お二方の貴重なご意見、ありがとうございました。
 今回の問題の落としどころは難しいと感じていますが、それとは独立に誰からも見える海外からの食料輸入安全保障(量および安全性)のルールを作るチャンスにできれば、災い転じて福とすることができるのではないでしょうか。
Commented by あの~ at 2008-03-05 10:24 x
 食料自給率が39%というのはどういう数字なのでしょうか?
 カロリーベース?生産額ベース?品目ごとに分けたときの特定品目についてですか?
 一口に「食料自給率」といってしまうマスコミも問題ですし、内容を吟味しないで「食料自給率がひくいからXXである」と言い切ってしまうのは問題があるのではないでしょうか?

 ちなみに。例えば(加工品用途以外の)米の自給率はほぼ100%。「野菜類」も90%近く自給(加工品除く)。もっとあげる事も可能でしょう(加工品を含んでも)。むしろ、現状農家は野菜が売れなくて困ってます。農村部に行けば都会の半値以下で野菜が売られ、それでも売れ残って廃棄されていますよ。また、そういう現状を反映し、農家は子弟を農業に就かせません。結果、農業従事者は超高齢化し、空き農地は逐次増えつつあります。


 農業で食っていけない(食うには困らないけれど子供の教育などを考えて現実的でない)と判断し離農した元農民のコメントでした。
Commented by 名無し農学板の住人 at 2008-03-05 10:49 x
中国の毒餃子の件は証拠保全命令が出ていたのに、ほいほいサンプルを
献上した生協連の所業もあって強気の態度に出ているという点も見逃せないでしょう。
私は、正直なところ生協は潰れた方が良いと思ってます。

http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/02/20_12e9.html
Commented by 自給率についての資料 at 2008-03-05 12:01 x
>>あの~さん
> 農村部に行けば都会の半値以下で野菜が売られ
海外から、安い輸入食材が輸入され、野菜も値を下げています。また、日本は流通コストが掛かるので、都会から遠い産地は不利です。下記に資料があります。

日本の食料自給率は下記
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/dat/2-5-2-1.xls
品目別の自給率は下記
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/other/2-5-1-1.xls

農水省のサイトに、自給率の計算ソフトもありますね。
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/zikyu03.html
「食料自給率の部屋」なんてHPもあります。
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/index.html
Commented by 自給率についての資料2 at 2008-03-05 12:09 x
自給率の定義は下記
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html
算出根拠の資料は下記
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
Commented by あの~ at 2008-03-06 10:51 x
>自給率についての資料さん
 資料ありがとう。
 結論からいうと、偏った一部の食物(穀類、豆)の自給率が著しく低く、結果としてカロリーベースの自給率を下げている、ということでよろしいですね(但し、国内で(農産地で)廃棄されている分を除いていますが)。また、肉類に関しては某国から圧力をかけられて大量に輸入しているためああいう数字なのでしょう。

 今、マスコミがセンセーショナルに騒ぎたてているのはまさにこの数字でしょう。お笑い種ですね。

 国内で無駄にされている食物(都会でたべきれず破棄、ではなく農産地で売れないから破棄されているもの)が確実にあります。流通さえきちんと整備すれば、国内産の食べ物が供給されるのです。伴って、国内の農家も安定した収入を得る事ができるようになります。

 今のように、一部の食物を輸入に頼っている実状をさも大変な事のように騒ぎ立て、「だからXXである」という連中には、きちんと農家の話を聞かせ、実状を見せたいですね。また、個人的には見ないのであれば訳知り顔でアレコレぬかすな、といいたいところです。

Commented by あの~ at 2008-03-06 10:52 x
 今の農地の空き事情やら農家の跡継ぎ問題を見聞きしていると、穀類についても、きちんと収入が保証されるという前提であれば十分自給可能なのではないかと思います。

 「日本は食糧自給ができない」と思い込んでいる人々には、是非農村地帯を自分の目で見に行っていただきたいですね。
Commented by stochinai at 2008-03-06 13:37
>きちんと収入が保証されるという前提であれば十分自給可能
 要するに、農家の生活が維持できるくらい充分に農産物の価格が上がったならば、自給できるだけの農地はあるということなのですね。それが、本当ならばかなり安心です。
 ただしそれは、貿易が自由化された現在の状況の下ではかなり難しいので、将来食糧危機になることを想定して、いつでも農地に転換できるような地面を確保しておくことが当面の食糧安全保障上の対処ということになるでしょうか。
Commented by あの~ at 2008-03-07 09:59 x
 別に国産農産物の価格が上がらなくても、無駄に破棄する量を減らす努力をするだけで農家の生活も、食料自給率も改善されると思います。というよりも、農業生産者の多くは、別に農産物の価格の上昇なんて願っていません。むしろ作った分を安定して消費し、対価を支払ってもらいたいというのが本音でしょう。

 農産物は破棄すれば0円です。価格を輸入ものの値段にあわせたとしても0よりはよっぽどマシです。国内で、出荷したくても「規格外」の扱いで破棄される農産物の量を、果たしてどれほどの人が知っているのでしょうね。

 希望する農業従事者を準公務員扱いにして、作った農作物を国なり地方自治体が一定の価格で買い取るなどするだけで状況は一変するでしょうね(豪農という一部の儲かっている農家は別でしょうが)。

 このへん、農業に係わったことのない方は何をいっているのかピンとこないと思いますけどね。

 ちなみに、農地に転換できるような地面なんて確保しなくても、農村部にいけば放棄、放置された農地が腐るほどありますのでご心配なく。足りないのは、農業従事者の希望と、実際に従事している、したいと思う人間です。
by stochinai | 2008-02-29 22:25 | つぶやき | Comments(11)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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