5号館を出て

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ニコチン依存症のヒトは肺がんになりやすい

 喫煙と肺がんリスクの関係は医学的に証明された事実なので、タバコのパッケージに警告が書いてあるのだと思います。ところが、日常的に経験することですが、ものすごいへピースモーカーなのに、かなりご長寿の老人がいらっしゃいます。

 最近の研究で、ヒトの第15番染色体上に肺がんになる確率を上げる遺伝子の変異が発見されるとともに、別の研究者がその同じ遺伝子の変異が喫煙(ニコチン)依存症にも関係していることをつきとめたということです。これは、大変な発見だと思います。サイエンティフィックアメリカンニュースに記事が出ています。
Why Some Smokers Get Lung Cancer--And Others Are Spared
Nicotine addiction gene may also increase susceptibility to lung cancer
 実はNatureにも解説記事があるのですが、タイトルが洒落すぎていて見逃していました。

 Genomics: When the smoke clears ... 
 Nature 452, 537-538 (3 April 2008)


 元の論文はこちら

 Hung, R. J. et al. Nature 452, 633–637 (2008).
 A susceptibility locus for lung cancer maps to nicotinic acetylcholine receptor subunit genes on 15q25

 Thorgeirsson, T. E. et al. Nature 452, 638–641 (2008).
 A variant associated with nicotine dependence, lung cancer and peripheral arterial disease

 Amos, C. I. et al. Nature Genet. doi:doi: 10.1038/ng.109 (2008).
 Genome-wide association scan of tag SNPs identifies a susceptibility locus for lung cancer at 15q25.1

 2本の染色体にある遺伝子のどちらかにでも変異があると、変異がないヒトよりも肺がんにかかる確率が30%上がり、2本の染色体にある両方の遺伝子が変異すると、なんと70%も高くなってしまうのだそうです。しかも同じ遺伝子変異で、ニコチン依存症になりやすくなるというのですから、この遺伝子に変異があった場合にはかなり危険なことになってしまいます。

 もちろんヘビースモーカーにこの遺伝子変異がある人が多いそうですが、不思議なことにノンスモーカーでこの遺伝子に変異を持っているヒトの割合が、1日にタバコを1本から10本吸うヒトよりも高いという結果も出ています。しかしそれは、この遺伝子に変異があるヒトは1日に10本ではすまずに、たくさん吸うことになるのでそのような結果になるということなのだだそうです。

 この遺伝子の作るタンパク質は神経細胞にあるCHRNAというニコチン性(ニコチンで活性化される?)神経のアセチルコリン受容体の一部なのだそうですが、それは神経だけではなく肺がんになる肺の細胞にもあって、どうやらそれがタバコで肺がんになりやすい原因にもなっているということのようです。

 脳に発現した変異タンパク質がニコチン依存性の原因(脳が気持ちよさを感じる)になり、肺に発現した変異タンパク質が肺がんの原因(がん細胞の増殖)になるということだと、まさに踏んだり蹴ったりということになります。

 また、ニコチンが細胞増殖に関係していることががんの原因となるのだとしたら、肺がん以外のがんを引き起こすことも充分に考えられるようです。気をつけなければいけませんね。

 子供のうちにこの遺伝子の変異を検査して、危険なヒトはタバコから遠ざかるということも考えられるかもしれませんが、この遺伝子に変異がないからといってタバコを吸っても良いというものではなさそうです。肺がん以外にも、タバコが原因の病気はたくさんあるので、タバコを止めるのが唯一の正解というのが、科学者からのアドバイスです。
by stochinai | 2008-04-05 18:20 | 医療・健康 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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