5号館を出て

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肺の退化したカエル

 英語圏の科学ニュースでは非常にたくさんの記事が出ていますが、まだ日本語ではほとんど出ていないようなので、取り上げてみます。

 インドネシアのボルネオ島で、カエルとしては世界初の肺のない種が発見されました!
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 (よく見ると、前足の指に爪があるみたいです。それも、とても不思議です。)

 原著論文が本日4月8日発行の Current Biology に出ていると書いてあるのですが、見つかりません。仕方がないので、ナショナルジオグラフィックの記事からご紹介します。

 カエルの学名は Barbourula kalimantanensis。肺がないということは、皮膚呼吸だけで生きているということになります。このカエルは最初1978年に発見されていたのだそうですが(名前もその時についていたのだと思います)、その15年後に採集されたものと合わせて、たった2個体の標本しかなかったので、今までには解剖されていなかったようです。お金があれば、今なら小動物用のCTスキャンなども使えるのでしょうが・・・。

 今回、ある程度の個体数が取れたので、解剖をしてみたところ「肺がない」という大発見になりました。

 陸上の四足動物で肺を持っていないものとしては両生類だけが知られており、両生類の中でも尾のあるサンショウウオと手足のないアシナシイモリだけで発見されています。この度、尾のないカエルでも肺のないものが発見されたので、両生類では比較的しばしば肺の退化という進化が怒ったことがわかります。

 両生類の皮膚はいつも湿っており、その組織はある意味で我々の肺の内側と同じような状態にあるので、皮膚を薄くして血管を発達させると肺の代わりになるということは容易に想像がつきます。残る問題は皮膚の表面積と身体全体の体積比です。そういうわけで、身体が細長いサンショウウオやアシナシイモリが肺なしでやっていられるのはそんなに不思議ではないと言われてきたのですが、「まさかカエルが!」というのが今回の発見の驚きです。

 このカエルは小さくて平べったいので、身体の大きさに対する皮膚の表面積は大きくなっていますし、住んでいるところが高い山の、水が冷たくきれいで早く流れる渓流なので、皮膚から酸素を取り込む問題が解決されているようです(冷たいところなので酸素消費量も少ない)。また急流に流されないためには、肺をなくして浮力を下げることもこのカエルにとって有利に働き、肺が退化したのでしょう。

 ただひとつ、肺がないことでカエルとしての特徴である「鳴き声」が出せないことをどうやって乗り越えているのか、とても興味深いことで、今後の研究が待たれます。

 しかし現地では、違法な金採掘により、このカエルの住む、きれいな渓流の破壊と汚染(金採掘で水銀が出てきます)が進んで絶滅が心配されており、このカエルの研究が続けられるのかどうかは楽観はできません。

 発見されなければ誰にも知られずに絶滅してしまったかもしれませんが、なんとか生き延びて欲しいものです。
Commented by wisdom96 at 2008-04-09 08:34
凄いですね。不思議な生き物はいるものですね。
冷たい水だと、溶存酸素量が多いというのも多少は効くのでしょうかね?
解剖した時の写真を是非公開してほしいですね。
Commented by stochinai at 2008-04-09 20:22
  私も結構すごいニュースだと思ったのですが、ブログを含めて日本からはほとんど反応がないのは寂しいですね。冷たい水には洋存酸素が多いということも書いてあったような気がしますが、もしそうだとすると水が汚染されるとあっという間に絶滅してしまいそうです。両生類は発見されると同時に絶滅するものが多いので、これも風前の灯火ということでしょうか。
by stochinai | 2008-04-08 21:54 | 生物学 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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