5号館を出て

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ふたつのニュース

 今日、連続して報道されたニュースを読み比べると、国の政策が見えてくるような気がします。

 ひとつ目はこれです。

 国立大の「努力」で交付金上下 外部の評価もとに

 国立大の主な経費を支える運営費交付金について、文部科学省は個々の大学の「努力」をより反映するよう配分のルールを見直す方針を固めた。現在は、大部分が学生数などをもとに自動的に決まるが、10年度からは各大学の教育・研究や運営の改善ぶりについての外部評価の結果を反映させて配分額を決める。

 文科省はこの方針を、14日午後に開かれた国立大の学長会議で説明した。

 国立大は04年度から09年度までの6年間を第1期中期目標期間とし、中期計画に基づいて運営している。10年度に始まる第2期期間の交付金の配分額は、新ルールに基づき、07年度までの4年間の達成状況を判定した評価委の「暫定評価結果」をもとに決めるとしている。
 外部評価というのはどういうものかというと、先日発表になった法科大学院の評価をした大学評価・学位授与機構などのことを指しているのでしょうが、たとえ外部評価といえども単独の組織の評価だけではいろいろと不満も出てくるでしょうし、その他にもいろいろな外部評価があり得ますので、複合的な物差しが想定されているのだろうと思っていたのですが、あまりにもタイミング良くこんなニュースも出てきました。

 研究機関ランク、東大は世界12位 順位1つ上げる

 97~07年に発表された論文の引用回数を研究機関ごとに集計した。国内2位以下は、京都大(世界28位)、大阪大(33位)、東北大(65位)、科学技術振興機構(92位)の順。世界順位はいずれも昨年より上がっている。
 同じ日に連続して報道されたこれらのニュースを重ねて読み解くと、研究大学として残るところとそうではないところが見せつけられる気がします。(政府の方針として、残すところと整理するところという見方をしても良いのかもしれません。)

 こういうところに名前が出てこないということは、研究機関としては外部からの評価が低いということになるのかもしれませんが、研究成果(のランク)などは研究者の数とそこにつぎ込まれた予算にかなり良く比例して動くものですから、こうした結果から予算配分を決めるとどんどん差が大きくなる方にしか動きません。

 それはそれで、ある意味で「客観的な評価」ということになるのでしょうが、その評価を追認してその差が広がっていくことを認めるということになると、未開拓の領域が発展することはかなり苦しくなるでしょう。

 それが、日本の科学政策として国民の総意の下に決まったということならば、我々に選択の余地はありませんが。
Commented by 小市民 at 2008-04-15 01:40 x
国民の総意なのかどうかはわかりませんが、国民がそう求めているという空気が醸成されて、そのような空気があるから政治も行政もそちらの向きに動いてしまう、ということなんじゃないでしょうか。
その空気を醸成するのが誰か、という話ですけど、新聞、TV、雑誌等のメディアはやはり力が大きいと思います。
一方で、まだまだ微力だと思いますがブログなど、インターネットを通して、というのも上手くすれば巨大なメディアに互していくことも出来るのかもしれません。

正直なところstochinaiさんの政治談議には疑問を感じることの方が多いですが、それでもそのような意見に触れることができる仕組みがあるのは大切なことだと感じますし、沢山読んでいるうちにもしかしたら私もstochinaiさんに感化されるかもしれません。
失礼なことを書いてしまいましたが、stochinaiさんの研究が仮に最近流行の評価の物差しで測りやすいものでなかったとしても、ブログの科学の話題を読んでいると、自分の払った税金が巡り巡って使われる先として、納得できます。
すぐに大きなうねりに繋がる訳ではないのでしょうけど、流行の領域でなくても意義のある領域があると伝えることに成功されていると思います。
Commented by いちエンジニア at 2008-04-15 08:58 x
正直なところ、政治が真空状態なときに役所発の政策を1つ1つ読んだところで、国民の考えやら空気やらが読めるとは思えません。「空気」なるものが存在するならば、の話ですが。
せいぜい役人の考えが読める程度でしょう。
役人が空気に影響されているとも思いません。利用できれば利用はするでしょうけど。

大多数の国民の関心は、もっと自分たちに直接影響あるところに向いていると思いますよ。政権とか道路とか日銀総裁とか年金とか医療とか。
Commented by 123 at 2008-04-15 12:49 x
引用回数は、せめてラボの数やスタッフの数、予算などで割り算した値も出してほしい気がします。差が縮みそうです。文科省も何かしなきゃいけないと思う気持ちが強すぎるのでしょうか。
Commented by iMac at 2008-04-15 21:12 x
初めまして(かな?多分)。
政治家や役人にはもう期待しない方がいいですよ。結局我々研究者も、これまでの枠組みをぶち壊すくらいの気構えがないと大学での研究は全体としては先細りになるでしょう。
評価のシステム自体の成熟も待たなければいけないでしょうが、その過程において、何をどのように評価しているのか公開して常に現場からのフィードバックを受けるようなシステムにしていかないと駄目でしょうね。
フィールドそのものが本当に新しいところでは、そもそも引用回数がそのサイエンスのクォリティを反映しないので、どうやって評価するのでしょうね。まぁ偉そうなことを言いながら、自分も引用回数を宣伝に使ったりしてますけど…。

サイエンスに限らず、国の政策は国民の方を向いていないことは明らかでしょう。特に最近の医療・福祉がらみの改革はヒドイ。最近ではあまり話題にならなくなった「派遣業」の問題も。

ネットで発信し続けていれば、そのうち変化をもたらすことができるかもしれません。
あ、なんかとりとめなくなってしまって済みません。これからもちょくちょく寄らせて頂きますので、よろしくお願いいたします。
Commented by 駆け出し at 2008-04-16 01:37 x
国の政策と言っても,現時点ではそこまで一貫したものはないと思います。文科省にとっては省益が絡みますから,国立大学は出来るだけ生かさず殺さず,現状維持で行きたいというのが本音でしょう。そこで暫定評価でも,全国一律で相対評価をするのではなく,大学を性質に応じていくつかのグループに分け,その中で評価を行うことになっているようです。そうすると,大規模研究大学の中でもプラスマイナスが出る可能性があります。将棋の順位戦のようなものをイメージすればいいかも知れません。ただこれには「選択と集中」を言う財務省や経産省は反対でしょうから,各大学からの報告書が揃った後,綱引きになるのでしょう。最終的には,大規模研究大学の予算を少しずつ増やし,他の多くの大学の予算を(つぶれない程度に)それなりに削るという形で手打ちになるかも知れません。今文科省は,暫定評価の制度を作ってはみたものの,どこに落としどころを見出すか,思案しているところではないかと思います。まあどの方向に進むにしても,高等教育予算の総額が増えず,現在のパイをどう配分するかという次元で議論される以上は,未来が明るいようには思えません。
by stochinai | 2008-04-14 23:06 | 大学・高等教育 | Comments(5)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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