2008年 05月 13日
サイエンス・ドラマ
サイエンス・フェアリーに続いて、北海道のコミュニケーター・シーンに新しいキャラクターが誕生しました。環境探偵ピエール福間です。
昨日、ご紹介した環境サスペンス「豊平川に秘められた過去」を見てまいりました。参加してきたのではなく、「見てきた」という表現を使ったところにニュアンスを感じ取っていただけると幸いです。
マントをまとった探偵ピエールは最初からテンション全開で、狂言回しを演じていました。逆に、観客としてはいったん中に入りそびれると、まるでNHKの教育テレビの番組を眺めているような位置に立っている自分を見つけてしまいます。
と、最初はちょっと引き気味に見ていた私ですが、探偵ピエールと彼に次々と引き出されて来る現場の研究者のやりとりがなかなか良い味を出し、だんだんと会場が彼らのペースに引き込まれていくのをみているうちに、リラックスできてきました。
ゲストが3人もいて、一人だけが長々と出演する機会がないので、ダラダラと間延びすることなく、良いテンポで前半が終了しました。10分間の休憩のあとの証言者に対する質問タイムも予め仕込んであったのかと思われるくらい(そうだったのかも?)、主催者が期待していたような質問が次々と途切れなく寄せられ、それに対する証人研究者もとても手際よくやりとりしていました。
ゲストの方々が、いずれも素人っぽいながらも素晴らしいキャラだったのが、ピエール福間という「色物」だけが遠くへ飛んでいってしまうことを留めていたように思います。
というわけで、今日は間違いなくサイエンスカフェの新しい形(サイエンス・ドラマ)が提案されたのだと感じられ、この後の発展の予感を垣間見ることもできましたが、残念ながら「シナリオ」の作り込みがいまいちだったために、肝腎の「サスペンス」が生かされなかったと感じられました。
そもそも、事件が「豊平河畔で発見された木彫りのサケ」だった(どこが事件?)というところに無理がありました。しかも、最後までその木彫りのサケの写真すら提示されません。最低でも、その証拠品を前にストーリーが展開して欲しかったと思いました。しかも、最初にサケが出たものの、その後の証人の誰のお話にもサケが登場しないのです。私は、ずっとそのことが気になって、せっかくのゲストの方々のおもしろい話にもいまひとつ集中できませんでした。
サケさえ出てこなければ、豊平川の川底がその中にすむ水生昆虫によって季節ごとに変化するという話や、河畔には洪水の度に更新される一斉林という高さの揃った河畔林ができることや、豊平川の上流の川底は8000年前に数百メートルの海底だったことなど、豊平川をめぐるとてもおもしろい話を素直に楽しめた気がします。
そう考えると、今回の「失敗」は無理に作られた事件そのものだったのではないかと感じられます。しかし、だからといって水生昆虫と海底化石と河畔林をつなぐ「サスペンス」を作り上げることができるとしたら、それはベストセラーサスペンス作家になれるようなすごい才能です。カフェの運営者の中に、そうした才能を持っている人がいるならば良いですが、そうでなければやはり企画にちょっと負担が大きすぎたのではないかと惜しまれます。
最後の最後になってようやく木彫りのサケが再登場したのですが、サスペンス・ドラマの最後に期待される謎解きの後のストンと落ちろ爽快感は得られませんでしたし、結末を作ることを失敗した映画のように「次回へと続く」で終わったのはちょっと、放り投げられた感じです。
アイディアは素晴らしかったし、探偵ピエールも3人のゲストも最高でした。スキルの高い運営スタッフもさすがにCoSTEP3年間の成果が充分に感じられる厚さがあり、安心して見ていられました。
このアイディアをほんとうにおもしろいと思われるところまで洗練していこうと思ったら、NHKの作成スタッフとかでんじろうオフィスのスタッフが必要だと感じられます。アマチュアが運営するサイエンス・ドラマにはもうちょっと違った方向を探るのが良いのかも知れません。
と、いろいろと辛口のことも書きましたが、ナイス・チャレンジには惜しみない拍手を送りたいと思います。
お疲れさまでした。
昨日、ご紹介した環境サスペンス「豊平川に秘められた過去」を見てまいりました。参加してきたのではなく、「見てきた」という表現を使ったところにニュアンスを感じ取っていただけると幸いです。
マントをまとった探偵ピエールは最初からテンション全開で、狂言回しを演じていました。逆に、観客としてはいったん中に入りそびれると、まるでNHKの教育テレビの番組を眺めているような位置に立っている自分を見つけてしまいます。
と、最初はちょっと引き気味に見ていた私ですが、探偵ピエールと彼に次々と引き出されて来る現場の研究者のやりとりがなかなか良い味を出し、だんだんと会場が彼らのペースに引き込まれていくのをみているうちに、リラックスできてきました。
ゲストが3人もいて、一人だけが長々と出演する機会がないので、ダラダラと間延びすることなく、良いテンポで前半が終了しました。10分間の休憩のあとの証言者に対する質問タイムも予め仕込んであったのかと思われるくらい(そうだったのかも?)、主催者が期待していたような質問が次々と途切れなく寄せられ、それに対する証人研究者もとても手際よくやりとりしていました。
ゲストの方々が、いずれも素人っぽいながらも素晴らしいキャラだったのが、ピエール福間という「色物」だけが遠くへ飛んでいってしまうことを留めていたように思います。
というわけで、今日は間違いなくサイエンスカフェの新しい形(サイエンス・ドラマ)が提案されたのだと感じられ、この後の発展の予感を垣間見ることもできましたが、残念ながら「シナリオ」の作り込みがいまいちだったために、肝腎の「サスペンス」が生かされなかったと感じられました。
そもそも、事件が「豊平河畔で発見された木彫りのサケ」だった(どこが事件?)というところに無理がありました。しかも、最後までその木彫りのサケの写真すら提示されません。最低でも、その証拠品を前にストーリーが展開して欲しかったと思いました。しかも、最初にサケが出たものの、その後の証人の誰のお話にもサケが登場しないのです。私は、ずっとそのことが気になって、せっかくのゲストの方々のおもしろい話にもいまひとつ集中できませんでした。
サケさえ出てこなければ、豊平川の川底がその中にすむ水生昆虫によって季節ごとに変化するという話や、河畔には洪水の度に更新される一斉林という高さの揃った河畔林ができることや、豊平川の上流の川底は8000年前に数百メートルの海底だったことなど、豊平川をめぐるとてもおもしろい話を素直に楽しめた気がします。
そう考えると、今回の「失敗」は無理に作られた事件そのものだったのではないかと感じられます。しかし、だからといって水生昆虫と海底化石と河畔林をつなぐ「サスペンス」を作り上げることができるとしたら、それはベストセラーサスペンス作家になれるようなすごい才能です。カフェの運営者の中に、そうした才能を持っている人がいるならば良いですが、そうでなければやはり企画にちょっと負担が大きすぎたのではないかと惜しまれます。
最後の最後になってようやく木彫りのサケが再登場したのですが、サスペンス・ドラマの最後に期待される謎解きの後のストンと落ちろ爽快感は得られませんでしたし、結末を作ることを失敗した映画のように「次回へと続く」で終わったのはちょっと、放り投げられた感じです。
アイディアは素晴らしかったし、探偵ピエールも3人のゲストも最高でした。スキルの高い運営スタッフもさすがにCoSTEP3年間の成果が充分に感じられる厚さがあり、安心して見ていられました。
このアイディアをほんとうにおもしろいと思われるところまで洗練していこうと思ったら、NHKの作成スタッフとかでんじろうオフィスのスタッフが必要だと感じられます。アマチュアが運営するサイエンス・ドラマにはもうちょっと違った方向を探るのが良いのかも知れません。
と、いろいろと辛口のことも書きましたが、ナイス・チャレンジには惜しみない拍手を送りたいと思います。
お疲れさまでした。
ピエールさんの出現に、サイエンス・フェアリーも負けていられないな。と感じました。
紀伊国屋でのサイエンスカフェは、3年間の積み重ねで安定してきた分、ワクからはみ出すような思い切った企画がなかなか見られないなと思っていたので、今回のチャレンジ精神はホントに素晴らしかったと思いました。
stochinai様の辛口コメントも含めて、大変勉強になるカフェでした。
紀伊国屋でのサイエンスカフェは、3年間の積み重ねで安定してきた分、ワクからはみ出すような思い切った企画がなかなか見られないなと思っていたので、今回のチャレンジ精神はホントに素晴らしかったと思いました。
stochinai様の辛口コメントも含めて、大変勉強になるカフェでした。
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会場にお越し頂きありがとうございました。
おっしゃるとおり、シナリオの作り込み、ピエールのキャラ設定などまだまだ工夫の余地の多いが多いまま、スタートいたしました。今後も精進いたします。
今回のテーマの一つとして、「サイエンスカフェの場だけで、完結するのではなく、その後もブログや懇親会の場を通して続いていくもの」というねらいも持っております。
今後環サスブログにて、今回の事件に関わる情報を出して行きたいと思いますので、そちらの仕掛けについても、ご注目頂き、コメントをいただけると幸いです。
貴重なコメントも今後に向けた参考とさせて頂きます。
おっしゃるとおり、シナリオの作り込み、ピエールのキャラ設定などまだまだ工夫の余地の多いが多いまま、スタートいたしました。今後も精進いたします。
今回のテーマの一つとして、「サイエンスカフェの場だけで、完結するのではなく、その後もブログや懇親会の場を通して続いていくもの」というねらいも持っております。
今後環サスブログにて、今回の事件に関わる情報を出して行きたいと思いますので、そちらの仕掛けについても、ご注目頂き、コメントをいただけると幸いです。
貴重なコメントも今後に向けた参考とさせて頂きます。
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stochinai at 2008-05-16 21:13
ピエールさんはお人柄が良くファンが多いので、この試みは今後の展開が期待できると思っています。お手伝いもせずに、批評だけするのは心苦しいのですが、咲いてでもウォッチだけは続けさせていただきたいと思います。これから何が飛び出してくるのか、楽しみです。
by stochinai
| 2008-05-13 22:10
| CoSTEP
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Comments(3)