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カエルとサンショウウオの missing link 発見!

 現存の両生類はカエルなど尾のない無尾類、サンショウウオ・イモリなど尾のある有尾類、そして手足のないアシナシイモリなどの無足類の3つのグループだけです。その中でも、無尾類と有尾類は近縁で近い(といっても、2億年から3億年のレベル)過去に共通の祖先がいたという説が有力なのですが、これまでその化石が発見されていませんでした。こういう仮想の生物を「失われた環 missing link」と呼びます。

 本日発行されたNatureに、今日のカエルとサンショウウオの共通祖先と思われる動物の化石が発見されたという論文が出ています。つまり、missing link が発見されたという大ニュースです。

 カナダのカルガリー大学獣医学部の研究者達が発表した研究結果は、カルガリー大学のホームページでプレス・リリースされています。

 Missing link found

 この人が論文の筆頭著者です。若い人ですね。いい顔してます。
カエルとサンショウウオの missing link 発見!_c0025115_207949.jpg
 手に持っているのが問題の共通祖先の化石です。意外と小さいので、驚きました。両生類の大元の祖先であるイクチオステガなどは、頭からしっぽの先まで1メートルもあるのですが、それよりも1億年くらい後に出てきた今回のゲロバトラクスという共通祖先が現存のアホロートルに近いくらいの大きさだということに、私は感動しております。

 カルガリー大学のホームページに、生きているゲロバトラクスの想像図が載っています。横にあるトクサのような植物に止まっているのは、彼らの餌になったと考えられる当時のカゲロウの仲間でしょうか。
カエルとサンショウウオの missing link 発見!_c0025115_2015812.jpg
 実は、化石を見ると尾はあまりはっきりと残っていないので、この絵でも微妙な長さに書いてあります。Nature論文の図を転載(引用)させてもらいます。

Nature 453, 515-518 (22 May 2008) | doi:10.1038/nature06865; Received 23 October 2007; Accepted 25 February 2008
A stem batrachian from the Early Permian of Texas and the origin of frogs and salamanders

カエルとサンショウウオの missing link 発見!_c0025115_20194562.jpg
 今までDNAの塩基配列を調べた研究からカエルとサンショウウオの祖先は石炭期後期(3億年よりも前)に分岐したと言われていましたが、この化石の発見によってそれがペルム紀の初期から中期(2億4千万年から2億7千万年前)と、より最近のことであると修正されることになります。

  この化石、実は1995年にテキサスで発掘されていたものなのですが、10数年経ってようやく研究結果となって出てきました。研究って、やっぱり時間のかかるものなのですが、奇しくも今年は「国際カエル年」ですので、この発表が今年になったのには何か意味があるのかもしれません。
by stochinai | 2008-05-22 20:39 | 生物学 | Comments(0)

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