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教職員の大増員はポスドク問題への対応になりうるか

 先日、財務省が国立大学の授業料を私立並みにして、教職員を減らすと大倹約ができるというアドバルーンを上げていましたが、こんどは文科省がアドバルーンを上げているようです。

 4年で教職員2万5000人増 文科省原案 
 政府が初めてつくる教育振興基本計画に向けた文部科学省の原案の概要が分かった。2008~12年度に教職員を2万5千人程度増やし、国内総生産(GDP)に占める教育への公的支出を今後10年で現在の3.5%から5.0%を上回る水準を目指す。
 実現されるのなら、基本的にはとても良いことだと思います。しかし、予想どおり「財政支出を伴う数値目標には財務省が強い抵抗を示しており」ということなので、提案どおりにはならないだろうということが現時点でも見え見えなのが、かなり心配です。

 しかし、財務省が抵抗しているにもかかわらず、教職員定数で具体的な数値が出てきたところは文科省の意気込みを表しているのではないか、とも感じられます。
来年度から段階的に実施される改訂指導要領を円滑に進めるため、(1)授業増への対応で1万3300人(2)英語、理科、算数・数学など、特に授業が増える教科での少人数指導のために8800人(3)小学校高学年で導入される「外国語活動」のため2400人――といった試算を根拠に増員を求めている。これを実現するには、地方負担とあわせ年間約1750億円の支出が必要になる。
 特に(2)のところは、秋田県で博士を今年度から教員に迎え入れて話題になったことと考え合わせると、少しは期待が持てるような気もします。秋田では今年も博士の教員を募集するようですし、博士という「特殊資格」を持っていることで必ずしも教員免許がなくても、全国各地の教育委員会が英断していただければおもしろいことになると思います。というわけで、「英語、理科、算数・数学など、特に授業が増える教科での少人数指導のために8800人」の中に、たとえば3000人でも博士を雇っていただけるというのであれば、博士にとっても朗報ですし、初等・中等教育にとっても変革のきっかけになることが期待できるのではないでしょうか。

 ところが、記事の最後にちょっと脱力することが書かれていまして、「行政改革推進法で10年度まで教職員の削減が定められているため、この数値を基本計画案に書き込むことは断念。13年度以降に取り組む」のだそうです。

 やっぱり、ただのアドバルーンなんでしょうか。
Commented by 参考ですが。。 at 2008-05-28 16:48 x
文部省の計画に対する財務省の対案が公開されていました。

財務省の財政制度等審議会 財政制度分科会(下記HP)
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseib200519.htm

の下記のファイルです。

http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseib200519/04_d.pdf

上記のp58を見ると、国立大学の支援の削減と、教員数の大幅削減案が出ています。P47には今後の枠組みがあります。
Commented by stochinai at 2008-05-29 07:55
 ありがとうございます。かなり刺激的な文言が並んでいます。1省庁の「案」にすぎないものがこんなに大々的に公開されることに問題はないのかと不思議になりますが、受け取る側のリテラシーが要求される例ですね。
Commented by holy at 2008-06-02 21:31 x
こちらでは、はじめまして。

関東の御三家らしい中高一貫の私立学校を卒業した大学の後輩が、
3人ほどいましたが、彼らは、「中学校や高校での授業が面白くて、
大学に@@の研究をしに来たのだ」と断言していて、びっくりしました。

さらに聞くと、「学校にいる3分の2は、博士号を持っている」だとか、
「高校の××先生は断層の研究もしていて、時々論文も書いている」とか
「私立高校の自由に授業が行なえる利点を生かして、半ば専門的な
"マニアック"な授業をしてくれる分、大学のほうがつまらない」だとか…
かれらは、大学でも研究などでも自主的に進めていく傾向がありました。

その話から、秋田県の決断はよかったんじゃないかなあと思いますし、
小学校の先生が理科の実験が苦手なのであれば、音楽教諭のように、
理科の実験の先生として専属で雇ってもらえれば、きっと面白い授業が
今より少ない負担で出来るのではないかなあと、期待してしまいます。

アドバルーンに終わって欲しくないなあと思っている企画です。
Commented by stochinai at 2008-06-02 22:30
 holyさん、はじめまして。
 書いておられるような高校教師の生活に、私もあこがれる部分があります。昔から、あちこちの高校に理科の名物教師の方がいらっしゃって、関東周辺の某先生の教えを受けて北海道大学の生物に進学してきた高校生がたくさんいるという話も聞いたことがあります。私の出た高校にも、「大学の先生にいろいろと教えている地学の先生」と噂されている方がいらっしゃっいました。高校と大学の教員も相互に流動できるようになると良いのではないかとも思います。
by stochinai | 2008-05-23 21:25 | 教育 | Comments(4)

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