2008年 06月 02日
死なない教育、殺さない教育
5月26日に教育再生懇談会が出した「これまでの審議のまとめ - 第一次報告 -」に6つのポイントが書かれています。これこそが、彼らの考える教育「再生」の処方箋ということになるのでしょうか。
特に、6などはつい先日の中国大震災がなければ出てこなかったものではないでしょうか。5だって、この夏のサミットを横目ににらんで出てきたものではないかと勘ぐられそうなものです。1は携帯のフィルタリングのことしか言っておらず、考えればいくらでも出てくることが予想されるありとあらゆる「有害情報」(私には、政治の混迷などが、教育的に見るともっとも有害な情報のひとつに思われます)は無視しています。学校の耐震化などは、わざわざ教育再生の名の下にやるべきものではなく、議論の余地なく最優先で行われるべきものでしょう。
安倍内閣の時から言われていたように、思いつきで次から次へと皮相な話題が飛び交う、飲み屋の親父談義から一歩も出ていないことがわかる、とても恥ずかしい提言だと思います。
こんな枝葉末節の話題をあたかも重要課題のように提言し、それに基づいて教育政策が変更されたとしても、いずれも3年もたたないうちに方向転換することが今から予想されるようなものばかりで、私が採点することを許していただけるなら35点くらいにしかならず、当然評価としては「不可」しかさしあげることはできません。
そんなことよりも、今の教育でもっとも欠けているもののひとつが、「死なない教育、殺さない教育」ではないかと、最近考えています。
もちろん自殺するのは子どもだけではありませんし、子どもが直接手を下して誰かを殺すということもきわめて少ない事例であるとは思います。それでも、日本全国で、毎日100人くらいもの人が自殺し、毎日のように殺人事件が報じられている現状を考えると、今の日本人には「死んではいけない、殺してはいけない」という刷り込みが足りないのではないかと思えてなりません。
おそらく、幼稚園から小学生の頃に「自ら死ぬということがいけないことで、殺すということはもっといけないこと」だということが、あたかも本能のごとくに自分の行動をしばるような刷り込みを行うことが、民主主義社会における教育のもっとも大事なことのひとつだと確信します。
読み・書き・そろばんも大事な生きる力ですが、たとえそうしたことにがうまくできなくても、私は「死なない、殺さない」人を信頼します。
教育再生懇談会のみなさんも、つまらない目先の目標を探すより、人間として大切なものを身につけるための教育とはなんなのか、もう一度振り出しに戻ってやり直してみてはどうでしょうか。
1 子どもを有害情報から守るもちろん、どれも悪いことだとは思いませんが、これが60年以上を経た日本の戦後教育を「再生」するための決定打になるのでしょうか。どれもこれもこの半年あるいはせいぜいが数年のうちに急に問題として浮上してきたことばかりで、とても戦後60年の教育の総決算の課題だとは思えないものばかりです。
2 若い保護者の子育てを支える
3 「留学生30万人計画」に国家戦略として取り組む
4 英語教育を抜本的に見直す
5 実践的な環境教育を展開する
6 学校の耐震化を早急に進める
特に、6などはつい先日の中国大震災がなければ出てこなかったものではないでしょうか。5だって、この夏のサミットを横目ににらんで出てきたものではないかと勘ぐられそうなものです。1は携帯のフィルタリングのことしか言っておらず、考えればいくらでも出てくることが予想されるありとあらゆる「有害情報」(私には、政治の混迷などが、教育的に見るともっとも有害な情報のひとつに思われます)は無視しています。学校の耐震化などは、わざわざ教育再生の名の下にやるべきものではなく、議論の余地なく最優先で行われるべきものでしょう。
安倍内閣の時から言われていたように、思いつきで次から次へと皮相な話題が飛び交う、飲み屋の親父談義から一歩も出ていないことがわかる、とても恥ずかしい提言だと思います。
こんな枝葉末節の話題をあたかも重要課題のように提言し、それに基づいて教育政策が変更されたとしても、いずれも3年もたたないうちに方向転換することが今から予想されるようなものばかりで、私が採点することを許していただけるなら35点くらいにしかならず、当然評価としては「不可」しかさしあげることはできません。
そんなことよりも、今の教育でもっとも欠けているもののひとつが、「死なない教育、殺さない教育」ではないかと、最近考えています。
もちろん自殺するのは子どもだけではありませんし、子どもが直接手を下して誰かを殺すということもきわめて少ない事例であるとは思います。それでも、日本全国で、毎日100人くらいもの人が自殺し、毎日のように殺人事件が報じられている現状を考えると、今の日本人には「死んではいけない、殺してはいけない」という刷り込みが足りないのではないかと思えてなりません。
おそらく、幼稚園から小学生の頃に「自ら死ぬということがいけないことで、殺すということはもっといけないこと」だということが、あたかも本能のごとくに自分の行動をしばるような刷り込みを行うことが、民主主義社会における教育のもっとも大事なことのひとつだと確信します。
読み・書き・そろばんも大事な生きる力ですが、たとえそうしたことにがうまくできなくても、私は「死なない、殺さない」人を信頼します。
教育再生懇談会のみなさんも、つまらない目先の目標を探すより、人間として大切なものを身につけるための教育とはなんなのか、もう一度振り出しに戻ってやり直してみてはどうでしょうか。
自殺を防ぐ教育が重要である点には同意できるのですが,私は,幼稚園~小学校の頃の刷り込みの効果には,疑問を呈さざるを得ません.
それよりも,自殺が引き起こされる仕組みや,その回避方法・相談先を高校教育で取り込んだ方が効果的なように思います.自殺の原因の大部分は,うつ病・借金・人間関係(いじめ)などであるはずです.まず,自殺願望を持った時には,「うつ病」によって引き起こされている可能性があり,客観的・合理的に考えれば全く自殺する必要性はないのに自殺願望を持ってしまう場合があることを周知する方が先だと思います.特に,過労状態では,ストレスなどによって,個人の性格などに関わらず自殺願望が発生する可能性があることを周知すべきでしょう.過労状態で自殺願望が出てきたら,自分の判断そのものが信頼できない場合があるので,とにかく休暇を取って過労状態を脱出することを教え込むだけで,だいぶ違うように思います.
それよりも,自殺が引き起こされる仕組みや,その回避方法・相談先を高校教育で取り込んだ方が効果的なように思います.自殺の原因の大部分は,うつ病・借金・人間関係(いじめ)などであるはずです.まず,自殺願望を持った時には,「うつ病」によって引き起こされている可能性があり,客観的・合理的に考えれば全く自殺する必要性はないのに自殺願望を持ってしまう場合があることを周知する方が先だと思います.特に,過労状態では,ストレスなどによって,個人の性格などに関わらず自殺願望が発生する可能性があることを周知すべきでしょう.過労状態で自殺願望が出てきたら,自分の判断そのものが信頼できない場合があるので,とにかく休暇を取って過労状態を脱出することを教え込むだけで,だいぶ違うように思います.
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stochinai at 2008-06-03 07:27
コメントありがとうございます。おっしゃることに同意です。私がこれを書いていた時には、中高生の自殺を頭に置いていたので、彼らも「うつ状態」から自殺している可能性もありますが、それよりもっと「衝動的」なもののような気がして、どんな時でも「死なない行動を無意識に」とるように教育するということも大切ではないかと思ったのです。私は教育心理学の専門家でもなんでもないので、そういう意味では私の言い分も教育再生懇談会と同じく「おやじの戯言」に過ぎないとも言えるのですが、おやじの戯言も少数ではなく国全体の規模でやれるようになると少しは事情が良くなるのではないかと思っています。
これからもよろしくお願いします。
これからもよろしくお願いします。
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食い詰め博士
at 2008-06-03 19:49
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留学生30万人
・・・・げんなり。
まず現在の留学生と国内院生の待遇格差をどうにかしろよ。
留学生だけ優遇して、国内の学生の悲惨な状況をどうにかしないなら
教育再生どころか、教育破滅に向けて驀進するね。
・・・・げんなり。
まず現在の留学生と国内院生の待遇格差をどうにかしろよ。
留学生だけ優遇して、国内の学生の悲惨な状況をどうにかしないなら
教育再生どころか、教育破滅に向けて驀進するね。
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stochinai at 2008-06-03 20:10
教育というものを重んじない国の中で、文科省の力があまりにも弱いので、次から次へと各省庁におもねった愚策が繰り返されるという負のスパイラルになっているのではないでしょうか。
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rib
at 2008-06-03 21:32
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自殺するような弱い人間は淘汰しようってことなのでは?
by stochinai
| 2008-06-02 23:26
| 教育
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Comments(5)