2008年 06月 11日
アジ化ナトリウム混入事件
秋葉原事件があったので、ほとんど表に出てこなかったニュースですが、私にはどちらも深いところではつながっているように思える事件です。
アジ化ナトリウム:飲み物に混入 岡山大教授が一時入院
今でこそ、パワハラ・セクハラ事例は刑事事件として表に出てくることもあるようになりましたが、当時はそうしたことがあっても99.9%告発などということができる状況ではありませんでしたので、卑劣と言われようとも毒物で「仕返し」するということが起こっても不思議がない状況が全国の研究現場を覆っていたのだと思います。
では、今はその状況は改善されているのでしょうか。あの頃は、研究室でただ働きをさせられていた人がたくさんいましたが、現在はポスドクなどとして有給で雇われている人が多いので、何かがあってもお金に免じて我慢できるというようなこともあるのかもしれません。しかし、それを除くとあまり状況は変わっていないところも多いと思えます。
先日も、横浜市大の医学部で大々的に博士号審査に対する謝礼金のことが表に出てきていましたけれども、要するにそのあたりは10年前と(50年前と?)それほど状況が変わっていないというところも多いと思われますので、当時と同じようにアジ化ナトリウムがコーヒーや砂糖に混入されるという事件が起こることは、今でも可能性としては当然あり得るだろうと思われます。
10年前は、連鎖的に同じような事件が起こったのですが、今回はそれ以上に衝撃的な秋葉原事件がありましたので、逆にそれが大学などでの事件発生の抑止力になるかもしれません。
秋葉原事件と大学の事例では共通点もありますが、大学の場合には「敵」が特定されることが多いので、「誰でも良いから殺す」というような流れにはおそらくなりにくいだろうと思います。秋葉原の事件の場合には、ともかく自分以外は全員が敵であるというところまで追いつめられていたようですので、最悪の行動が引き起こされてしまいました。
たくさんの方がおっしゃっておられることですが、ひとつの事件が起こったら同じような事件を起こしうる予備軍はその何十倍何百倍いると考えるのが冷静な視点だと思います。つまり、対症療法ではなく、そうした「患者予備軍」の発症を防ぐような社会政策が行われなければ、はえたたきでゴキブリを叩いているのと同じで、出てきたゴキブリを殺すことはできても、ゴキブリの出現を抑えることはできないでしょう。
どうしたら、そのような人間が出てこなくなるのかということがわからずに、刀狩りやネット規制しか思いつかないような方々には、速やかに政治の場から去って欲しいと思います。
明らかに判断は間違っているのですが、彼らはこの国ではすでに内戦が起こっているという認識に追い込まれているような気がしてなりません。自殺する人が毎年3万人以上出ているこの国ですから、人を殺そうと思っている人も同じくらいいると考えるべきでしょう。
そう考えると、自殺を防止することと、殺人を防止することには同じような対策が有効なのかもしれないとも思えます。
そろそろすべてが自己責任の自由競争時代が持たなくなってきたということだと思います。
アジ化ナトリウム:飲み物に混入 岡山大教授が一時入院
岡山大は9日、薬学部の研究室で先月20日、医歯薬学総合研究科(薬学系)の50代男性教授が意識もうろうとなり、室内にあった飲み物から毒物のアジ化ナトリウムが検出されたと発表した。10年ほど前に、日本中の大学や企業などの研究室で連鎖的にこれと同じような事件が起こったことを思い出します。関係者が自殺したりしたケースもありましたが、アジ化ナトリウムで死に至る例がなかった(?未確認)こともあり、ほとんどの場合犯人が特定されることはなかったように記憶しています。しかし一方、刑事事件として犯人が挙がることはなくても、現場の周辺の人からみるとなぜそのような事件が起こったのかとか、その事件の実行犯と思われる人もほとんどの場合において特定されているとも聞きます。
・・・・・
大学によると、20日午前7時20分ごろ、教授が研究室でしゃがみ込んでいるのを大学院生が発見した。教授の胃からはアジ化物が、研究室の飲み物からはアジ化ナトリウムが検出された。
研究室は夜間施錠されており、教授は午前7時前に自分で鍵を開けて入った後、コーヒーをいれて飲んだという。
今でこそ、パワハラ・セクハラ事例は刑事事件として表に出てくることもあるようになりましたが、当時はそうしたことがあっても99.9%告発などということができる状況ではありませんでしたので、卑劣と言われようとも毒物で「仕返し」するということが起こっても不思議がない状況が全国の研究現場を覆っていたのだと思います。
では、今はその状況は改善されているのでしょうか。あの頃は、研究室でただ働きをさせられていた人がたくさんいましたが、現在はポスドクなどとして有給で雇われている人が多いので、何かがあってもお金に免じて我慢できるというようなこともあるのかもしれません。しかし、それを除くとあまり状況は変わっていないところも多いと思えます。
先日も、横浜市大の医学部で大々的に博士号審査に対する謝礼金のことが表に出てきていましたけれども、要するにそのあたりは10年前と(50年前と?)それほど状況が変わっていないというところも多いと思われますので、当時と同じようにアジ化ナトリウムがコーヒーや砂糖に混入されるという事件が起こることは、今でも可能性としては当然あり得るだろうと思われます。
10年前は、連鎖的に同じような事件が起こったのですが、今回はそれ以上に衝撃的な秋葉原事件がありましたので、逆にそれが大学などでの事件発生の抑止力になるかもしれません。
秋葉原事件と大学の事例では共通点もありますが、大学の場合には「敵」が特定されることが多いので、「誰でも良いから殺す」というような流れにはおそらくなりにくいだろうと思います。秋葉原の事件の場合には、ともかく自分以外は全員が敵であるというところまで追いつめられていたようですので、最悪の行動が引き起こされてしまいました。
たくさんの方がおっしゃっておられることですが、ひとつの事件が起こったら同じような事件を起こしうる予備軍はその何十倍何百倍いると考えるのが冷静な視点だと思います。つまり、対症療法ではなく、そうした「患者予備軍」の発症を防ぐような社会政策が行われなければ、はえたたきでゴキブリを叩いているのと同じで、出てきたゴキブリを殺すことはできても、ゴキブリの出現を抑えることはできないでしょう。
どうしたら、そのような人間が出てこなくなるのかということがわからずに、刀狩りやネット規制しか思いつかないような方々には、速やかに政治の場から去って欲しいと思います。
明らかに判断は間違っているのですが、彼らはこの国ではすでに内戦が起こっているという認識に追い込まれているような気がしてなりません。自殺する人が毎年3万人以上出ているこの国ですから、人を殺そうと思っている人も同じくらいいると考えるべきでしょう。
そう考えると、自殺を防止することと、殺人を防止することには同じような対策が有効なのかもしれないとも思えます。
そろそろすべてが自己責任の自由競争時代が持たなくなってきたということだと思います。

私が以前勤務していた研究所でも、アジ化ナトリウムの混入事件がありました。とかく噂のある研究室での事件でした。研究所はカードキーで人の出入りが管理されていたので、ほぼ確実に内部の人間による犯行だったと思います。警察もその線で動いたと聴いていましたが、結局、犯人の特定には至らなかったようです。しかし、研究所の一部の人達には「あいつに違いない」という確信めいたものはありました。
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by stochinai
| 2008-06-11 22:10
| 大学・高等教育
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