5号館を出て

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不耕起農法

 今月号の Scientific American に、不思議な記事を見つけました。ネットでも冒頭は読めます。

 No-Till: How Farmers Are Saving the Soil by Parking Their Plows

 No-Tillというのは文字通り、「耕さない」ということだとわかりましたが、耕さない農業というのがありうるとは知りませんでした。

 雑誌に載っている記事の副題は上のものとはちょっと違いますが、「静かな革命」というのはかなり強力なネーミングです。
不耕起農法_c0025115_21123641.jpg
 記事によると、全世界の農地の7%近くが耕さない農地として使われているのだそうで、もちろん利点があるから行われているのだと思います。

 耕さないことの利点
  農地がくずれない
  水持ちが良い
  土が「健康」になる
  ガソリンや労働力が軽減できる
  農地からの土や肥料が流出して水を汚染することが少ない
  炭素の保持量が多い

 と、かなりエコであることが強調されています。もちろん、それとひきかえに欠点もあります。

 耕さないことの欠点
  旧来の農法からの転換が難しい
  必要な農機具が高価である(どんな機具がいるのでしょう?)
  除草剤を大量に使わなければならない
  雑草や病害虫の発生が予想外のパターンで起こる可能性がある
  初期には窒素肥料が大量に必要になるかもしれない
  作物の育成が遅く、収量も少ない可能性がある

 と、いろいろ難しいこともありそうです。

 特に除草剤を使わなければならないというところは、かなり大きなポイントになると思われ、アメリカなどでは、この農法は除草剤と除草剤耐性遺伝子組み換え作物の存在によって支えられているのかもしれないと考えると、諸手を挙げて賛成できるものではないのかもしれません。

 調べてみると「不耕起農法」や「不耕起栽培」という日本語もありました。日本でも、すでに実践している人も、プロアマ含めてかなりいらっしゃるようです。もちろんかなりの少数派とお見受けしましたが、少子高齢化が進み、休耕田や休耕畑があちこちに見られる日本では、もう少し真剣に考えてみても良いやり方なのかもしれないと感じました。

 私はズブの素人なので、栽培植物を植えるためにはしっかりと耕した柔らかい土が必須なものだと信じておりましたが、何年か前から余った苗などを、捨てるよりはマシという気持ちで、まったく耕してもいない砂利地に植えたりしたものが、意外なほど見事に育ったことを何度か経験しておりましたので、この記事を読んでなんとなく膝を打ちたい気持ちになっております。

 植物は意外と強いものです。

 そしてなにより、省力で楽そうなところがいいです。少し調べたり、実践したりしてみたくなりました。

 まだまだ、知らない世界がたくさんあります。
Commented by takuroshinano at 2008-06-26 05:41
不耕起栽培が大々的に取り入れられている国の一つにブラジルがあります。かなり以前からラウンドアップを多用した省力栽培法が用いられています。5年ほど前に二ヶ月間ブラジルの大豆の生産地をめぐる調査をしたことがあります(8000kmくらい移動しました)。農家の話を聞くと、不耕起といっても農地を何年か毎(ちょっと記憶がはっきりしないのですが5−10年だったと思いました)にしっかりと起こす必要があるといっていました。単年度ではなく複数年度で考えた場合の不耕起の影響はどうなのでしょうか?また、お金は通常の耕作農業よりもかかるんだと皆さん指摘していました。ただ時間に余裕ができるので楽だということです。
市民農園レベルでの栽培と、見渡す限りの農地を使った場合の栽培とではずいぶん違うスタンスが必要なのかと思いました。
Commented by stochinai at 2008-06-26 20:21
 いろいろうかがうと日本(日本人?)には向かないのかな、という気もしてきます。余った農地を手抜きで利用するにはいいかもと思った私は、いかにも素人だなあと自分で笑っています。
by stochinai | 2008-06-25 21:42 | つぶやき | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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