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オオカミ少年になる津波警報

オオカミ少年になる津波警報_c0025115_20593798.jpg
 USGSから、写真をお借りしました。

 今朝の地震は札幌でも結構揺れました。ゆっくりとした横揺れが、かなり長く続いた気がします。私はトイレに座っていたのですが、飛び出しはしませんでした。最近は言われなくなりましたが、私が子どもの頃は、地震になったら家の中ではトイレが一番安全な場所だと教えられていたのものです。今の家屋構造ではわかりませんが、昔は狭いトイレを作る時でも四方に柱が入っていたようで、半畳ほどのところが4本の柱で守られているので安全性が高いという意味だったのだと思います。

 今回は震央が海の中にある地震で大きかったので、例によってすぐに津波警報注意報が出ました。しかし、これもまた例によって津波と呼べるほどの潮位の変化もなく、比較的早く解除になりました。

 地震直後に、海岸や港を撮した映像がテレビで流れていましたが、そこには何事もなかったかのように複数の人が動いている様子が確認できました。それにもかかわらず、テレビのアナウンサーは「海岸近くにいる人は、すぐに非難してください。海岸には絶対に近寄らないでください」と繰り返していましたが、最近の地震の時にはいつもこの状態が繰り返されている状況が多すぎるようで、気になっています。

 なぜ、警報や注意報が出されているのに津波が来ないことが多いのでしょうか。

 まず、第一に今の科学では津波の予測がほとんど不可能なので、ともかく出しておこうという姿勢なのではないか、ということが考えられます。第二に、津波の高さやそれが来る確率はほぼ確実に予測されているのですが、万が一の危険性を考えて最悪のケースを「予測」として公表しているという可能性も考えられます。

 いずれにしても地震の後に出される津波警報がいつも空振りに終わるという経験を繰り返していると、人々は津波警報に反応しなくなると思います。

 もちろん、警報が出ても何も起こらないほうが良いとは思うのですが、警報が出ているにもかかわらず、かなり多くの人がそれを無視して行動し、あるいは海岸にいる人に対しても特に強く避難を指導あるいは強制するということも行われなくなくなっている、という状況があるのだとしたらまずいのはないでしょうか。

 このままでは、本当に大きな津波が来るという時にも人々が警報を軽く考えるようになってしまうと思います。

 そこで、津波警報を出す気象庁の方々に提案があります。もしも、津波が来るかどうかを正確に予測することが困難なのだとしたら、その限界を告白して欲しいのです。その上で、当たるかどうかわからないけれども、もしものことがあってはいけないので避難して欲しいと呼びかけるべきではないでしょうか。

 また、もしほとんど津波が来る恐れがないにもかかわらず、もしも悪い方にはずれた場合に責任を問われることを恐れて、いつも最大限の可能性にさらに上乗せしたような警報を出しているのだとしたら、それはやめて今の地震科学ではこれくらいの津波が来ることが予想されるけれども、最悪の場合にはこれくらいのこともあり得るので逃げることをおすすめしますというような注意を出すということにはできないのでしょうか。

 素人の私の判断では、どうも後者が当たっているような気がしています。今日も、津波の高さは50センチと予測されていましたが、実際に科学者の方々は5センチから50センチくらいという数値を出していたのではないでしょうか。それでも発表の時には最大の50センチと発表していたような気がしてなりません。そして、実際には科学者の予測どおり高いところでも20センチくらいと、誤差範囲くらいの潮位変化しか見られなかったというあたりが実態ではないのでしょうか。

 もちろん、これは地震や津波に関しては素人の私のたわごとですので、まったく的はずれなことを言っているかもしれませんが、人々が津波警報に関心を払わなくなっている現状は、とてもまずい、あるいは将来訪れるであろう本当の危機に対して危険な状況になっているのではないかと思い、少々挑発的になってしまったかもしれませんが気象庁および地球科学関係者のご意見をうかがいたく書いてみました。

 解説していただける方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。
Commented by jun at 2008-09-11 22:20 x
初めまして。

一度気象庁のホームページの解説を読んでいただいたらいかがでしょうか?
ttp://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq26.html#tsunami_3
ttp://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/know/tsunami/ryoteki.html
ttp://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/index_tsunamiinfo.html

このあたりのページを読んでいただけたら、どこに誤解があるのか
分かっていただけると思います。
Commented by stochinai at 2008-09-11 23:46
情報、ありがとうございました。

でも、やはりここを見る限りは予報がいつも大げさだったと言われても仕方がないのかな、と思ってしまいました。
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/tsunamihyoka/index.html
Commented by taronbe at 2008-09-12 00:13 x
今の気象庁のやり方がまずいとしても、残念ながら対案が全く思いつきません。確かなのは、「当たるかどうかわからないけれども、もしものことがあってはいけないので避難して欲しいと呼びかける」のでは現在より確実に状況が悪化するという事です。実際の住民がそれを聞いたら確実に混乱します。責任逃れしてるだけだろ、と言われてもしょうがない、万が一悪質な扇動者がいれば暴動になりかねません。それに呼びかけ方をいくら工夫しても呼びかける回数が減らせなければ狼少年効果は何の影響もうけないでしょう。
これはもう津波予測の精度が上がるような科学の進歩を待つしかしょうがない案件のように思います。
Commented by kuma at 2008-09-12 01:18 x
きょう出たのは,津波警報ではなく,津波注意報です。念のため,できれば訂正をおねがいします。
津波注意報の基準は,予想される津波の高さ0.5mというものです。もともとこれによる被害はないと考えられ,注意をしてほしいというものなのです。
ここでいう津波の高さというのは,その時刻の潮位に対して,どれほどの偏差が予想されるかということで,きょうの津波注意報発令時の,釧路港や花咲港の潮位は,かなり干潮に近かったので,仮に予測どおり0.5mの津波が来ても,満潮時よりも海面は低いはずで,被害の出る可能性はゼロでした。
問題は,NHKをはじめマスメディアの人たちが,このような基本的なことを伝えず,津波警報も津波注意報も同じように緊急っぽく報道してしまうことです。
NHKのカメラマンなどは,上空のヘリから,「家が流されたりしていません」とリポートしていましたが,あたりまえのことです。
今回のような経験が,津波警報があてにならないという間違ったイメージを独り歩きさせるのではないかと不安です。
Commented by stochinai at 2008-09-12 07:25
 kumaさん、大変によくわかりました。そして、私が注意報を警報と間違えてしまった理由も、気象庁ではなく報道する側に大きな問題があると納得できました。確かに地震の時のテレビの放送を見ていると、すぐにヘリコプターを飛ばして「どこかで大きな事故が起こらないか」とまるで被害を期待するような姿勢が見て取れます。
 「今回のような経験」が重なってきておりますので,すでに「津波警報があてにならないという間違ったイメージ」が「独り歩き」しているのは事実ではないでしょうか。そうだとすると、考えるべきことは、そうした状況をどうやって直していくかですね。
Commented by オオカミと少年 at 2008-09-15 15:04 x
幅のある推測でも不確実でも公表しなければ情報隠しとなります。危険に関する情報は全て公開すべきというのが、世論なのではないですか。私はtaronbeさんと同意見ですが、それでも最悪の事態を想定して情報を出すのが今の世の中の常識なのではないでしょうか。
疑わしきは危険を回避するように行動せよ、というのが事故米にしても、BSEにしてもタミフルにしても、世間が求めている常識ではないでしょうか。オオカミ少年になるから、混乱するから公開しない、という姿勢は批判されるのが現在の世間の常識ではないでしょうか(その常識が一般の人の常識か、マスコミによって作られた常識なのかは判りませんが)。
気象庁もjunさんのURLのように解説しているので、やはり伝える側の問題でしょう。
ニュースを伝えるプロではないstochinaiさんが問題意識を持っていて、さらに何とかしないといけないと意見表明しているのに、プロが問題意識を持っていないのなら、はなはだ甘い業界だと思います。
地震速報を流すことに関しては混乱が生じるから緊急放送はしたくないと抵抗していたマスコミ業界も、こういう話はずさんに扱っているということでがっかりです。他人に厳しく自分に甘い人たちなんですね。
by stochinai | 2008-09-11 20:31 | 科学一般 | Comments(6)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai