2008年 10月 23日
スコッチ・テープをはぐ時にX線が出るという大発見
スコッチテープを暗闇でリールからはぐ時に光が出るという話は、以前に聞いたことがあります。物理学の分野ではトリボルミネッセンス(摩擦ルミネッセンス)という現象として、400年も前にフランシス・ベーコンが発見していたことだそうです。ベーコンは砂糖のかたまりを爪でひっかくと光るとことを観察したそうです。YouTubeで探すと、水晶を爪でひっかいて(石英の)小石でこすって光らせているものがありました。
学問的にはプラスとマイナスに分けられた静電気が戻る時に光を発すると説明されています。
しかし、まさかそこでX線が出ているとは誰も思わなかったと思うでしょうが、実は1953年にロシアの研究者がそういうことを言っていたと、NatureNews の記事には書いてあって、今回 Nature の表紙にもなった論文を書いた研究者達もそのことは知っていながら疑っていたのだそうです。まあ、アイディアは借用したものとは言え、ここまできちんと証明したのですから立派だと思います。
Nature論文
Correlation between nanosecond X-ray flashes and stick–slip friction in peeling tape
この研究のミソは、真空中で実験をしたことで、真空でなければX線は出ませんから、悪くすると大騒ぎになりかねなかったスコッチ・パニックはそれで避けられるでしょう。とは言え、X線の強さは本格的で、歯医者さんで使うレントゲンフィルムを使って、指の骨を透視した写真が撮影されています。関節まではっきりと写っていますから、すごいものです。
どうしてX線が出るのかということは、現時点ではわからないのだそうですが、実験の様子を撮した次のビデオを見れば論文を読む必要はないかもしれません。こちらはNewScientistのサイトからたどりました。
それにしても、こんな理科実験に毛のはえたような、またとりあえず何の役にもたたないような研究を表紙にまでして大々的に取り上げるところが、Natureのいいところですね。
真空を作る機械やX線の測定器を除くと、基本的に身の回りにあるものだけでできる手作り実験ですから、理科少年に夢を与えるような研究だと言えるのではないでしょうか。
アイディアと Nature の遊び心に敬意を表します。
WIRED VISION SCIENCE & TECHNOLOGY に日本語に翻訳された解説記事があります。こちも是非ご覧下さい。実験室の内部を撮した写真が興味深いです。
「真空中で粘着テープを剥がすとX線生成」Nature誌掲載:動画と画像で紹介
学問的にはプラスとマイナスに分けられた静電気が戻る時に光を発すると説明されています。
しかし、まさかそこでX線が出ているとは誰も思わなかったと思うでしょうが、実は1953年にロシアの研究者がそういうことを言っていたと、NatureNews の記事には書いてあって、今回 Nature の表紙にもなった論文を書いた研究者達もそのことは知っていながら疑っていたのだそうです。まあ、アイディアは借用したものとは言え、ここまできちんと証明したのですから立派だと思います。
Nature論文
Correlation between nanosecond X-ray flashes and stick–slip friction in peeling tape
この研究のミソは、真空中で実験をしたことで、真空でなければX線は出ませんから、悪くすると大騒ぎになりかねなかったスコッチ・パニックはそれで避けられるでしょう。とは言え、X線の強さは本格的で、歯医者さんで使うレントゲンフィルムを使って、指の骨を透視した写真が撮影されています。関節まではっきりと写っていますから、すごいものです。
それにしても、こんな理科実験に毛のはえたような、またとりあえず何の役にもたたないような研究を表紙にまでして大々的に取り上げるところが、Natureのいいところですね。
アイディアと Nature の遊び心に敬意を表します。
WIRED VISION SCIENCE & TECHNOLOGY に日本語に翻訳された解説記事があります。こちも是非ご覧下さい。実験室の内部を撮した写真が興味深いです。
「真空中で粘着テープを剥がすとX線生成」Nature誌掲載:動画と画像で紹介
面白い!
最初の映像は、爪ではなく、(石英の)小石で、水晶の結晶を擦っていると説明していますね。
スコッチテープ以外の、他のテープでも出るんでしょうかね。
最初の映像は、爪ではなく、(石英の)小石で、水晶の結晶を擦っていると説明していますね。
スコッチテープ以外の、他のテープでも出るんでしょうかね。
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一言
at 2008-10-23 23:30
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来年度のイグノーベル賞物理学部門の最有力候補ですね。
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M
at 2008-10-24 12:28
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昔オートラジオグラフィーの時、乱暴に試料を剥がすとX線フィルムに雷みたいなノイズが出ましたねえ。
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stochinai at 2008-10-24 14:34
オートラのことは、上にトラックバックしてくれたFlogさんのところでも話題になってますが、やっぱり静電気発光(摩擦ルミネッセンス)が関係しているのでしょうね。オートラジオグラフィー自体が、「懐かしい」テクニックになりつつありますね。私の良く行く歯医者さんでも、レントゲンはフィルムではなく、イメージセンサーで撮影するように変わっています。昔の道具がないと、安価な新発見というものができなくなりますね。
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nq
at 2008-10-25 18:28
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「Natureのいいところ」とおっしゃいますが、この取り上げ方はNatureは学術誌ではなく話題性を追求するジャーナリズムだというのがよく分かる例ですね。「何の役にも立たない」とお書きになっていますが、数万ボルトの高圧電源なしにコンパクトな仕掛けでX線を発生させられることは応用可能性の面で莫大なインパクトがあります。
また、「昔の道具がないと安価な新発見ができなくなる」というのは間違いで、例えば、安価なデジカメの普及によって、昔は資金がなくてはできなかった研究がいろいろできるようになっているはずです。
ところで、私の行く歯医者はフィルムのままです。X線被曝量を相当少なくできるはずなので、イメージセンサーにしてくれるとありがたいのですが。
また、「昔の道具がないと安価な新発見ができなくなる」というのは間違いで、例えば、安価なデジカメの普及によって、昔は資金がなくてはできなかった研究がいろいろできるようになっているはずです。
ところで、私の行く歯医者はフィルムのままです。X線被曝量を相当少なくできるはずなので、イメージセンサーにしてくれるとありがたいのですが。
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nq
at 2008-10-25 18:39
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もう一つ誤りを指摘させていただくと、「この研究のミソは、真空中で実験をしたことで、真空でなければX線は出ませんから」とお書きですが、当然ながら指は真空に入れていないはず。指を透過するほどのX線は空気も何メートルか透過します。
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stochinai at 2008-10-25 19:44
そのX線なのですが、空気中でテープをはがした時には出ないのだそうです。だから、通常テープを使う時には心配しないで大丈夫です、と著者の方がコメントしています。
ついでに、デジカメのことにも反論させていただくと、フィルムがなくなったせいでできなくなった実験(たとえば薄いゼラチン膜を溶かす酵素の検出とか)などもあります。デジカメに限りませんが、電子機器でいろんなところばブラックボックスになり、物理学などの「原理」を教育するのが大変に不便になっていることもあります。直感的に理解できる実験装置というものの重要性を強調したつもりでした。
ついでに、デジカメのことにも反論させていただくと、フィルムがなくなったせいでできなくなった実験(たとえば薄いゼラチン膜を溶かす酵素の検出とか)などもあります。デジカメに限りませんが、電子機器でいろんなところばブラックボックスになり、物理学などの「原理」を教育するのが大変に不便になっていることもあります。直感的に理解できる実験装置というものの重要性を強調したつもりでした。
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at 2014-11-28 20:26
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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くに
at 2014-11-28 20:27
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びっくらこいたな・・
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酷い記事
at 2017-03-30 17:50
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そりゃスコッチテープ剥がしてレントゲンが撮れるってのは役に立たないかもだけどトリボルミネセンスという現象の解明には役立つ可能性は高いわけで…それが今後の理論の解明にどの程度貢献するかは未知数でしよ…それを役に立たない研究って言うのは科学に対するリテラシーが低すぎるよ
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STOCHINAI at 2017-03-30 21:55
ははは、「役に立たない」というのは基礎科学に対する最大の賛辞なんですけどね。
by stochinai
| 2008-10-23 21:12
| 科学一般
|
Comments(11)