5号館を出て

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2004年 12月 09日 ( 1 )

DNA鑑定

 あまり書きたいというわけでもなかったのですが、「書かないのですか」と言われたことと、日本中のニュースがあまりにも同一色に染まっているように見えることがちょっと気持ち悪いので、コメントしておきます。

 もちろん、北朝鮮に拉致されて自殺したとされる横田めぐみさんの、「遺骨」の鑑定結果のことです。

 昨日のニュースでは、帝京大の法医学研究室が、両親から提供された横田めぐみさんのへその緒から得られたDNAと照合して、遺骨がめぐみさんのものではないと断定したと報道されています。

 しかし、同様の鑑定を試みた警察庁科学警察研究所では、結果を出せなかったという報道もありました。

 「両機関とも『鑑定能力は国内屈指』(警察庁幹部)だが帝京大はミトコンドリア、警察庁は核のDNAを鑑定したといい、このため差が出たとみられる」と書いたものもあります。

 私も帝京大の出したの判定結果は、おそらく正しいだろうと思っていて、北朝鮮が嘘をついているのは間違いないと思うのですが、科学的判定をする場合にしなければならない最低のルールは、今回も守るべきだと思いました。

 そのルールとは、二つの研究機関(帝京大と科学警察研究所)が異なる結果(否定的な結果と、結果を出せないという結果)を出した場合には、さらに第3者に判断を依頼するということです。

 また、帝京大が成功したのなら、その方法を使って科学警察研究所および(あるいは)他の機関が追試するということです。それで、同じ結果が出ることを確認できれば、信憑性は高まります。

 このようなニュースによって私たちに知らされるのは鑑定結果だけであり、今回のように場合によっては国際紛争の原因にもなる可能性もある重要な事案の場合には、利害関係のある日本でだけ鑑定をするのはいろいろと疑念を提出された場合に弱みがあると思います。

 もちろん、最初の鑑定を日本でやることに問題はないのですが、そこである結果が出たら第3国(たとえば、ドイツとかフランス、あるいは中国やアメリカに加わってもらっても良いでしょう)の第3者機関に同じ方法および別の方法で再鑑定を依頼すると良いと思います。

 自然科学というものは、誰がやっても同じ結果を出せるものですから、無駄な論争をする必要はありません。

 特に今回のようなケースでは、日本中が一丸となって熱くなっているように見え、それはそれで無理はないと思いますが、北朝鮮のような国と交渉する場合には、向こうの友好国(中国やロシア?)にも科学的真理という点において、日本と同じ立場に立ってもらうことができると、ずいぶん交渉がしやすくなるのではないでしょうか。

 今回の鑑定結果で、北朝鮮が嘘をついていることがはっきりしたので経済制裁を加えるという意見も理解できますが、横田めぐみさんをはじめ拉致されている人たちを救い出し、北朝鮮を開かれた国にしていくことを目指すのならば、直線的に攻めるだけではうまくいかないでしょうから、外堀を埋めることも考えた方が良いと思います。今回のDNA鑑定のような「科学」を使うことで、中国やロシアが北朝鮮を説得する側についてくれるならば、交渉はしやすくなるのではないかと思います。

 そういうのを「大人の外交」というのではないでしょうか。
by stochinai | 2004-12-09 00:00 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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