5号館を出て

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2005年 05月 19日 ( 1 )

論文のねつ造

 論文の価値が、就職や研究費獲得に異常に力を持っている日本の研究環境では、むしろこういうものが出ないのが不思議だと思われるのですが、なかなか大胆なことをやってしまったという感想です。

 <データ改ざん>米医学誌への論文取り下げる 大阪大学 (毎日)というニュースは、各紙とも大々的に取り上げています。

 それにしても、各紙とも米医学誌と書いていますけれども Nature Medicene ってイギリスの雑誌ではないのですか。Nature がイギリスなので、てっきりイギリスのものだと思っていました。

 それはさておき、問題の論文が出た時には国内ニュース「たくさん食べても体重減少 特定酵素ないマウス実験で」として共同通信が10月18日に配信しています。

 その記事で「下村教授らはマウスが太ると脂肪組織内で増える酵素『PTEN』に着目。脂肪組織だけでPTENをなくしたマウスを作成し実験した」ということで、この研究が糖尿病の治療につながるものであると、大々的に宣伝していました。

 そもそも世界的に権威のある雑誌に、ヒトの糖尿病治療につながるような研究の論文が載ったら、それは世界中の学者によって一斉に追試されますし、今回の実験では脂肪組織でだけPTENという酵素が発現しないという遺伝子欠如マウスを作って実験をしたということになっていますので、そのマウスの提供を求められるのがこの世界の常識です。

 それなのに、学生が「実験に使ったマウスはいない」などという言い訳をしているとニュース記事に書いてありますが、さすがにそれが事実としたならば、他に13名もいる共同研究者の責任も問わないわけにはいかないのではないでしょうか。

 最初のニュースでは「下村教授らは・・・・・・脂肪組織だけでPTENをなくしたマウスを作成し実験した」となっています。それが、今度の記事では「下村教授も不正があったことを認めたが、『自分は関与していない』と説明したという」と書いてありますが、もし本当ならば最高責任者として論文の最後に名前が載せる資格はなかったと言わざるを得ません。

 この筆頭著者の学生は、医学部の6年生だということですが、もしそうだとすると理学部などでは修士課程の2年生に相当します。しかも、なったばかりの6年生だとすると、研究歴はどのくらいあったのかきわめて疑わしいと思います。医学部では、学生時代から研究室に出入りして研究の手伝いをするところも多いようですが、それにしても大学に入ってから5年間で6本も研究論文を書くのは不可能だと思います。

 近くにいる人たち(論文の共著者が近くにいる人たちでなかったのは、とても不幸なことです)から見ると、絶対に何かがおかしいと感じていたことが今回のねつ造発覚につながったのでしょう。

 もし、不正が何もなかったとしたら、修士1年相当で6本も論文を書いていたこの学生は、天才的研究者としてどこかの研究所か大学に雇われることになっていたと思われます。(噂では、単行本も書いているとのこと。文才が人並み以上なのは事実かもしれません。)

 そろそろ論文至上主義も見直しを迫られていることを感じさせるエピソードではないのかというのが感想です。
by stochinai | 2005-05-19 15:36 | 科学一般 | Comments(15)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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