5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

2005年 05月 23日 ( 1 )

 大学の広報活動の一環として、高校生の大学訪問(Campus visit)という制度があるらしく、今日は頼まれて4名の高校生に研究室をお見せしました。

 午後1時20分頃、理学部旧館(博物館)の正面玄関まで迎えに出て欲しいという依頼があったので、出かけてみると高校生が何人かたむろして、守衛さんと押し問答をしています。守衛さんは高校生が来るなどということはいっさい知らされていないらしく、高校生の質問に「で、誰、何先生に会いに来たの」などと質問をしています。高校生達も、こちらの受け入れ態勢などは全然知らないらしく、まったく話が通じていない感じです。

 博物館の入り口に生徒さん達を迎えに行く途中で、たまたま理学部の窓口になっているはずの教務係長のTさんにお会いしたので、話はきちんと進んでいるのだと思って、高校生に「岐阜のT高校の生徒さん達ですか。理学部訪問ですよね」と訊くと、そうですということだったので守衛さんに事情を説明して、一件落着。

 ところが、予定の1時半になっても教務係長が現れず、生物と同じく受け入れを頼まれている物理の先生が、係長を呼びに行ってくださるということなのでお願いして、待っていましたがミイラ取りがミイラになったみたいで、ふたりともなかなか来ません。

 なんだか、悪い予感のする始まりでした。

 しらばくすると、係長さんと物理の先生が高校生に渡す資料を持って登場。係長さんからは「特に何も決まっていないので、適当にお願いします」とのことで、生徒さん達を任されてしまいました。

 う~ん、これはかなりいい加減だぞ、と思いながらも生物科学科でもう一人受け入れを頼まれているN先生と二人で、4名の生徒さんをつれて、研究室へと戻りました。

 途中、歩きながらいろいろと訊いてみました。

 「今日の予定はどうなってるの。この後、何時までにどこに行けばいいの。」

 「たぶん、来る前に集まったところに行けばいいんだと思いますが、何時かは訊いていません」

 高校側も、かなりいい加減と見えます。

 「君たちの高校から北大を受ける人ってどのくらいいるの」

 「全然いないと思います。今までも、北大に来た人がいるとは聞いたことがありません」

 「君たちは、北大に興味があるの」

 「特に、そういうこともないんですけど、、、」

 「北大を受けようとか思ってないの」

 「思っていません」

 おいおい、いったい君たちは何をしに来たんだい。

 「何か訊きたいこととかある。入試のこととか、AOのこととか、、、」

 「別にありません」

 「生物とか好きなの」

 「特にそういうこともありません」

 研究室を案内しても、特に強い興味を示すわけでもなく、いろんな動物を見せたり、実験の話をしてあげても、なんだか反応がにぶいのです。夏に行われる高校生の体験入学の生徒さん達とのエライ違いに、こちらもだんだんとエネルギーを失って行きます。

 どうも、いろいろと話を聞いて推測してみるに(私の勝手な想像も多いのですが)、この岐阜県のT高校では、北海道の修学旅行に来たものの自由行動をさせて問題が起こるよりは、大学の見学でもさせておけば、とりあえず事故も起こらないだろうし、あわよくばそこで何か刺激を受けて大学への情熱でもいてくれれば儲けもの、というような程度の軽い気持ちで彼らを送り込んで来たことは、ほぼ間違いないと思われました。

 体の良い、手抜きですね。

 それでなければ、これほどの予備知識も情熱もない高校生を、引率する先生もなしに理学部へ送り込んでくるなどという無責任なことはできないと思いました。

 こういう時代ですから、大学としては広報活動という名のサービスをすることで文科省の覚えを良くしておきたいという気持ちも強いですから、高校から要望があればなかなか断れないのだと思います。

 しかし、大学側も特に一所懸命やる気もないし(我々に丸投げです)、高校側もなんの準備もしてこないという状況の中、間に立って実際に何かをやらされる我々がたまったものではありません。

 これでは高校生にも大学にも何にも良いことがないと思いました。

 どうせやるんならもっとしっかりとやりたいし、そうでないならやめませんか > 学長

 こんなことをやっている間も、もっともっと意味のある生産的教育研究活動が阻害されているということはわかりますよね。

 結局、教務のT係長だって通常業務だけでもメチャメチャ忙しい上に、こんなことにまでつきあわされてかなわんと思っておられるに違いないと思います。私たちも、充実感のないサービス業務をさせられては徒労感しか残りません。結局、喜んだのは生徒達から解放された修学旅行引率の先生達と、大学の広報担当だけじゃないんでしょうか。これを、大学の業績として認めるなんぞということだと、文科省の監督責任も問われかねません。

 困ったものです。

追記:トラックバックをしていただいた「医学教育のひろば」さんによると、気持ち悪いくらい同じことが東大でも行われているようです。そうすると、そういうことをさせている原因はその上の文科省あたりにあると推測するのが「科学的推論」ということになりますか。
by stochinai | 2005-05-23 20:54 | 大学・高等教育 | Comments(9)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai