5号館を出て

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2005年 07月 11日 ( 1 )

 今日は新聞記事の論調に引きずられないようにしてみます。公立博物館の民間委託(共同)に関するニュースですが、本当に取材をして書いたのかと疑ってみたい気がしています。

 まずは、公立の博物館についての評価ですが「管理・運営に経費が掛かる割に入館料収入に期待できない」と書かれてます。この説明自体が手あかのついたものですが、さらに「金食い虫」という死語にも近い形容が続きます。

 博物館の管理や運営にそれなりに経費がかかるのは当然のことだと思います。さらにそれほどの入場者がいないために入館料収入が限られているのいうのも現実だと思います。しかし、だからといって民間に運営を委託すれば逆転劇が起こるのでしょうか。

 もしも、同じ状態の博物館でも民間に委託すれば経営が上向くというのなら、民間に委託しなくとも「民間がやるように」運営すれば、経営の改善ができるという理屈にならないでしょうか。

 しかも、地方自治法の改正かなんかは知りませんが、直営の維持は難しいと自治体が判断したのなら、(自治体が税金からさらに)「運営費用を拠出」するというのは筋がとおりません。どこまで税金をつぎ込むべきなのかは、自治体の構成員(つまり住民)が決めることであって、税金を出す側が「博物館はいらない」というのならなくするという選択肢もあって良いと思います。

 この先はおそらく予想通りで、たとえ税金をつぎこんで「民間企業・団体が実務を行」ったとしても、各地でさまざまな第3セクターが破綻していった歴史を見るならば、いずれつぶれるものに無駄な税金をつぎ込むだけのことになりそうな気がします。

 一方、この世の中には博物館を愛して、大切にしたいと思っている人もたくさんいます。お金がないから博物館をなくするというのなら、単なるお金儲けの手段として博物館を利用しようとする「民間」にではなく、博物館を愛してもっともっと繁栄させてみたいという人々に経営を任せて、できるだけ収入を上げる努力をしてもらってみても良いのではないでしょうか。

 そういう人達がやる「もうけ主義」ならば、もうかったお金は博物館を管理・運営し、さらに良くするために使ってくれることは間違いありません。そういうやり方こそ、NPO、NGOのあり方として望ましいのではないでしょうか。

 本当に言ったかどうかは明らかではないです(おそらく言っていない気がします)が、現場の学芸員らの不安の声ということになっている「もうけ優先の展示が増える」「収蔵品の維持と管理は可能か」などど言っている場合ではなく、どんどんもうけるためにお金をあまりかけずに工夫を凝らした展示を考えたり、スポンサーを探したり、地元の子供達を教育する代わりに、父母らにボランティアや募金をお願いしたり、あるいは博物館という場所を積極的に地元に開放していって多目的なふれあいの場にしたり、といくらでも工夫のしようはあるのではないでしょうか。

 私たちがやろうとしている、新しいプロジェクトでも、そうした博物館の活動などもできる限り応援していきたいと考えています。

 地元の人々が科学や文化を楽しみ、学ぶ場としての博物館の未来は決して暗いものではありません。

 安易に民間委託して、遊園地化したあげくに倒産させてしまったりすると取り返しがつきません。

 敗退的処置ではなく、攻めの姿勢でいけば、博物館には必ずルネッサンスが訪れると思います。あきらめないでください。
by stochinai | 2005-07-11 19:18 | つぶやき | Comments(13)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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