5号館を出て

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2005年 07月 19日 ( 2 )

 なかなか上がらないスペースシャトルの取材にフロリダまで行っている元村さんの理系白書ブログに 気になるニュース in Florida というエントリーがあって、私も気になったニュースがあります。

 「今年5月、脳腫瘍で脳死になった26歳の女性が、もうすぐ出産するそうだ。この女性はスーザン・トレスさん、26歳。NIHの研究者である。脳死判定の時点では妊娠15週だった。家族は出産まで生かしてほしいと希望した。先週で妊娠25週になり、出産しても赤ちゃんが保育器で育つ程度に生育した。」

 このニュースについては私は知らなかったのですが、検索してみるとYahoo!ニュースが一つ見つかりました。

 7月7日付けのこのニュースの段階では30万ドルだった募金が元村さんのエントリーでは40万ドルになっていますので、1日1万ドルずつ募金が増えていることになります。このあたりが、募金大国アメリカのすごさを感じます。

 すでに脳死になってから10週(Yahoo!では17週目に脳死判定と出ているので、そうなら8週)もたっているのですが、その胎内では胎外に取り出すと育つことのできなかった赤ちゃんが、胎外でも育つことが可能になっているという事実を前にすると元村さんでなくとも「『脳死は人の死』と法律で定めることに、抵抗を覚えてしまう」ものだと思います。

 10週間前に死亡宣告されている「死体」から生まれた赤ちゃんというものが法律的に認められるのかどうかも気になるところです。

 それより何より、「出産後、人工呼吸器を外すかどうかで家族の意見が分かれている」のは当然だと思います。もし自分が当事者だったとしたら、用が済んだからといって、それまで胎児を育ててくれた「母親」を「死体」へと戻すことができるでしょうか。交通事故で脳死になった人の生命維持装置を停止するのとはかなり事情が違うような気がします。

 さらにこの例を見る限り、脳死体の子宮を借りて人工授精した卵~胚を育てることすら可能であることがわかるのですが、先へ行けば行くほど「脳死」というものと医療の進歩との間に横たわる矛盾や問題点が吹き出して来る予感がします。

 まさに蓋を開けられたパンドラの箱を前にしているのが我々という図です。
by stochinai | 2005-07-19 22:00 | つぶやき | Comments(17)
 トヨタ、JR東海、中部電力が出資する全寮制の男子中高一貫校「海陽中等教育学校」(海陽学園)が来春、愛知県蒲郡市に開校の運びになっているようですが、その開校に当たって文科省が怪しげな動きをしたと報道されています。毎日新聞によれば、学園に出資するJR東海に文部科学省が現職キャリア官僚を「社員教育制度の現状把握と指導」という名目で1年間派遣しながら、実際には学園の開校準備の実務に当たらせていたというものです。

 新しい野心的な学校を開設するに当たって文科省が手を貸すということに、私は特に反対ではありません。ただし、国民の税金を使っているのですから、他の学校からも同様の依頼があったら応じるように努力して欲しいと思います。今回のことで問題があるとすれば、JR東海が文科省に社員研修を進めるために人材の派遣を要請するという不自然さと、実際にはJR東海ではなく学園開設のために働いてもらっていたということだと思います。

 なんでコソコソとやらなければならなかったのでしょうか。

 学園創設にもっとも熱心なのはJR東海の会長だそうで、彼は「ゆとり教育は迷走している。社会や国家への自己犠牲、奉仕の精神を備えるリーダーを育てたい」と文科省のゆとり教育を批判して、この海陽学園で日本のリーダーとなるエリートを育てたいという主張をしているようです。

 官僚派遣を後押ししたのは、当時の文科省事務次官で、その人とJR東海の会長が「趣味の謡(うたい)(謡曲)仲間」という関係でこの一件が進んだのだとしたら、それもまた国民の税金の使い方としてはいかがなものかと思います。

 もしも、これが文科省の中における幹部の公私混同ということならば、それを罰すればすむことかもしれませんが、この学校創設のために文科省職員を派遣したのが、公立学校にゆとり教育の完全実施を命じた同じ年というのは問題があるかもしれません。

 文科省として、公立はゆとり教育をやるが、私立は詰め込みでも中高一貫でも自由に多様な教育をしなさい、それについては我々も協力を惜しまないと表裏なくやっていたのだったら、その時点で論争が巻き起こり良かったのにと悔やまれます。

 この中高一貫校では、寮費を含めて年間の授業料が300万円とも言われていますので、誰でもが行けるというわけではありません。大企業がバックについているので、年間70万円から100万円の補助を受けることのできる人もいるということですが、それでも200万円から、230万円かかります。年収4・500万円の平均的家庭に出せる金額ではありませんし、そもそもたった120名しか入れません。

 考えようによっては素晴らしい教育施設なのですから、本当の意味で日本の未来を担うエリートを貧富、コネ、地域などの差なく入れるように努力するのが文科省というものではないでしょうか。

 今からでも遅くないと思います。この学校を日本の財産として、全面的にバックアップするとともに、広い人材に対して入学チャンスを公開していって欲しいと思います。

 出資している大企業のお歴々にもどうぞそのようにして、お金儲けだけではなく日本の未来を背負って働いてくれる本当のエリートを育てていただくようにお願いいたします。
by stochinai | 2005-07-19 20:58 | 教育 | Comments(6)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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